閑話ー攻略対象達side
「皆でマルティナを共有すれば良い」
「「「「は?」」」」
突然、王子が現れたと思ったらとんでもないことを言い出した。
俺たちはマルティナを愛する会のメンバーだ。メンバーは商会の息子である俺ことカール、料理人のベン、学園の教師でもあるブルーノ先生、先生の息子のエリアスだ。
元々はそれぞれがマルティナと恋人だと思っていて、お互いを牽制しあっていたのだが、この国の第一王子であるフィリップ王子がマルティナに惹かれてからその考えは変わってしまった。王子が婚約者を放ってマルティナに惹かれるのは分からなくはない。
だがしかし!マルティナは俺たちのものだ!
元々、高位貴族らしくないマルティナは貴族の生活に苦しんでいた。公爵家令嬢という身分のために辛い日々を送っていたらしい。俺たちにはどういう辛い日々だったのかすべては分からないが、体のラインを気にして食べたいものも食べられないような日々もあったのだろう。甘いお菓子をとても感動しながら食べていた日を思い出す。お金はあるはずなのに思うようには過ごせないんだなと憐れんだな。
それなのに。王子のせいでまたマルティナはそんな辛い貴族社会に戻らねばならなくなりそうだ。それはマルティナを不幸にしてしまう。
どうにかしてマルティナを幸せな道に導けないかと、マルティナを愛する会を開いたのだが……どこからこの会の情報を仕入れたのか王子が突然会合を行っていたこの隠し部屋に入って来たのだ。
そして突然おかしなことを言い出した。
「僕はマルティナに対して今以上の想いになることはない。僕では駄目なのだ。だから君たちに託したい。一人で駄目ならば皆でマルティナを共有すれば良い」
この国の王子としてあるまじき発言だと思う。一夫一妻の国で皆で一人の女性を共有するなど……良いのか?しかも自らは身を引くと。
そういえばマルティナはこの会の全員に愛を囁いていたようだった。マルティナ自身がこの国の制度に異議を唱えてたのかもしれない。
俺たちは正しくマルティナの意思を反映すべく、王子と協力することにした。
マルティナと俺たちの今後を考えて一筆認めてくれた王子には感謝する。そのおかげで各実家への説得は早かった。詳しい中身は知らないが、両親に見せた時には少しだけ顔色を悪くしていた。少し不思議には思ったが、両親は俺が悪いようにはしないと言っていたから、やはり王子には感謝しかない。
見返りにマルティナを数日だけ独占出来る権利を与えてやった。まぁ、それも俺たちの未来を確実にするためだと言っていた。
そしてマルティナもマルティナで、未来を夢見ていろいろと考えているようだった。でも俺たちとの未来はまだ内緒だ。これはサプライズなのだ。マルティナの案に乗りつつも、最終的にはこの愛する会の皆で外の世界でのびのびと楽しく暮らそう!
こんなに今後の生活が楽しみだと思ったのは初めてかもしれない。幸せな未来を夢見て皆で準備をしたのだった。