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「よーそろってるなぁ、俺の生徒諸君」
よれよれのワイシャツのすそはズボンからはみ出ており、寝ぐせのついた頭をかきながら教室に入ってきた中年の男に生徒の視線は集まる。
「俺がこのクラスの担任。海道仲助だ。好きなように呼んでくれ。これから三年間仲良くしようや」
「ただの一教師と僕たちが仲良くするわけないだろう笑わせるな。僕の父は国会議員だぞ」
この生徒の一声でクラスに嘲笑が満ちる
「まぁそうなるよな。能力者学校にはレガシーズだとみなされれば誰でも入学許可は得られるが、このクラスだけははちょっと違う。お前たちのような財政界の子女が入学してくる、そしてそんな生徒の担任がそんじょそこらの能力者なわけないだろう。それにも気づかず笑ってるやつらはここで無駄な三年間を過ごしていきな。」
ここまで言われて自尊心の塊のような生徒たちが何か言い返そうとしたその瞬間、海道から目に見えないプレッシャーのようなものが教室に充満した。
「なかなか見込みのある生徒もいるみたいだな」
プレッシャーが収まると多くの生徒が青ざめた顔をしておびえた目つきで海道を見ている。
「健は平気なの?」
そんな多くの生徒と同様に背筋を冷や汗が垂れていくのを感じながらあかねが小声で尋ねる。
「あぁ、あれは威圧感を能力者のもつエネルギーで実際に表現させたものだよ。あそこまで強いのは初めてだけど、平気だった数人は僕みたいに子女の護衛として入学してきた戦闘訓練を受けた生徒たちだろうね。あの先生はただものじゃないよ、こんなところで教師をしているような人じゃないはずだ。」
それ以来生徒から横やりが入ることもなく、というより生徒は一言も発することなく初日のオリエンテーションは終わりを告げる。
「明日は実際に能力を使った実習をするからグラウンドにこいよ」