表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デビルさん  作者: おかき
第一話
11/83

古武道 大豪院流合気道術−3


 合気道

 一般的に知られているものは、大正末期から昭和前期にかけて、植芝盛平を始祖として生まれた無手の武道

 剣術や柔術からの流れをくみ、その理念は、植芝盛平の様に体の小さかった者が、自分より大きい者や武器を持った者を、いかに倒すか、もしくは倒されないかに集約する

 似た様な無手の武道としての合気も多数あり、流派は多く、当然、海外にも盛平と同じ考えに至った者も存在し、現在は合気道として同じ道を進んでいる


 しかし、大豪院流合気道術の礎となった者は、更にその昔

 世は戦国と呼ばれた時代

 大豪村の彦兵衛という少年だった


 現在の奈良県の奥深く

 歴史としてその名を残していない大豪村は、小さな集落だったのではないかと言われる


 尾張の信長が、天下をその手に掴む少し前

 動乱の世に生を受けた彦兵衛少年は、武士ではなく、それ以前から神事として祀られていた相撲に憧れた


 しかし、貧しく、体も小さかった彦兵衛少年は、憧れた力士になることはできず、蛙や兎を相手に相撲の真似事をし、幼少期を過ごす


 その時に培った動きが、立派な青年となった彦兵衛の人生を変えたのかもしれない


 豊臣をへて、徳川の世になっていく天下泰平日本

 武士が生き様ではなく仕事となり、刀に生き、己の強さを求めた者は、自身の流派を名乗り、大名に仕える者、全国を放浪する者、さらなる修行を続ける者となった


 柳生新陰流、一刀流、二天一流

 様々な流派がひしめき合っている中で、大豪村の彦兵衛さんは、大豪院流を名乗り、相変わらず蛙や兎と戯れていた


 歴史の表舞台に出ることなく、一生を終えた彦兵衛さん

 怖いから、危ないから、痛いの嫌だからの理由で他流試合を禁じた大豪院流は、その子へと受け継がれ、そしてまたその子へと

 彦兵衛の編み出した技の数々は、改良、リニューアル、フルモデルチェンジを繰り返し、無敗のまま、身内の間だけで350年の時を超えた


 そして、大豪院流11代目当主、大豪院 時空

 彼の出現が、日陰で寂しく咲いていた大豪院流に、日の光を与える事となる


 戦後まもなく

 復興に賑わう大阪市内の会社員、大豪院 めだか氏の長男として生を受けた時空は、小柄な体ながら、病気一つすることなく、すくすくと育つ


 わんぱくだった時空

 体育の授業で初めて柔道をした時に、己の体に流れる大豪院の血に気づく


 みんなは、なんで弱いんだ?


 初心者だったにも関わらず、相手と組んだ瞬間に、どうすれば相手を投げられるかがわかってしまったという


 そして柔道初段にあがった中学2年生の暮れ

 時空の祖母の家で大掃除を手伝わされている時、納屋の奥で埃をかぶっていた【大豪院流】の看板と、古い書物を見つけた


 大豪院流とは何なのか

 この湧き上がる興奮は何なのか

 自分は一体何者なのか


 彦兵衛の時代から続く大豪院流のルーツを、歴代の当主が書き足してきたのであろう古い書物から悟り、明治の終わりから昭和の今まで消えていた【大豪院流】を、看板と共に復活させる事を誓う


 大豪院流の目指したもの

 それは柔の道の先にあるものとは違うと感じた時空は、中学卒業後、渡米を決意する

 強い者とは何か

 当時の日本人には、まさにアメリカこそが強い者の象徴であったからだ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ