あっという間に過ぎた半年
パラオルの町だけは毎日行くようにしている。心配なのは、栄養問題だ。
まず、野菜が全く足りていなかった事。それに長年少ない食料だけで過ごしていたので、食べられる量も少ない。
少しずつでも種類多く食べた方がいいので、畑の作物にも気をつけている。とはいえ、100人近くはいるので、量もそれなりだ。
「神様、植えられた木がもうこんなに大きくなっています」
「明日には実がなると思うよ。それと、私はミノリだから」
でも、何を植えたかな?いつも適当に選ぶからな。
畑では、米の収穫作業が行われていた。道具はどうなったか聞くと、随分遠くまで木を伐採しに行ったらしい。
木材用の木は、今から多めに植える事にした。家だってボロボロだし、何もかもが足りていない。
一応昔に鍛冶をやっていた人がいたので、鍛冶小屋も建てた。鉄鉱石も多めに渡したので、後は頑張ってとしか言えない。一応ガンボさんとかに分からない事は聞けると話した。
ある程度発展した町には、温泉を作る事にした。
マルクトにだけは空いた土地がなかったので、二カ所ある門の外に作る事にした。一応結界碑の範囲内なので、魔物の心配は無いけど少し不便だ。
それでも、ロストマルにある温泉の噂を知っている人達は、建物の準備に今から取りかかっている。
他の町も準備を進めているけど、温泉を作るのには時間がかかる。
本当に、あと二人位私が欲しい。教師用と、鉱石採取用。
増えたりはしなかったけど、並列思考が、多重思考に進化した。ドローンを幾つか増やせそうだ。なので、マルクトにある私の像からヒントを得て、困った事があったら、結界碑に話せば私に通じるようにした。マルクトは四つもあるので、不本意ながら、私の像にした。
多重思考のお陰で、七つになってしまったドローンだけど、操る事は可能だ。その状態でも、私本人は違う事も問題なく出来る。
温泉を開通させながら、我ながらチートになったものだと思う。
色々教えるのはとにかく時間がかかるので、スケジュール管理が大変だ。
なので、最近は鉱石採取以外でダンジョンに潜れていない。マグロもなくなってしまったし、A5ランク和牛も食べ尽くした。
「ミノリ、たまには休まないとダメだよ」
「んー、体は疲れていないんだよね。げ、ハチミツも切れたのか」
スケジュールをチェックするけど、ひと月先までびっしりと埋まっている。砂糖も少なくなっているし、甘い物がなくなるのは死活問題だ。
明日、夕ご飯の後にちょっとだけダンジョンに潜ろう。
夏の間に景色のいい入り江で遊びたかったけど、もう秋だ。
「ミノリ、最近無理してない?顔色悪いよ」
「そう?マイラこそ、体には気をつけて」
マイラも、この冬にはお母さんになる。私はといえば、恋する暇さえない。
ファウストの町での魔道具講座が終わったので、夕ご飯を簡単に済ませて、鉱石ダンジョン5階層に行く。花は簡単に見つけられたけど、蜂がいない。今日は出ない日なのかな?砂糖の原料の水飴は結構採れたので、今日の所は諦めようかな?
また明日、夕食後に来よう。
次の日は出たけど、ドロップ率が悪い。こういう日もあるんだ。二時間粘っても三つしか採れないとか、どんだけ?
もう、今日は諦めよう。トールの馬鹿!何で甘い物は補充してくれないの!
レベル150超えの体だからか、結構無理が利く。
「嘘、作り置きの食料も無いの?」
材料はあるけど、パンの一つも無い。ふと、トールが置いていったゴブレットが目につく。
あと半年で異世界では大人だし、そもそもこのバルスでは、子供も薄めたワインを飲んでいた。なら、別に問題は無いよね。
作るのが億劫なので、ゴブレットだけ持って魔力を流す。
「ん、やっぱり美味しい」
町で作ったワインも少し貰ったけど、これには遠く及ばない。
「ふふー、お酒の味が分かるなんて、私ももう大人かなー?」
けど、全部飲み干すのは無理そうだ。
「うー、眠い」
ミノリはそのままソファーで寝てしまった。
スマホのアラームで目を覚ましたけど、まだ眠い。
今日は…何処に行く予定だっけ?ああ…マルクトか。それなら講義の前に、フルーツの一つでも買えばいいか。
もう少しだけ…寝よう。
「わ!寝過ごした!」
起き上がるけど、体がふらつく。
「ミノリ!いいから今日は休め!もう半年は休んでないだろう!」
恒例の、孤独な誕生日以来、確かに休んでない。しかも行動時間は朝から夜までだから、うっかり過労死してしまうレベルだ。
とりあえず万能薬を飲んで、今日の予定はキャンセルする事を伝えに行った。店で沢山おまけしてもらってフルーツを買い、亜空間に戻った。
リンゴに似た果物を丸ごと食べて、そのままベッドに潜った。