発展の為に
今日で15歳。元の世界で生きていたら、中学3年生で、受験生だ。
今年は茶葉を入れたシフォンケーキを焼いた。勿論たっぷりと生クリームも添えた。
15か…。その割には。
体はちゃんと成長している。だけど、女の子に大切なものが来ない。やっぱり欠陥品だったのかな?この体。
これじゃあ結婚できたとしても、子供は無理かもしれない。月の煩わしさはないけど、…まあ、うっかり手足を付け忘れた。なんてよりはましかもしれない。
こうして生き返ったのは有難いけど、デリケートな事だから、トールにも抗議しにくい。
「あれ?美味しそうな物を食べてるのに落ち込んでいるなんて、珍しいね。何かあったの?」
「アトム…精霊は長生きだけど結婚したりとか子供が生まれたりとかないの?」
「僕らは属性の象徴としてホトス様に造られた存在だからね。ミノリ、結婚したいなら僕とする?」
ちっ、人外め。結婚だって意味分かっているの?私がおばあちゃんになってもそのままなくせに。
「人間には、寿命があるんだよ?」
「だから、ミノリはこの世界の新しい神様になってよ。ホトス様の代わりに僕達と一緒にいてよ、ね?」
「ね?じゃないの!もう。そう簡単に、人間が神様になれる訳ないでしょ!」
「でもミノリは、神様みたいな力使えるじゃないか」
「それはポイントの力なの!」
「何度も聞いたけど、そのポイントっていうの意味不明なんだよね」
「まあ、私も仕組みとか分からないし、魔法と違ってこれは私にしか使えないし。トールが来たら、直接聞いてよ」
「畏れ多いよ」
ホトス様がどんな神様だったか知らないけど、相手はトールなんだから、気を使う必要もないと思うんだけどな。
「ホトス様は、どんな神様だったの?」
「とても優しい神様だったよ。もう一つあった世界の方も、バルスも、とても良く見ててくれた。だから安心しすぎてたのかな」
「精霊達は邪神と戦ったりしなかったの?」
「ホトス様が僕達を呼ばなかったから、到着が遅れたんだ。気づいたら、終わってた」
「私など、気づきもしませんでした。急にホトス様の加護が消えて、戸惑っているうちに邪悪な気配も消えましたけど」
「私達四属性は、勇者にこき使われたけどね」
「思い出したくもねぇな。その点ミノリはいいな。意思を尊重してくれるし、なんてったって魔力が旨い!」
その褒め方はどうかと思うけどね。
一応、違う魔物になっていないかと、魔の森ダンジョンをチェックして少し後悔した。
異世界のGは巨大だった。しかも二足歩行。
頭が真っ白になりました。終了。
家を建てた残りの木材から、紙を大量に作った。
樹脂を分解する薬剤をどうしようかと思ったけど、不純物を除くピュアで代用できてしまった。魔法って便利。
しばらく亜空間の一部は製紙工場になった。
さすがに全部書き写すのは大変なので、困っていたら、補助魔法のコピーを覚えた。しかも同じページなら、枚数に係わらずに一気にコピー出来た。
ページ数は多いけど、そこは頑張るしかない。しばらくは事務員さんになるんだ。
それが終わったら製本して、やっと完成。多めに20冊作ったので、町の人数に合わせて多く持っていくつもりだ。
これで魔道具は、大体大丈夫だろう。量に差はあるけど、魔力自体はみんな持っている。
そこから魔法を覚えられるかは、イメージ力の差も大きい。
本を持って行ってから、自分の子供に文字を教える人が多くなった。次の世代に託したい気持ちは充分だ。
マルクトや大きな町では、魔道具の研究を始める人も出てきた。
ポーション作りも本にまとめて、製本した。今回はちゃんと休みながら働いたので、食材を切らす事なく出来た。
海産物もだけど、勿論肉も。邪神跡地は、いい狩場だ。
ランクが高い魔物は、素材としても優秀なので、安全面の向上にも役立った。
もうバルスは、再生したと言えるんじゃないだろうか?