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2112年四月十日
風に揺れる桜の木々に挟まれた校門より校舎に続く広い道を真新しい制服に身を包み、襟元に一年生であることを証明する桜の花をあしらったバッジをつけている15、6歳の男女があるものは緊張した面持ちで、あるものは友達と談笑しながら校舎に向かい歩いていく。
「これより入学式を始めます」
パンツスーツに身を包み赤い縁の眼鏡をかけた女性が壇上で発すると、1000人はゆうに入れるのではないかと思われるホールに漂っていた決して大きくないざわめきはなくなり静寂が漂う。
「能力者大臣よりお言葉です」
と紹介され真っ白の口ひげを蓄えたおじいちゃんと呼んで差支えの無い男性が登壇してくる。
「田所です」
「新入生の諸君。本日をもって諸君は能力者学校の生徒となる。この学園が家となる。友を作り、愛を学び、能力を知り実りのある3年間にしてもらいたい。」
このように始まり
「ここにいる教職員一同諸君のこれからの精進に期待する」
という言葉で絞められた。
この後も様々な貴賓の挨拶は続き1時間後式は終わり、新入生はホールに入るときに配られたクラス分け表にのっとり教室へ分かれていく。
「知ってるか。今年の入学制に四大財閥の人間が二人も入学してるって噂」
「聞いたよ、西日本の瀬戸家の次女と東北の戸塚家の次男が入学してくるらしいぞ」
「いい成績納めれば就職に有利かもな」
「狙うわ玉の輿よ」
「あなたじゃ無理よ」
このような生徒のざわめきの波はホールからそれぞれの教室へと流れていく。
第三次世界大戦のおり日本の国土も多くが被害を受けその復興を首都圏以外は四大財閥が行った。
そのような経緯もあり北海道・東北、西本州、四国、九州は実質的に四大財閥による自治が認められており、各自で軍事組織も保有しているため、日本は実質的には連合国家のような形をとっている。
このような生徒のざわめきの波はホールからそれぞれの教室へと流れていく。
「健、制服似合ってるかな?」
ショートカットにこの年にしては少し大人びた容姿の女子生徒が隣を歩く男子生徒に対して少し上目づかいで尋ねる。
「すごい似合ってる、あかねは周りにいる生徒の中で一番かわいいよ」
「そうゆうこと健は平気で言うよね」
健としてはここで照れてくれたりしたらうれしいのだがあかねは期待した反応は見せてくれない。