桐原茜
桐原茜、格闘ゲームを中心とした活動で一躍人気を博した配信者。
小動物の様な見た目と性格が非常に可愛いと評判だ。
活動一年にして現在チャンネル登録者数は26万人。総再生回数は約6000万回。
身長152cm、体重38㎏。誕生日は8月31日。
好きな物:ぬいぐるみ、大学芋、お母さんの作るご飯、両親、社長、一人の時間、配信。
嫌いな物:意地悪な人、騒がしい人、セロリ、回線ラグ、屈伸煽り。
以下経歴について(本人の配信内での発言を参照)
中学校を卒業後、近所にあった女子高へ進学。
しかし周りの空気に上手く馴染めず二年の夏休み明けから不登校になってしまう。
部屋に引きこもって死んだように無気力状態で毎日を過ごす。
形骸化していく日常に嫌気が差した彼女は昔からの憧れであった配信活動を始めることを決意した。
設備が拙い環境ながらもめげる事なく活動を続けてじわじわと人気を伸ばしていく。
そんな彼女に目を付けたのが株式会社ニューウィークであった。
……と、ここまでが検索した際に出てきた記事の内容だ。
念の為宮園にも確認したが大体あってる、との事らしい。
駆け足気味で共に階段を下りる。
実際これから対面する訳なんだが……果たして挨拶は出来るのだろうか?
彼女が人見知りだという事を事前に理解している俺はそんな一抹の不安を抱えていた。
しかも年の差10個分あるしな。
玄関ホールまで辿り着くと奥の方に人影が見える。
「お、あの子か?」
備え付けられているソファの端っこにぽつんと座っている一人の少女。
真っ赤なワンピースを着ていて、右目が丸ごと前髪で隠れているのが印象的だ。
そしてもう片方の青い瞳からは……そこはかとない陰のオーラを感じた。
隣に立つ俺の肩を軽く指でつついて宮園が一言。
「茜ちゃんが怖がっちゃうかもしれないんで、先輩は一旦待っててくださいね」
「……了解」
その一言で全てを察した。
話には聞いていたが、本当に人間そのものが苦手みたいだな。
それも思ってたより筋金入りの様で……内心で頭を抱える。
ていうか、本当にあいつはどうやってそんな子と仲良くなったんだ?
まずきっかけの時点で普通なら躓きそうなものだが。
遠くなっていく宮園の背中を目で追いながら俺はつくづく疑問に思う。
「やっほー、お待たせ茜ちゃん」
「あ……皐月お姉ちゃん!」
大好きな社長の姿を捉えた瞬間、桐原さんの瞳にぱっと光が差し込む。
そのまま駆け寄り、飛び込むような勢いのまま両手を広げた。
宮園はそれを黙って受け止める。
結果的にはお互いに抱き合う形で身を預け合っていた。
「私今日は一人でここまで来れたよ。偉い?」
「うんうん、一人で電車乗れて偉いねー。よしよし」
「えへへ……」
ひたすら頭を撫でられてご満悦の彼女。
若干偉いのハードルが低い気がするのは果たして気のせいなのだろうか。
そのまま宮園は頭から手を離したと思ったら、すぐ腰に回し始めて……ひょいっと抱きかかえた。
「ほらっ……」
「わ!凄い、お姉ちゃん!」
桐原さんは喜びながら肩へとしがみつく。
そうして同じ目線に立った二人は顔を見合わせて同時にニコッと笑うのだった。
まるで姉と妹……いや、保育士さんと幼稚園児を見ているかのような光景だ。
ちなみに俺はその間黙って眺めるだけ。
まさに蚊帳の外、という言葉がお似合いである。
まぁこの流れに俺が入っても……あれだ、何か最近流行ってるらしい奴。
……そう、百合に割り込む男の様になってしまう。
何故だかよく知らないがそれは絶対に駄目なんだろ?
そもそも仮に入った所で関係ない気もするがな。
だって、桐原さんは元から俺など眼中にすら入っていないだろう……し……
「……」
「……!?」
木に掴まるコアラの様な姿勢で宮園に抱き着く彼女。
その瞳は……どう考えてもこちらに向いていた。
後ろを振り向くがあるのは観葉植物のみ。
軽く横に移動してみるが視線はそれに付随して動いていく。
間違いない、彼女は俺を見ている。
そう確信するのは容易だった。
して、その事実をどう解釈すればいいのだろうか?
一応興味を持ってくれているのは間違いないと思うが……ここから歩み寄るべきなのか?
いや、下手に距離感を測り間違えると拒否されるのは目に見えている。
ここはなるべく最小限のアクションに留めるべきだ。
「……こんにちは」
悩んだ末に俺は小声と共に頭を少しだけ下げた。
軽い会釈程度の挨拶だが……どう来る?
緊張しながら桐原さんの反応を待つ。
もしかしたら、挨拶を返してくれたりするかも……なんて期待を微かに浮かべていたんだが。
「え?」
予想外の反応が来た。
何と彼女は抱えられた状態からするっと降りて、こちらへと歩み寄って来たのだ。
「……マジで?」
宮園も驚いた表情でその様子を見つめている。
情報と違う……と言いたくもなったが、明らかに異常事態が起きているのは明白だ。
数歩先に立ち、俺を見上げる桐原さん。
幾度となく繰り返される瞬きからは緊張と興奮が伺えた。
……これは期待していいのか?
普通に挨拶を返してもらえることを期待していいのか?
ぶっちゃけ常識の範疇の行いだが、それでも俺は期待に胸を高鳴らせる。
いい意味で予想を裏切られるとはこういうことを言うのだろう。
桐原さんは礼儀正しく深々と礼をする。
そのまま一言。
「で、弟子にしてください!」
「うん、こんにち………………あ?」
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次の次位から久しぶりにFPS描写入れられそうです。
タイトル詐欺になりつつあって本当に申し訳ありません




