ミノリの休日
次の日、やけに体が重かった。
「廻らないと…」
「ミノリしゃま、無理はよくありましぇん」
「でも、西の町用の塩も作らないと…万能薬、飲む」
「こら!休みなさい!」
「そうだぜ!一日位放って置いたって死にやしねえ。今まで何年も暮らして来たんだからよ」
「そうよ。人は案外しぶといのよ?」
「ミノリ様、トーラス様に言われていた説明文もまだ読み終わってないのではないですか?」
仕方なく、ベットに潜ったまま、スマホの説明書アイコンを押す。
ミノリは間もなく眠りに落ちた。
お腹がすいて目が覚めた。
「大丈夫か?ミノリ」
トールがいた。随分と久しぶりな気がする。
「トール…トールこそ、メールの一つもなかったから、心配した。こっちからは何故か連絡できないし」
「こっちはそのスマホ?持ってないし。あんまり干渉し過ぎる訳にはいかないんだよ」
トールが出してくれた美味しい食事をたべて、少し元気が出た気がした。
「お前、ちょっと働き過ぎだよ。それに隙あり過ぎ」
「はあ…前世ではそういう事に全く縁がなくて」
何しろ彼氏いない歴イコール年齢だ。ていうか、つい最近まで小学生だったし。
「さすがに子供過ぎたかなと思ったんだけどさ、他に適切な魂もなくて」
「でも、邪神を倒した勇者は、死んで転生した訳じゃなかったんでしょう?」
「僕の五つある世界の一番強い奴に頼んだんだけど、妻子持ちだし、終わったら戻す条件だったからなー。実は再生の方が難しかったりするんだぜ」
「そうなの?ていうか、五つ?」
「複数の星を管理するのは別に珍しくないぜ?ホトスは二つしかなかったけど」
「もう一つは?」
「あー、ここより文明進んでたんだけど、真っ先に狙われて、滅んだ。
ホトスはさ、僕が新米神だった頃に色々と世話になってたから、せめてバルスだけでも助けたかった。
ていうかさ、神として救える命があるなら、助けたいと思わないか?それをあいつは…」
「何か不味い事してるの?」
「明確じゃないけど、グレーゾーンて所かな。ミノリの魂も、全く関係ない世界の物だし。だけど、ミノリの魂は綺麗で強かった」
「私、弱いよ?」
「そうだな。加えてドジだし、説明文読むと速攻で寝るし」
「…う、そのうちちゃんと読むよ」
「期待しないでおくよ。まあ、代わりに色々経験してるからいいと言えばまあ、いいけど。じゃなくて魂の話しだけど、ミノリには分からない話だろうな」
「読まなくていいの?」
「しいて言うなら、魔物の欄位は読んでおけよ?あとはスキルは安いんだから、適当に入れて置けよ?生存率につながるから」
「ん。分かったよ」
トールは、ミノリの額に手を当てる。
「え?な、何?」
「ちょっと黙っとけ」
体が、すうっと軽くなった。
「また来る。今日位は休めよ?」
トールはふっと消えた。
色々お礼、言いたかったんだけどな。
とりあえず盾と、剣を新しくした。風神剣で、風の刃を飛ばせるらしい。値段は5000。皮の盾は、500。
スキルは、瞬歩50と、状態異常耐性80、命中10と回避30。身体強化20と投擲10、それに索敵30を覚えた。使いこなせるかは不安だけど、練習していこうと思う。
錬金術の本を読みながらポーションを作っていたら、鉱物の錬成が出来る事に気がついた。
試しに鉄鉱石にかけてみたら、純鉄と不純物に分ける事が出来た。後でガンボさんの所に持って行こう。
それと自分用に、魔力回復薬も作った。ポーション用のタタム草と、魔力回復薬のコーラル草は育てておいた方がいいかもしれない。ハーブとしての使い道もあるし、生きるので精一杯な世界にも、潤いは必要だ。
それと石鹸を幾つか。クリーンの使える私には必要ないけど、清潔は大切だ。これは消石灰と魔物の油から作った。また貝殻を集めに行かないとな。
こんなゆっくりとした時間も、たまにはいいな。確かに私は、焦っていた。辛い思いをしている人を、助けたかったから。
でも、私が動けなくなっちゃったら意味ないんだよね。