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元軍人の俺は最強のFPS系配信者として再び戦場で無双する  作者: ゆずけんてぃ
伝説の始まり
15/59

決意と涙

急場しのぎですが何とか…

謝罪と言ってもそこまでガチでは無いのでご安心を

……ただ、向こうはしっかりとした考えを提示してくれたんだ。


ここまで来て俺だけ本音を隠す訳にもいかないだろう。

決意を固め、正直な気持ちを吐露する。



「その、俺が一番気にしてるのは……FPSしか出来ない点なんだよ」


「……そう言う事ですか」


我ながら情けない悩みなのは理解している。

しかし真面目に活動を考えるのなら避けては通れない問題だろう。


俺はFPSの技能に関してはそこそこ自信があるが、逆に言えばそれしかない。

盛者必衰という言葉があるように人気にもいずれ限界が来る。


もしFPSブームそのものが終わってしまったら?

一本の武器で何年も生き残っていける程配信業界は甘くない筈だ。



……さすがの宮園と言えどこの件に関しては何も言えな「問題ありませんよ」




思考を遮る、最大限の自信がこもった声。

予想外の返答に驚いた俺はオウム返しで疑問を呈する。


「問題ない……だと?」

「はい。これを見ていただいたら分かると思います」


そう言って宮園はテーブルの上に何枚かの資料を広げた。



そこにはおびただしい数の数字やグラフの羅列がびっしりと記されている。

更に要点ごとの等間隔が極めて均等で、この資料を制作した者の丁寧さが伺えた。


重厚ながらも非常に見やすい記述に指を這わせながら、宮園が説明を始めていく。


「これ、年間毎のFPSプレイヤー人数の推移なんですけど……」



分かりやすい資料と解説のお陰で、重要な事を理解できた。


・FPSプレイヤーのユーザ数が三年前と比べて4倍近く増加していること

・必然的に配信を見る視聴者も相応に増えてくる為それ一本に傾倒していても全く問題ないこと



「例えばこの人は4年間FPS配信に絞って活動しているんですけど……」

「……視聴者数、下がるどころか伸びていってるな」


「はい。飽きる人間よりも新規の視聴者の方が圧倒的に多くなるんです」


「FPSが流行りまくってるから、どんどん見に来る人間が増えるって事か」

「その通り。少なく見積もってもこの流れは五年は続くと断言できますよ」



心配が杞憂だと言う事を20分程度で堂々と証明してくれた。

言葉だけなら都合よく感じてしまうが、データに基づいているなら疑念の余地は無い。



あまりに論理的な説明を受け、思わず目を疑ってしまった。


先程までの自由奔放でちゃらんぽらんな高校時代そのままの宮園とはまるで違う。


社会人として理路整然と説明を行い、資料を交えて端的に証明を済ませる。

今、俺の眼前に映っているのは……企業を支える立派な社長そのものだ。



「それに万が……いえ兆が一、柿田先輩が配信者としての活動を続けられなくなったとしても」


更に宮園は補足を付け加える。


「その時は私の責任として、今後の金銭面のサポートを全うすることを誓います」


「全うって……お前」




「…………ですので、どうか……私に付いて来てくれませんか?」



消え入りそうな呟き声が、耳の中に木霊する。

その声音からは酷く不安そうな感情が伺えた。



彼女はぎゅっと目をつむると共に再び右手を差し出して来る。


十二分に状況説明はしてくれたんだ。

もう何があろうと、急すぎたなどと言ってこの手を引っ込めることは無いだろう。


後は俺自身が、掴むか拒むかを選ぶだけである。




……答えは既に決まっていた。



「ありがとうな。俺の為にここまでしてくれて」


「……あ」


別に保障に目が眩んだわけじゃない。


もし言った通りの事態が現実になったとしても金を受け取るのは断るつもりだ。



……俺が一歩を踏み出せたのは単純に彼女の成長に感動したからである。


ただ理想だけを口にするのではなく、しっかりと行動に移し結果で示す。

その姿勢に、企業の長を務める者としての揺るぎない気概を感じた。


彼女となら……信じて共に進むことが出来る筈だ。




「……不束者ですが、これからよろしくお願いします。社長」



そう言って、差し伸べられた手を強く握る。

出来る限り、精一杯の笑顔を作りながら。



……これが俺の選択だ。

この先どんな未来が待ち受けていようと絶対に後悔なんてしない。


胸を張って最大限自分に出来ることをやってやるさ。





そんな決意を固めた所で、握った手に突然生暖かい雫が落ちて来た。


「ん?」


不意の感触に驚いた俺はぱっと手から顔へ視線を戻す。




「うぅ……ぐすっ……かきた、せんぱい……」


スカウトに応じたことに安心して堰が切れたのだろうか。


そこに居たのは大粒の涙を瞳からぽろぽろと零す宮園の姿。

目を真っ赤に腫らせ、何度も鼻水を啜っている。


「ど、どうした?」


俺の問いに返答を返すことなく涙に濡れた目元を拭く。

次に彼女は嗚咽交じりに謝罪の言葉を並べ始めた。



「ご、ごめんなさい…私、今日は……社会人として、ちゃんとしなきゃならないのに全然……」


そんなことは無い。むしろ真逆と言っていいくらいだ。

慌てて訂正する。


「いやいや、ちゃんとしてたぞ。見違えるレベルに立派だった」


「でもその前まで……た、ため口で失礼な事ばっか、言っちゃって……」

「……あぁ、成程」



何となく今の言葉で理解することが出来た。


どうやら宮園は先程までの奔放な態度に負い目を感じていたようだ。


あれは恐らく10年ぶりの再会と言う事もあって、距離感を測りかねた末の素振りだろう。

時間が経ってどんどん落ち着いてきたのがその証拠だ。


最も俺としては変わらない態度にむしろ安心させられた訳なんだが……


「先輩に会えるってなって舞い上がっちゃって……電話とかも急にしちゃったし……」


「……気にすんなよ。プライベート位は10年前と一緒でいいじゃないか」


空いてる左手で宮園の頭を撫でながら優しく諭す。



同時に、嘘偽りない真実を伝えておくとしようか。


「本当に嫌だったら会ってない。むしろ俺は、宮園のそういう所が凄く魅力的だと思うぞ」


「……え?」



駅前で会った際に言われた台詞をそのまま返す。

向こうもそれに気づいたのか目をまん丸にしてこちらを凝視していた。



あっけらかんとした姿ときっちりとした姿。

両方が揃って、初めて俺が惹かれた宮園皐月となるのだ。


欠けていい要素なんてある訳がない。



「だから……これからは一緒に頑張っていこうな。宮園社長」




宮園は何も言葉を発さない。



ただ、その代わりとでも言う様に……握る手により一層強い力を込めてくれた。



評価やブックマークをして頂けると大変励みになります。


ちょっと予定が変わって新章入るのが少し先になりました。

軍人要素もおいおい見せていこうと思います

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― 新着の感想 ―
[一言] 恋愛臭がします!ちくしょう!(笑)
[良い点] 内容凄い面白いから胸張って良いと思いますよ‹‹\(´ω` )/›› [気になる点] 前書きとかでそんなに自信無さげにせずとも大丈夫大丈夫。面白いからd(˙꒳˙* )
[一言] 社長と配信者、上司と先輩の異色てえてえで推していけば勝てる
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