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6.侍女

途中で王子目線入ります。

 生徒会の話はさておき、マルティナの侍女を連れて生徒会室へ来たものの、どうやって先ほどの件を切り出せば良いのか考えあぐねていた。


「……ま?……か…ま?レベッカ様?」

「あ、はいっ」


 どうやらマルティナの侍女に何度も呼び掛けられていたようだ。少し自分の世界に入りすぎていたらしい。


「ごめんなさい。それで…あ、先にお名前を伺っても?」

「申し訳ございません。わたしはストレーム家三女マルティナ様専属侍女のサーラと申します。先ほどは大変失礼いたしました」

「いいえ、私は特には…。それよりもサーラさん。その…何故マルティナ様と口論になっていらっしゃったのか、差し支えなければお聞きしても良いかしら?」

「何とっ…同じ公爵家の令嬢といえどここまで違うとは…嘆かわしい…」


 せっかく座ったソファからわざわざ床に下りて横座りとなり、どこからか取り出したハンカチを涙の出ていない目元に引き寄せて拭うフリをしていた。そんなサーラの姿を見て、これは思ったよりも時間がかかりそうだなと、午後の授業は受けられそうにないと覚悟を決めたのだった。


◇◇◇


 一方その頃。フィリップ王子は…とても辟易していた。


「フィリップ様ぁ、サーラったらいつもひどいんです。サーラってば…」


 そんなことを庭園から出てから延々と口ずさむように話ながらマルティナが王子の腕にしがみつくものだから、いつものスピードで歩けなかった。

 かなりの時間をかけて医務室に着いた頃には、さすがの王子も首を突っ込んだことを後悔していた。しかしレベッカに頼まれた手前、怪我の有無程度は確認しておいた方が良いだろうと医務室内で先生にマルティナを診てもらう間も付き添っていた。


「頬が少し腫れている以外は特に怪我は無さそうですよ」

「そうですか。それなら心配いりませんね。では僕は授業に出席しますので後は宜しくお願いします」

「ええもちろんですわ、フィリップ殿下。さ、マルティナさん、頬を少し冷やしましょう」

「えっ?あたしを置いて行っちゃうんですか?」


 さすがにこの発言は誰も予想しておらず、先生ですら驚いた顔をしていた。


「マルティナ嬢。僕は必要であればしかるべき処置を受けさせるために、君を医務室へ連れてきただけだ。一緒にいる必要はないだろう?」

「そんなっ!…あ、でも…ええ……分かりました。ありがとうございました」

「では」


 そう言って医務室から出た途端、思わず大きな溜め息が出てしまう。


「はあ…何なんだ…。本当に公爵家の令嬢なのか?」


 同じ公爵家の令嬢なのに、レベッカとは雲泥の差がある。マルティナが自分の婚約者にならなくて良かったと安堵した。もう二度と関わるのはよそうと誓ったのだった。

 しかし、その誓いはマルティナの手によって早々に打ち砕かれることとなる。


◇◇◇


「そう…。ストレーム家にはもうご連絡されているのね…」

「はい。わたしはマルティナ様のお幸せだけを願っておりまして、お相手様の身分のことは気にしておりませんが…その…やはり複数人というのは違うかと…」

「私もその意見には賛同ですわ。身分差があっても結ばれるというのは現実にあり得ますが、複数人というのは…ご結婚はされないのかしら?」

「さあ。その辺りはわたしでもマルティナ様のお考えはさっぱり分からないのです」

「そうね…。でも、サーラさん。それでマルティナ様に手を出すのはやり過ぎかと思いますわ。サーラさんがマルティナ様のことを想って行ったことだとしても、です。反対されれば燃え上がる恋などと…」

「反対されればされるほど恋愛は強固になるとは思いませんか?わたしはそう思っております!それで真実の愛を…どなたか一人にお選びになると…」

「サーラさん…」


 マルティナの侍女であるサーラに話を聞けば聞くほど、マルティナの異常さが伺える。いや、サーラも十分に変な子ではあるが、マルティナほどではない…と思いたい。

 こんな話を聞いたため、マルティナを任せてしまったフィリップ王子が心配になった。

 ふと王子のことが頭を過った時にちょうど放課後を告げる鐘の音が響いてきたので、サーラとの話は終えることにした。とりあえず、マルティナに手を出すことだけはしないようにと約束を取り付けて、荷物が置かれたままの教室へ向かう。

 結局午後の授業はサボってしまった。誰にも聞かれないように小さく溜め息を吐いたのであった。

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