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今大会最強プレイヤー

今回の視点はラビリンス陣営、黄泉乃アリスのものとなっております。

【大会本番、又旅と頑張るよ~】24分前に配信開始


16672人が視聴しています



「……もしもしお二方、私の声が届いてておりますでしょうか?」


「はい!無事繋がってます!」

「つ、繋がってます……」


スピーカーからは芯の通った声と、相反するようなか細い声が聞こえてきた。

私は参加者の宣伝画像を見つつ、成程と言うように頷いてみせる。


……この人がkakitaさんと桐原さん、ニューウィークからの代表者か。

初見って訳でもないけど、こうした立ち位置で見てると色々と複雑な気持ちに駆られてくる。

いや、別にビビってるとかじゃないけどね。


とは言え、やっぱり緊張してる部分も多少はあるんだと思う。

それを誤魔化すように私は少し口角を上げ、現在必死にモニターを凝視しているであろう又旅に話しかけてみた。



「とうとう来たね。あんたのお気に入りのkakitaさんの番が」


「……!?ち、違うって!べべべ別にお気に入りとかじゃないってば!」


慌てて首をぶんぶんと振る又旅を見て私は喉の奥でふふっと笑う。

どうやらこの期に及んでまだ、ご執心である事を本人は認めたくないようだ。


「あのね、kakitaさんはあくまで強敵だから!私があの人に注目してる理由は本当にそれだけ!!」


「……ふーん」


最もらしい言い訳を重ね始めるが、裏事情まで知ってる私からすれば穴だらけの主張に過ぎない。



まず本当にFPSの腕前が理由だと言うなら、雑談配信に至るまで余すことなくチェックしているのはおかしい話だ。

十秒スキップ機能も一切使わずに……一時間を超えるアーカイブを毎日毎日心行くまで堪能している。


更に配信外で私と話す時も必ず一回はkakitaさんの話題を出すのだ。

本当に必ず。それまでにどんな話をしてようが、最終的にあの人の名前が出なかった事は無い。


しかもその際に話す内容も……


プレイが神とか、声がいいとか、凛々しい顔つきだとか……すべからく好意的な意見に限られている。


これを気に入ってると言わずして何と言うべきなのだろうか?




とは言え、好き勝手弄った結果本番で空回りされるのも困る。

緊張をほぐす為の行いが、かえってミスを生み出す羽目になっちゃったら本末転倒だしね。


私は頃合いを見計らい、最終的に身を引いて話に区切りを付けようと試みた。


「ま、今回はそう言う事にしといてあげるよ」

「そう言う事も何も本当だもん。アリスちゃんのバカ!」

「はいはい……ごめんね」


「……許してほしいなら、本番でもいつもみたいに凄い狙撃見せてよね」

「了解。そこに関しては全く心配いらないから」


胸を張って、そう強く宣言する。


私の仕事はいつも通り遠くから相手を打ち抜くだけ。

これまで幾度となくこなして来た事を、変わらず今回もやるだけだ。

近接は又旅がやってくれるし……大丈夫だよね。行ける行ける。





「いやぁ、kakitaさん的には三位という予想はどう思いますか?」


「新参者ながら、身に余る立ち位置だと思います。これまで紹介された方々……そしてこれから紹介される方々も皆熟練者ばかりですしね」


「成程。ですが、以前配信でも語っていた通り優勝が第一目標ですよね?」

「ええ、参加する以上は全身全霊をもって頂点を狙わせていただきたいと思います」



しっかりとした受け答えをするkakitaさんを見て私は強い感心を抱く。



この人、インタビューでも終始安定してるなぁ。

あくまで基本的には謙虚ながらも、ギャラリーが抱く期待を裏切らないように程よく野心も覗かせている。

全方位に敵を作らない理想的な姿勢。額に入れて飾っちゃいたい位だ。



ヒーローみたいな切り抜きを上げられて、事実ヒーローの様にデビューして、皆にちやほやされつくして……

少しくらい天狗になっても良さそうな境遇だけど、彼からはそんな要素は微塵も感じさせられない。

その時点で立派な人間性が垣間見える。


関わりの薄い私としても、kakitaさんは同じ人間として純粋に尊敬できる存在だ。

……まぁ私、一応設定上は人形なんだけどさ。


「凄いね。安定しつくしているって言うか……根本的に真面目なんだなぁ」

「でしょ!kakitaさんはいつもそういう人なんだよ!」


誉め言葉を口に出すと、又旅はふふんとどや顔で理解者面を浮かべ出す。

その振る舞いに色々突っ込みたくもなったが……今回はやめておこうと思う。



何はともあれ……立派な人という点に何一つ間違いは無いのだから。



……同時に、敵としてはこれ以上ないほどに厄介な存在だ。

この謙虚かつ堅実な姿勢が、実際の試合では非常に洗練された立ち回りを生み出す。


加えてどこを取っても隙のない完璧なステータス配分。


狙撃のセンスに至っても、全く私に引けを取らないだろう。

更に私と違って正面からの銃撃戦においても、トップレベルの実力を有していると来た。


極論、彼単体には付け入る隙が微塵も無い。

まず間違いなく今大会における最強プレイヤーと太鼓判を押してもいいだろう。



……ただ最強プレイヤーと最強チームは、一概に=じゃ結べない。

今回におけるもっとも重大な要素は、チーム戦でのバトルロイヤルという点。

勝敗を分けるのは、単体の実力よりもペア同士が生み出すシナジーだろう。


だからこそ予想と言えどもニューウィークは三位に留まったし、最終的に私達は一位に立つことが出来たんだ。


確かにkakitaさん自身に隙は無い。……だがチームで見るならどうだろうか?




「では続きまして……そんなkakitaさんのペアである彼女にも心境をお聞きしましょうか。桐原茜さーん?」


「は、はい!」



続けてインタビューを受けるのは相方である気弱な少女、桐原茜。



そう、彼女の存在こそが……ニューウィークにおける最大の弱点とまで言っていいだろう。

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