再生へ
最終回です。今まで読んで頂いてありがとうございました。
新連載始めました。魔王の娘、よろしくお願いします。
この人、いきなり何を言い出すのだろうか?
あれ?いきなりでもないのかな?キスはされたし。あの時は、いたずら書きの仕返しかと思ったけど違ったし、よく分かんないからスルーしちゃったけど。
「私が知ってる結婚と、意味は同じだよね?ていうか本気?」
「本気。前に聞かれたよね?加護が強くなった意味。結構最初から気に入ってたけど、何度か話すうちに…ステータス見て、加護がMAXになってて、本人が一番驚いたよ」
またもや人外からのプロポーズ。私の人生、どうしてこうなった?
「ミノリ?…僕じゃだめかな?」
「いきなり過ぎて思考が追いつかないよ。嫌いじゃないけど、考えた事もなかった」
トールは、少し安堵の息をついた。
「嫌われてないだけ良かったよ。世界再生なんて無理難題を頼んだし、顔にいたずら書きされたし」
「あれはトールが無防備過ぎるのが悪い。神様のくせに気配感知も持ってないの?」
「ミノリにあげた亜空間に、ミノリの気配があるのは当たり前かなって。疲れてたし、まさかあんな事されるなんて予想もつかなくて」
「もっと怒られるかと思ったけど」
「子供のいたずらに目くじら立てる程心は狭くない」
「ふうん。でも今の私はお酒も飲める大人たし」
「あれは普通の酒じゃないよ。御神酒だから、神の器を測るのに丁度いいと思った」
「それで今回は飲みきったから、神様って事?」
「まあね。御神酒には、性質が出るんだよ。最初の頃より質が良くなったのは気がついた?」
「美味しくなったかな?味覚が大人になったと思ってたけど」
「元々質がいいからね。だから精霊達もミノリの魔力には喜んでいただろう?」
「う…まあ」
食料品扱いは微妙だったけど、嫌われるよりはいいよね。
「普通の人間には一口だって飲めないよ。僕はずっと待っていた。君が神になるのを」
トールがトールじゃないみたい。うーん、ここまで熱烈に言われると、うっかり頷きそうになるな。
「一緒に世界を管理している神達も紹介しないとね。仲間が増えるよ」
柔らかい光に満ちた空間には、10人程の人達。
「あ?全員集合なんて、珍しいな」
「それでどうなったのですか?」
「お付き合い?それとも結婚?」
「いや、トールが振られた、だよな?」
「お前らー!人をダシに賭けをしてたな!」
「当然じゃない、こんな面白そうな事、黙って見てるなんて出来ないわよ。で?」
「で?じゃねえ!新神が戸惑うだろうが」
「トーラス、モールドで、また反乱が起きる」
「ちっ…しゃあねぇな。ミノリ、ちょっと待っててくれ」
「で?どうするの?トーラス様の気持ちに応えるの?」
「はぁ、正直いきなり過ぎて、戸惑っている所なので」
「主神と人間のうちからあんな関係を築けるって、凄い大物新神が来るからみんな楽しみだったんだよ」
「強大な力を持つ主神様を畏れもせずに接する事が出来るのだから、充分可能性ありですね」
「ねー?バルスの精霊、アトムと付き合うって可能性は?」
「ミノリさん、せめてヒントだけでも」
うん、ここの人達は暇なんだね。
どう、と聞かれても困る。二人の関係は、スタートラインに立ったばかりなのだから。
お仕事してるトールはちゃんと神様っぽかった。年齢表示も消えてしまったから、きっと時間は腐るほどあるのだろうし。
後日、ミノリがバルスの新しい神様になったと住人達の心に通達された。同時に、ホトス様が既に亡い事も。
この世界でミノリを知らない者はいない。そしてミノリが世界を良くしようと必死に頑張ってきた事も。
バルスは再生してゆくだろう。