15.裏側ー王子side
再びの王子目線。
生徒会長が壇上から降りようとする瞬間がちらりと見えた。
何ともちょうど良いタイミングで、先頭にいる頭の軽い女が講堂の扉を開いたのだ。
開かれた講堂内が頭の弱い女の向こうに見える。少しだけ段がある上にレベッカは座っていた。生徒会役員のメンバーだからだろう。その隣の席は空席になっていた。この目の前にいる一名の席だろう。
しかし、何というか…こいつらバカだと思った。おっと、さっきから王子なのに口が悪い?町中に紛れたりしないといけないから、どんな言葉も知ってるよ?そうでないと王家の影は操れないさ。
レベッカが倒れた時には心臓が止まるかと思った。あんなに全身が冷えこんだのは初めてだっただろう。身体の内側から凍りついていくような気がした。僕はレベッカが愛しくて大切で…命なのだ。
床に崩れたレベッカを抱き起こしていたのはローランだった。あいつ…覚えてろよ。僕はすぐに駆け寄ってローランからレベッカを奪い抱き上げて、すぐに王城へ向かうように指示した。
何だかきゃんきゃんわんわんと吠えている声がいろいろと聞こえた気がしたが、耳に入ってこない。とにかくレベッカを診てもらいたかった。突然倒れるなんて…無事であって欲しい。
王城に戻り医者に診せたところ、特に異常はなかった。強いショックによる失神だろうとのことだった。体調を崩した後であるし、更には精神的に弱っていたであろうタイミングでの強いショックだ。原因は僕だ。いやそもそもの原因はあのクズ女だ。くそっ。とにもかくにもレベッカが倒れたのは僕が悪い。頼むから早く目を覚ましてくれ。
失神にしては長く目が覚めず、僕は気が気じゃなかった。あまりに長い時間だと意識障害を起こすかもしれないと言われたからだ。花を取り替えたり、ただ顔を見るだけだったり、とにかく数時間おきにレベッカが眠る部屋へ行った。早くその瞳に僕を映して欲しい。
そういえば合間にローランが報告に来ていたな。学園は騒然としたらしいが、ローランが僕の代わりにいろいろと手を打ってくれていた。
なかなか優秀だろう?僕の案はある程度伝えておいたからね。
クズ女を含むあいつらはすぐに王家の護衛達に捕らえられ、生徒会報告会は何事もなかったかのように無事に終えたらしい。何事もなかったかのように、なんて大変だっただろうに素晴らしい生徒会長の手腕だ。今後、王城に勤めてもらっても良いかもしれない。考えておこう。
さて、あの女達だが。一旦捕らえたが、学園内での出来事。すぐに釈放されたことだろう。元々そのつもりだ。
しかし…今回は少しばかり大きな事になってしまった。
ストレーム家の介入、レベッカに対する罪の擦り付け、王子である僕への態度…はどこまで罪を問えるか微妙か。しかしながら、学生が起こすには少しばかりやり過ぎた。いや、親も介入したために行き過ぎたのだ。
貴族社会のバランスを守るために必要な対応をしておかないと、今後のことがある。王家に忠誠を誓えない者はそれなりの罰を与えなければならない。そのことを身をもって知ってもらわなければならない。…父はまだしも母に話すのは怖いな……。とはいえ王家に生まれたからには仕方がない。
愛しい眠り姫の姿を見て気合いを入れ直し、両親の元へと向かうのだった。