俺達の弱点
ご指摘を頂き前話の流れを少々変更させて頂きました。
至らぬ点が多々あり誠に申し訳ございません
配信を始めてから丁度一週間が過ぎた。
チャンネル登録者数は当然の様に20万人を突破し、同時接続のアベレージは2万3000人程。
数字面は依然として良好……と言っても今の所はネコしか出来ていないんだがな。
別のジャンルのゲームを始めた際に視聴者数がどう動くかが今後の課題と言った所だろうか。
人気のFPSという要素を度外視した上での俺自身の実況センスが試される。
……まぁ何にせよ今の所は順調という面に置いては疑いようもない。
本格的に活動についても慣れてきた。
そんな訳で今日も今日とて明日以降の配信に向けて準備をしようと思っていたんだが……
「何で俺たちはまたしても渋谷に呼び出されたんだ?しかも朝9時に……」
「言ったじゃないですか。弱点を克服する為だって」
宮園はキリっと眉をひそめてこちらを見つめてくる。
集合場所の喫茶店内では小気味いいリズムの洋楽が流れていた。
三日前からアポを取ってくれた成長に微かに感動しながら思考を張り巡らせる。
その弱点が具体的に何なのかが聞きたいんだが……未だに教えてくれない。
恐らく言われずとも自分たちで気付けという意思表示だろう。
が、はっきりいって現時点では皆目見当も付かないんだな、これが。
「弱点って……私も師匠も今の所問題はないんじゃないの?」
桐原さんもグラスをつつきながら不思議そうに問いかける。
同じく最近はすこぶる順調な彼女からしてもこの呼び出しは解せないようだ。
……ていうか、さりげなく今俺の事を師匠と呼んだな。
一応参考にして欲しいと言っただけで弟子だと認めた覚えは無いんだが。
でも、否定したら否定したでまた関係がこじれそうだしなぁ……
ここは一先ず桐原さんのペースに合わせてみるとしよう。
そんな事を考えつつ宮園の答え合わせを待つ。
果たして俺達に共通する弱点とは?
「まず、配信における視聴者層で今後私がより増やしたいと思ってるのは10~20代の若年層達です」
「うん知ってる。皐月お姉ちゃん前から言ってたよね」
「その為には若者達に向けたスタイルへ舵を切ろうと試みたいのですが……その上で二人には大きな問題があるんです」
「……大きな問題だと?」
本当に分からない。
FPSなんて正に若者の流行の代名詞の様なジャンルだ。
先に挙げられた宮園の理念と見事と合致してるだろうに。
……その上で無視できない弱点とは、一体何なのか?
しびれを切らした宮園はかっと目を見開いて正解を唱えた。
「先輩も茜ちゃんも、最近の話題に疎すぎるんですよ!」
「ぐっ……」
「そ、それは……」
俺も桐原さんも同時に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
虚を突かれるような思いとは正にこういうことを言うのだろう。
次第に席内には気まずい空気が充満し出していた。
片や10年日本から離れて軍事活動に勤しんでいた男。
片やインドア派を極めた日常を毎日過ごす少女。
成程、どちらも今世間で蔓延るニュースを知るには縁遠い生活を送っていた訳である。
FPSが流行っていると言う事実こそ知ってはいるが……所詮は断片的な情報に過ぎない。
例えば今流行の音楽は?みたいな質問をされたら首を傾げるしか出来ないんだ。
宮園のそれは的確な問題提起と言えるだろう。
が、俺らとて言われたままじゃ黙っておけない。
寄せ集めの知識をもとに何とか反論を試みる。
「いや、俺は知ってるぞ……あの、百合に挟まる男とか!」
「何でそんなニッチなジャンル攻めてるんですか!?そういうんじゃないですって!」
「わ、私も…………あれ!タピオカ!タピオカが今jkの間で話題なんでしょ!」
「一歩遅いのよ茜ちゃん。まだまだ人気ではあるけど……全盛期ほどの勢いは無いの」
容赦のない宣告にがっくしと肩を落とす桐原さん。
「そ、そんな…私も一年前まで女子高生だったのに……いや不登校だけど……」
露骨なまでに悲しい気持ちを身振り手振りに押し出していた。
……行動にこそ移さないが心境的には俺も同じである。
愕然とした気持ちを胸中に抱えてしまう。
え?百合に挟まる男ってニッチだったのか?
物凄いネットで流行ってるって聞いてたんだが。
…………でも確かに
「お前昨日の百合に挟まる男見た?」
「見た見た!超面白かったよな!」
的な日常会話を街中で聞くことは無い。
……いや冷静に考えたらあってたまるか、どんな会話だ。
苦し紛れの言い訳は結果的に己の浅い知識を露呈させるだけだった。
こうなるともう黙って俯く他ない。
「という訳でお二方、まずはご自身で問題点を認めていただけたでしょうか?」
「はい……」
「うん……」
揃って頷く。
この期に及んで首を横に振る選択肢はそもそも存在しているのだろうか?
うなだれる俺達の様子を見て空気を切り替えるように手をパンと叩く宮園。
「だからこそ、今日は色んな最先端が集まる渋谷に集合したんです。ほら元気出して!」
もう言いたいことは分かって来た。
同時にどう足掻いても従うしかない事も。
同じように察したであろう桐原さんは少しワクワクした表情を見せ始める。
まぁ俺も……正直楽しみにも思う気持ちがあった。
今までの流れだと重苦しく聞こえるが、要は本質は……
「これから3人でデー……じゃなくて、弱点克服の為の観光に行きますよ!」
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若干無茶苦茶な流れですが宮園には今後とある予定があるので……焦っていたりします
それともう一つ
・柿田の軍人時代の話
・柿田と美咲(元カノ)の学生時代の話
・大会編
多分次章はこの3つの内のどれかになると思います




