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元軍人の俺は最強のFPS系配信者として再び戦場で無双する  作者: ゆずけんてぃ
伝説の始まり
6/59

勝てるよ

スカルブラザーズの台詞の順番は基本的に兄→弟です

「……皆ごめんね。ちょっと一回ミュートにするにゃ」

少し間を置いて視聴者達に語り掛ける。

【了解にゃ!】

【荒らし消えろよ】

【ミュートりょ!】

【おけおけ】

【OK。骸骨連中ははよ4ね】


承諾を得たことを確認してそっとマイクの電源を一度落とす。

「よしっと……これで皆には音届かないよね」


聞こえてないと思ってうっかり……なんて事はあってはならないんだ。

一応軽く声を出したりマイク付近で音を立ててみたりしてみるが……特にリスナーから反応は無い。



ミュート状態になったのを確信した私は大きく息を吸って、叫ぶ。



「ば、ばーか!!チート使ってるだけのざこの癖に……この…えと、ばか!ばーーーか!!」


貧相極まりない語彙力で、ありったけの罵倒を繰り返す。

我ながら何と幼稚な光景だろうか。


次いで心の平穏を取り戻す為、隣に置いていた猫のぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。

「ぐぬぬぬぬ……」



……分かってる。低俗な荒らしは無視するのが一番だって。

結局こいつらは人を煽って怒らせたいだけ。

腹を立てていたらむしろ思う壺なんだ。


分かってる……分かってるけど、それでもむかつくものはむかつく。

損得勘定のみで気持ちを自在に操れるほど私は器用な生き物じゃないんだ。


「うぅ……折角ここまで来たのにぃ」



数十秒後、落ち着いた私は何事も無かったかのようにマイクを再度オンにする。


「はーい、ごめんにゃさいね。ちょっと外の工事の音が激しかったの」

謝罪の言葉と共に適当にでっち上げた言い訳を並べた。


【お、来た来た】

【おかえりなさい】

【わざわざありがとう】

【配慮助かる】


続々と私を褒めるコメントが流れていく。


……本当は煽りに乗って暴言を吐いてただけなんて口が裂けても言えない。

浅ましい嘘を付いたことに罪悪感を感じながら再度戦場の様子を覗いてみる。




フィールドではスカルブラザーズとkakitaさんが睨み合っていた。

互いの間隔は約数十メートル。ここまで離れていたら即銃撃戦には発展しないだろう。


しかし距離を詰められたらその時点でゲームセット。


それを理解している二人は近づくことなく煽りを続ける。


「で、そっちの……kakitaくん?はどうすんのさ」

「いっそ命乞いとかしてみる?みっともなくさぁ……ふははは」


自分たちが相手の命を握っているという優越感に完全につけあがっていた。

その様は正に虎の威を借りる狐そのもの。

違法なチートを使って得た勝利を、己の実力だと思い込んでいるんだろう。


……本当に不愉快。私はぐっと歯を食いしばる。


この態度に苛立っているのは視聴者も同じだった。


【きっしょ】

【チートでイキってる勘違いキッズさぁ……】

【荒らしはアレだけどコメントで暴言はやめようぜ】

【運営は早くチート対策強化しろよ】

【はいクソゲー】

【42000人が見てる中で何やってんだこいつら】


「おーい、気持ちは分かるけど暴言はやめてね。にゃるべく楽しい配信にしよう」


少し声を低くして荒ぶるリスナーを制する。

一応私にも企業所属としての立場があるんだ。過度な暴言は見過ごせない。



……と体裁を保っては見るが、心象的には同感だ。


初めから勝敗が決まっているゲームなんて楽しい訳が無い。



私自身も、視聴者も、負けが確定している状況に心底呆れつくしていた。




しかし、彼だけは違ったのだ。


「お二人が使ってるチートはダメージを上げるものだけですか?」


kakitaさんは落ち着いた口調で問いかける。


「……あ?何、急にどしたん?」

「ダメージを最大にする奴と、後マッチング機能弄ってる。だから毎回兄弟で組めてる訳よ」


僅かに困惑気味の兄と余裕からかペラペラと手の内を晒す弟。


「……それだけですか?」


「いや、まぁそうだけど。てかそれだけで十分だし」

「何?ひょっとして君、まだ勝てるつもりでいるの?」




肯定するように彼は二人に向かって銃を構えた。


同時に、何度聞いても耳障りな笑い声が再度響き渡る。


「だははははははは!お前状況分かってる?一発でも掠ったら即死なんだぜ?」

「カッコいいねぇー!!でも負けたらクソだせぇよ?そのポーズ」




……何してるの?この人、状況分かってるの?

負けたら…って言うかもう敗北が確定しているんだ。


これ以上やっても、あいつらの煽りに拍車がかかるだけである。



急いで無駄な抵抗を止めるべく、私は慌てて彼に向かって呼びかけた。


「もういいよ!kakitaさん。ああいうのは相手したら駄目なんだってば!」

「……猫宮さん」


「無理なの……チーター相手には、勝ち目なんか無いんだから……」


駄々をこねる子供に言い聞かせる母親の様な気持ちだった。



本当に悔しい。

私もそうだが、何でkakitaさんみたいな純粋な強者がこんな形で負けなければならないんだ?

こんな……こんなふざけた奴らに……!


怒りを喉元に抑え、必死に歯を食いしばる。




「いいや、大丈夫。このゲーム勝てるよ」


「「「は?」」」


私とスカルブラザーズが同時にハモった。



その一言から放たれる覚悟は、決して虚栄や強がりなどでは無い。

そこから感じ取れたのは……強固な意志と、明確な勝利へのビジョン。


「あいつらが弄ってるのは与えるダメージ量だけ。こっちの攻撃はちゃんと通じるんだよ」


「それは……そうだけど」


よく見ると二人の体力は微かに減っている。

どうやら本当に無敵チートは使っていないみたいだ。



となると確かに不可能ではないのかもしれない。

……いや、でも無理だ。絶対に。


理論上可能と言うだけで、そんな芸当を成し遂げられる人間が居る訳が……


否定を繰り返す私の心の声を読み切るかの如く、kakitaさんは胸を張って宣言した。




「要は相手の攻撃を全部回避して倒せばいいだけ…………余裕だよ」

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次回から再び視点が柿田の元へ。


そして、いよいよあらすじにもある通り神プレイによる無双が始まります

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― 新着の感想 ―
[一言] ダメージ増加のみか…。オートエイムとかホーミング、ウォールハックよりマシかなとか思ってしまう俺はだいぶ毒されてるな…。
[一言] >>「要は相手の攻撃を全部回避して倒せばいいだけ…………余裕だよ」 かっこいー!! まあ、戦場では武器の性能差なんてあって当たり前だし、そもそも一発でも当たったら戦闘不能になるのが普通だし…
2021/09/10 16:50 退会済み
管理
[一言] めっちゃ面白い。 FPSきっかけでVTuber見始めた自分には凄くピンポイントで楽しめる設定です。 続きが気になって夜もAPEXしかできません。
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