魔法
パラオルの町の畑には、ちゃんと野菜が育っていた。
「神様!ありがとうございます!まさか本当に長年実らなかった野菜がたった一日で食べられるようになるとは」
「だからね?私はミノリ」
「何か希望の野菜はありますか?」
「でしたら…米を」
そっか。主食だもんね。ここの人達は、麦より米なのか。
「脱穀の道具とかはありますか?」
「何とか作ります!まさか生きているうちにまた米が食べられるようになるとは」
畑の範囲も広げて、昨日とは違う野菜も育てて、亜空間に入った。
脱穀の器具だけは他の町から借りよう。
時間がないから、作り置きのネギトロ丼を食べた。美味しい!!またマグロと戦いたいな!
マルクトの町に行ってびっくりした。かなり広いホールなのに、そこから沢山の人が溢れていたのだ。
もしかしたら全人口?と思うほどだ。
それでも約束だから、やるしかない。
「まず、魔力操作を教えます。出来た人は、まわりの出来ない人に教えてあげて下さい」
どの人が、どんな属性が得意か。髪や目の色と同じじゃない人もいる。でも、慣れたからか、見分けられるようになってきた。中には珍しい光属性の人もいて、期待が持てそうだ。
「出来なかった人も、聞いて下さい!今から属性ごとに分けるので、ここに書かれた日にちに今度は来て下さいね!」
書いて、自分もスマホにメモる。それから一人ずつ、一つ…もしくは3つ位の属性を教えた。
全員出来るようになるとは限らないとも教えた。これは他の町も一緒だ。
マイラだって、始めは火魔法だけと思ってたけど、木魔法にも適性があった。ただ発動に時間がかかるので、家を建てる手伝いに使っているらしい。
イメージが大事な魔法だけど、魔法が使えない日本人の方が速くイメージ出来るっていうのも皮肉な話しだ。
はあ…しばらくはこんな調子かな。疲れた。
町によって進捗具合が変わるけど、魔法、魔道具は全ての町に教えていくつもりだ。
まだどのダンジョンもクリアしていないし、魔の森にあったダンジョンには入ってもいないけど、美味しい物の為にも頑張ろう。
ぐったり疲れた私を気づかって、果実水を買ってくれた人がいた。
「本当に、戻ってきて頂いて、嬉しいです。毎日祈った甲斐がありました」
祈ってる相手はいないなんてとても言えないなあ。
あ、ここって教会の傍なんだ。
「ミノリ様はまだ見ていませんよね?」
促されるまま、中に入ってがく然とした。
私?なんでー!
ホトス様の像の隣に、私によく似た像があった。
「邪神の件があった時、我らはとても恐ろしい思いをしました。神が消えたかと思ったのです。それなのに、あの男は御使い様を利用しようとして再び我らから神の恩恵を奪い去るようなことを…早速加護を戻して頂いて、更には失われたと思っていた魔法まで」
「町の人達を不安にさせてごめんなさい。昔は魔法を使えたんですか?」
「はい。邪神が現れてすぐに魔法が一度消えたのです。扱えていた剣も、何故かうまく扱えなくなったりとか。その後に勇者が現れ、力を失っていた者も取り戻したりする人も居ましたが、魔法は途絶えてしまったのです」
スキルが消えたっていう事かな?ホトス様が消えた時に?…怖いな。魔物と急に思うように戦えなくなるとか。その後スキルが復活したのは、トールのお陰?
「御使いであるあなたに皆で必死に祈りました。再び力が失われないように」
それは、無駄な事をさせてしまったかな?でもその祈りが夢現ポイントなのかな?
だとしたら、有難い。お陰で空が飛べた。
これでこの世界の町は全部みたいだけど、少ないな。
まあ、こればかりは自然に任せるしかない。全員で、約1500人。ミノリが昔住んでいた町の十分の一だ。その半分以上が、ここマルクトにいる。
特にファウストの町は、たった10人しかいない。けど、無理に移住を勧めるつもりはなかった。
マルクトにだけは、錬金術の技術が残っていた。ポーションも売っていたので見せてもらった。魔力を込めなくても、薬草にこもっている魔力でそれなりに回復するようだ。
話しを聞いたら、長年魔力操作が出来なかったので、していなかったら忘れてしまったらしい。ので、教えてあげたらすぐに魔力操作できるようになった。
「ありがとうございます。町の南にも息子が店を開いているので、是非教えて頂けますか?」
「分かりました。後で行ってみますね」