これからの世界
この辺の野菜は、ファウストの町の一角に、自分専用の畑を作って、そこで作られた物だ。
「ね、トール、もうすぐ15。私も大人なんだよ?」
「ミノリが大人、ね。因みに僕が管理している世界は、大人は18なんだよ」
「バルスでは違うよね?」
「今のバルスはそういう意識はあんまりないね」
「まだ生きるので精一杯だからね。いずれは子供は学校に行って、学ばせたいな」
「ミノリが思う世界を目指せばいいと思うよ。でもいつまでもミノリに頼るのは違うよね?」
「そうだね。さすがに7つの町の先生業はきつい」
「教える立場の人間も作るべきだね。ミノリはその先生を管理する」
「校長先生みたいな?」
「そんな感じ…よりも更に引いた感じが理想かな?」
「それだと私、要らなくない?」
「そうやって次に廻していくのも大事だよ」
「なるほど。その間に違う事も出来るしね」
「でもそうやって休みを作っても、ダンジョンに潜ってたら休めないよね?」
「鉱石も採らないとだし」
「その為の夢現ポイントだろ?」
ミノリはポンと手を打つ。
「なるほど!鉱脈を作るんだね!」
特にシースクと、パラオルには必要だね。
「ポイントは、町のすぐ近くには作らない事。ある程度の不便さも必要だから」
「鉱毒も怖いしね。さすがにその辺は年の功だね!」
「年って…まあいいや」
「ポーションも、今はマルクトでしか作る人がいないから、それも教えないと」
グラスを傾ける。あとほんの少しを残してミノリに限界が来た。
「あと一口か。楽しみだな」
それにしてもミノリの酒は、旨いな。
抜けてるのか、信用されているのか…多分前者だな。
次の日。一応休みとして考えていたけど、折角なので鉱脈の調査をする事にした。
鉱床になる岩場も必要だし、あとは種類だよね…鉄と魔鉄、銀は最低でも必要だし、ミスリルは、今までどおりダンジョンだけでもいいけど、冒険者の為の金属だし、魔の森や邪神跡地にあってもいいかも。
ポイントで作っている筈なのに、魔法を使っているような、何かが抜ける感覚があるのはどうしてだろう?普通のポイントはそんな感覚はないのに。
シースクの方は、アンデットドラゴンがいた近くによさそうな場所があった。
マルクトの近くにも鉱脈を見つけたけど、枯れそうだったので、足しておいた。
パラオルは、まだ未発見の鉱脈があった。町からは結構遠いし、最後に見つけた町で発展もまだまだなので、話だけはして、当分は持っていくことにする。
町によって発展具合は違うけど、野菜に関しては手を離れつつあるし、魔法も浸透してきた。魔道具に関しては難しい所だ。何しろミノリ自身が付け焼き刃な知識しかない。
あとはポーション系だけど、これに関しては、マルクトの錬金術師の方が、ミノリよりも知識があった。世界樹の葉を渡したらえらくありがたがられた。
代わりに錬金術を教えてもらう事も約束した。
人口も徐々に増えつつあるし、あとはトールの言うように、新しい先生を育てる事だよね。私はまだ子供だけど、魔物のいるこの世界では、何があるか分からない。ていうか私が死んじゃったらこの世界も終わりなんだよね…。
とにかく、発展が止まるのは避けたい。
魔の森ダンジョンは本当に虫の魔物が多いのだろうか?
ミノリは、中を覗いて見る事にした。そしてすぐに顔を引っ込めた。
け、毛虫!!無理だ…。しかも柴犬サイズのが沢山うねうねしている。
「ミノリ、ここには随分下の方だが、オリハルコンや、アダマンタイトがあるぜ」
「そ、そういうのは冒険者が自分の為に取りに行けばいいよね!」
「まあ、そうだな。何でも与えているのも違うよな」
ミスリルは使いやすいし、優秀な鉱石だ。ただ、今の私にはオリハルコンの剣の方が、使いやすい。
まだ夕方にもなっていないけど、少しは休もう。
そういえば、おやつの在庫も切れていたんだよね。
魔道具は、トールの本を書き写してもいいかな。大人はまだ字が読めるけど、子供の識字率が低い。生きるのに精一杯だったからだけど、少しは余裕が出てきたんだから、周りの大人が教えて欲しいかな。
教える時に字も書くようにすれば、少しは変わるかな?