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16.結末

少し長いです。

「………え…」


 思わずティーカップが手から離れそうになって、慌てて持ち直した。

 ローランはきちんとフィリップ王子に伝えてくれたらしい。私はまたしても王城に来ていて、今は王子の執務室にある来客用のソファでゆっくりとお茶を飲みながら王子の話を聞いていた…のだが。


(ゲーム通り?…の結末…かな?)


「ローランに聞かずに僕に直接聞いてくれたら良かったのに」

「あ、え…申し訳ありません。フィリップ様が…その…」


 王子の顔が怖かったからなんて言えない。それともうひとつずっと引っ掛かっていたことがあったから余計に言えなかったのだ。


「ん?怒らないから言ってごらん?」

「ま、まだ…マルティナ様を想っていらっし……ひぃ」


 ほらー、怖い顔!だから言えなかったのよ。普段なら貼り付けた笑みを崩すことはないはずなのに、私と二人の時は寛いでいると思えば…ちょっと許せてしまうのだけども。


「だから、それはぜっっっっったいにあり得ない!ほんの欠片も、それこそ針の穴ほどもあり得ないからね!確かに…そんな風に見せかけていた時もあったし…レベッカには辛い思いをさせてごめんね。僕にはレベッカだけだから。信じて?」


 そ、そこまで言われたら信じないわけにはいかないわ。いや、その…ちょっとだけ…乙女ゲームの力とかあるかな、なんて。ヒロインが魅了とかいうスキル?を使うってよくあるし。

 そもそも、私から見ても可愛い顔をしていたし。おそらくあの見た目で淑女であったならば、身分も相まって引く手数多だったと思う。それこそ王子との婚約もあり得た話。それを棒に振ったのは本人だものね。


 しかし、公爵家に生まれてあんな子に育つのかしら?もしかしたらマルティナは転生者だったかも…はないか。乙女ゲームを知っていたとしても全エンド配信されていなかったし、現実に生きるにはちょっと…嫌じゃない?せっかく高い身分に生まれたのに、すべてを捨てて他国で平民として暮らすとか…ちょっと無理だわ。それなりに今の生活に慣れてしまったものね。私なら別のエンドを探すわ。まぁ、幸せと感じるのは人それぞれだから…あれがマルティナにとっての生き方だったのかな。逆ハーエンドを狙っていたっぽいけど。

 それにしても、王子に懸想したのは許せないけれどね。その分、王子が制裁してくれたから良いけど。


 そうそう。

 マルティナ達は無事に?全員国外追放となったらしい。あの生徒会報告会の時には、攻略対象者達は王子と結託していたんだって。


 マルティナが王子に興味をひかれだして、攻略対象者達は焦ったらしい。息苦しい世界は嫌だとあんなに貴族の世界を嫌っていたマルティナが王子に靡いたことで、皆の想いがひとつになった。

 皆でこっそりと対策を考えていたところにどういうわけか王子が登場。どこから話を聞き付けたのかと、攻略対象者達はものすごく怯えていたとローランから聞いたのは後日のこと。それは良いとして、そこで王子はいくらマルティナが想ってくれたとしても王子自身が想いを返すことは万が一にもないと。…私だけだと……は、恥ずかしい!


 では結局誰がマルティナを幸せにするのかと、今度はもめ出したらしい。早めに話がまとまれば良かったのだが、それぞれがマルティナとの思い出を忘れられないと離れたくないと言い出したものだから、王子がひとつの提案をした。たぶん、結論が出るまで待てなかったのだと思う。これは勘だけど。


 で、王子は、皆でマルティナを共有することを提案した。まさか王子がそんなことを言うなんて考えてもいなかったが、マルティナ自身もそう望んでいるように見えたから、彼女の意志に沿った形を取ったのかもしれない。もちろん、攻略対象者達の意見も存分に尊重して。

 その案がとても名案だと皆は了承した。ただ、それを確実にするためにはマルティナから聞き出したい情報があるから少しだけ協力して欲しいと王子が頼み…というのが、マルティナと仲良くしていたように見えた時だったとのこと。聞きたい情報が何だったのかは教えてくれなかったけど。


 国から出ることに異論がなかったかといえばゼロではなかったらしいが、マルティナが自由に生きられるならばと…何というか、マルティナってば愛されているわね。

 攻略対象者達は事前に家の説得をしていたらしい…もちろん王子からの一言も添えて。だから国外と言っても、カールの実家である商会の力が多少なりともある国へ行くらしい。そこの教育機関にブルーノ先生を紹介したり、ベンは料理人ネットワークで何とかなるとのこと。エリアスは学園から推薦状をもらって編入準備はバッチリらしい。

 す、すごいよ…。

 一番準備が出来ていなかったのは、こんなことになるとは知らされていないマルティナ。しかしそれも、ストレーム家がさっさと準備をして国外追放の決定が下された翌日にはポイッと家から出したらしい。


 そしてそのストレーム家だが。ここが一番可哀想だ。さすがに三大公爵家のためすぐすぐとはいかないらしいが、最終的には爵位の返上をさせるらしい。次の公爵家は既に決まっているとのこと。…王族を怒らせちゃダメよ。王子が国王になる前には変わってるわね。


 それにしても、マルティナの実家とはいえ少し重すぎる罰の気もするのだけれど。そのことを王子に聞いてみたが、


「剥奪の予定を返上という形にしてあげただけでも温情だよ」


と、人形のように綺麗な笑みを浮かべながら王子が口にしたので、私はそれ以上のことは聞かなかった。だって怖いもん。目が笑ってなかったよ。気付かなかったことにするわ。



 それからはとても平穏な日々だった。王子とは学園卒業と同時に結婚した。だってあの王子が!跪いてプロポーズしてくれたのよ!乙女の夢よね。うっとり。


 その後、王子は無事に国王となり、私も王妃の仕事を必死で覚えて何とかこなせるようになったし、可愛い子供も出来た。ちょっと…子沢山なのだけど。王子が四人と姫が三人…いやぁ、大変だったわ。

 その間に、何故気付いたのか分からないけれど…前世の記憶のことを聞き出されたり、子供も含めて誘拐されそうになったり…恥ずかしいことも怖いこともたくさんあったけれど幸せな日々を過ごしたのでいつしか乙女ゲームのことは頭からすっかり抜けていた。

 まさか子供にまで影響するなんて思っていなかったもの。もしかして別の乙女ゲームなのかしら?

 ま、でも、それはまた別の話。


 この乙女ゲームではモブのはずの腹黒王子と転生がバレた公爵令嬢の私は幸せになったのでした。


 …おしまい?

おまけの2話があります。

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