表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/59

半年後の雑談配信

今回から一旦半年後に飛びます。


振られた時代と配信者時代を場合によって織り交ぜて書くので時折読みにくくなるかもしれませんが

出来る限り最善を尽くしていきますので良ければお付き合いください

「……って感じでさ。皆も浮気とかには気を付けた方がいいよ。あれはマジで辛かったわ」

レモンサワーを注いだグラス片手に、過去の自分の悲しいエピソードを赤裸々に語る。


勿論具体的な人物名は伏せた上でだ。

さすがに生配信で美咲の名前を晒すほどラインを履き違えちゃいない。



しかしまぁ、改めて振り返ってみてもやはり酷い話だ。

10年間信じてたか…きついよ、そりゃ。

我ながらよく半年でここまで立ち直れたものである。


【とんでもないクソ女で草】

【kakitaさん可哀想すぎない?】

【その女の個人情報晒してもいいレベル】

【10年はきつい】

【これにはNTR好きのワイもドン引き】

【私も晒していいと思うわ。そいつは地獄に墜ちるべき】

【そりゃつれぇでしょ……】

【ちゃんと言えたじゃねえか】

【聞けて良かった】


今の話を皮切りに途端にコメント欄の勢いは加速する。

どうやらリスナーの皆は理不尽な展開にさぞご立腹の様だ。

「はは……皆落ち着いてくれ」


目元まで伸びた前髪を弄りながら抑えるよう言い聞かせる。


一緒に怒ってくれるのは嬉しいが……ちょっと度が過ぎてる人間も出てくるな。


程々に苦笑いをしつつ適度なタイミングで諫めておく。

「絶対に晒しとかはやんないよ。聞いてくれた人は同じ轍を踏まないように注意してって話」


柔らかい物腰で現在リアルタイムで見てくれている17000人の視聴者たちを諭す。

あくまで俺の望みとしては教訓にして欲しいだけだからな。


もうあいつと関わらないで済むならそれで充分だ。


大きく息を吐いて一気にグラスの中身を呷る。

たちまち口内にレモンの酸味とアルコールの風味が広がっていく。


何気なくコメント欄を眺めていると悲しい嘆きが目に入った。

「えー彼女いないから浮気の心配ありません……ふははっ。それは頑張れとしか言いようがないわ」


若干不意打ち気味の笑いに危うく喉の奥から酒を吹き出しそうになる。

自虐を織り交ぜたユーモアのあるコメント。


出来る限りこういう面白いのがコメント欄に溢れてくれたら何よりだと切実に思う。




「……もう23時か。今日はそろそろ終わりにしようかな」

雑談配信を始めてから丁度1時間。いい感じに酔いも回って来た。

そろそろ枠を閉じるか……と配信終了ボタンにカーソルを合わせた時の事だ。



とある一人のリスナーの行動が流れを変えた。


【辛い目に会いながらも生きてて偉い代】 \50000


「……あ」

コメントの横に表示された文字。そこにはきっかり5万円と記されていた。



知らない人間の為に補足しておくと、これは投げ銭と呼ばれるチャット機能の内の一つ。

読んで字のごとく、リスナーの方から配信者に向かってお金を譲渡することができるのだ。


つまり今俺は一瞬にして5万円を手に入れた。なんと5万円である。



配信業を始めると金銭感覚が麻痺しそうになるがとんでもない大金だ。


5万あれば最新ゲーム機は買えるし、回らない寿司屋にだって行けてしまう。



それ程の額をひょいと渡されたのだ。

途端に胸の内から緊張感が湧き上がってくる。



「えー生きてて偉い代……わたあめさん。あ、ありがとう…ござい、ます」

平常心を試みるが、どうしてもたどたどしくなってしまう。

見てる方からしても動揺しているのは一目瞭然の筈だ。



そしてうちの視聴者たちは当然の如く皆そこに付け込んでくる。


【少ないですがこれでお酒でも買ってください】 \2000

【久しぶりの顔出し配信嬉しかったです!!】  \10000

【kakita、良かったら俺と結婚しないか?】   \50000

【朝の神プレイ死ぬほど痺れた】        \10000

【愛してる】                 \5000


……始まってしまった。


次々と俺の元に投げ込まれるお金。

たちまちコメント欄は投げ銭の嵐になってしまう。


「ストップ、ちょっと待て!皆一回落ち着いてくれ!!」

5万円ですら動揺を隠しきれないのに一瞬で数十万円を渡されてしまった。

慌てて止めるよう促すが全く聞いちゃ貰えない。


それどころか俺の制止を受けて、より一層勢いは増していく。


【やめてと言われるとやりたくなる】 \5000

【あー手が滑っちゃったー】     \50000

【kakitaさんに幸あれ!】      \777

【明日もいいプレイ見せてくれ!】  \3000

【焦ってるkakitaさん可愛いww】  \23000

【元軍人がこんなのでビビるな!】  \5555


「あ、あぁ……」

滝のように流れていくお金とコメントを見て慄く。

一応こっち側の設定次第で投げ銭を受け取り拒否にすることも出来る。

ていうか俺としてはそう設定した上で配信をしたいんだが……


俺が所属している企業はそんなことを許してくれない。

何たって向こうは余すことなく利益を得ようと日々計画を張り巡らせているのだから。



もう俺に出来ることはただ一つ。どこかで止まってくれと祈るだけだ。






配信を終了してから30分後。

恐る恐る投げ銭の総額を確認してみる。


「…………は?」


目の前に広がる光景に目を疑う。

そこに表示されていた数字は、文字通り桁違いだった。



おぼつかない足取りですぐ後ろに設置されているソファに腰かける。

駄目だ、もう現実感が無い。


「いや、いっそ夢だったりしないか?これ」

とうとうそんな可能性すら浮かび上がってしまう。


俺は確認の為にほっぺを掴んで、全力で引っ張ってみた。



……痛い。

頬にじんじんと広がる痺れが、紛れも無い現実である事を痛感させる。


いや、でもだって、こんなのおかしいだろ?



百歩譲って今日の配信が何か特別なものだったのなら分かる。

例えば一年に一度しかない誕生日とか……あるいはゲーム大会で優勝したとか。


しかし俺は大した事をした訳じゃない。ただリスナーと一時間話していただけだ。


強いて言えば過去の浮気話こそしたが……あれも雑談の一環に過ぎない。


そもそも俺はカテゴリー的にはゲーム実況者だ。

雑談配信に需要があるのかどうかすら疑わしい。


だと言うのに……



「一時間で総額…………140万円?」


今日の俺は、時給100万円超えという快挙を成し遂げていたのだった。

少しでも面白いと思って頂けていたらブックマークや評価をしていただけると大変励みになります。

次回以降はタイトル通り最強FPS系配信者としての日常を書く予定です。



実際生配信とか見ないので総額140万円がありえる数字なのかは分かりませんが……

明らかにおかしいと思う方がいらっしゃいましたら是非ご指摘をくださると有難いでs

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] こんな前の部分に指摘すいません 投げ銭機能は動画配信サイトにもよりますが手数料がかかってしまい投げ銭がすべて手元には入らないです また、所属してる事務所があるのであればそこでも引かれて…
[一言] プロンプトとグラディオラスとイグニスがいる…
[一言] どこぞの夏の色の祭りの人みたいに配信界に伝説を残す配信で草
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ