傍観者
「きこえるでしょ」
「きこえない」
「ちがうよ、それはきこえないふりしてるだけ」
「きこえない、きこえないきこえない」
「あーもー幼稚園児みたいなこと言わないの!」
「きこえない!!」
君は目を伏せて、ドンッと尻餅をついた。
大丈夫かな、なんて。
いやいや、何が大丈夫かなだ。
私はなーんにもみてない。みえない。
「ねぇ」
君は頬をおさえる。
そして目を細めると――――
「みてたよね?」
みてない。
君は腕を頭の上に持ち上げると、体育座りのまま目を伏せた。
君がふと、顔を上げると、私と目が合った。
「目、みたよね?」
みてない。
君は倒れこんだ。
君は必死に私を見ながら口を開く。
「きこえたでしょ」
きこえない。
きこえないよ、なんにも。
▽
君は目を伏せて、ドンッと尻餅をついた。
女の子達の中のひとりが、君の頬を平手打ちする。君の頬が真っ赤に染まって、君は頬をおさえる。
そして目を細めると、ほろりと、その目から水が零れた。
女の子達はそれを見て楽しそうに、座りこんだ君を蹴る。何度も。何度も。
君は腕を頭の上に持ち上げると、体育座りのまま目を伏せた。
君がふと顔を上げると、私と目が合った。
刹那。
強い一撃が、君のみぞおちに入る。
君は倒れこんだ。
苦しそうにしながら、君は必死に私を見ながら口を開いた。
「たすけて」