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悪戯と新たな力

 相変わらず忙しく動き回って夜に戻ったある日、亜空間内にトールがいた。ソファーで寝ている。

 近寄っても起きる気配がない。…顔は無駄に整っているんだよね…えへ、悪戯しちゃえ!

 机からインクペンを持って来て、頬に猫ひげを描く。

 ナ○トを思い出してしまった。三本ひげで、髪の色も一緒だし。なら額にアレも描かなきゃね…ふふふ。我ながらよく描けた。

「うきゃっ?!」

 腕を掴まれて、強い力で引き寄せられた。…トール、寝ぼけてる?私は抱き枕じゃ無いんだけど!

 勘弁してよ…彼氏もいた経験無いんだから。顔はナ○トだけど。

 そう思ったら何だかこんな状況なのに笑えてきて、吹き出した。

「んあ…あ?ミノリ?何やっているんだ?」

「トールが寝ぼけて引っ張ったんでしょ?彼女?奥さん?と間違えないでよ」

「あー…悪い。どきどきしたか?」

「ぶっ…くく」

「おいこら、何を笑っている?」

「あはは…随分久しぶりだけど、何かあったの?」

「ふふん。やっと僕の世界が、悠久の煌めきアルティメットスターズに変更になったんだ!賭けの期間が終わったのさ!」

「…は?なにその恥ずかしい名前」

「どこが恥ずかしいんだよ!」

 むう。トールにそういう感覚は無いのか。

「えー、日本人特有の感覚かな?」

 所謂厨二的な。

 トーラスワールドの方がましに思えるのは、私だけでは無いはずだ。

「じゃあ、バルスもそこに仲間入り?」

「それはもう少しかな。ミノリの頑張りのお陰で、随分暮らしていける環境にはなっているから。あ、ちょっとスマホ貸して」

 そういえば、温泉を作った時にポイントがバグって非表示になっちゃったんだよね。

 トールは、真剣な表情で、スマホを見つめている。顔はナル○だけど。

「こんなもんか。ほら」

 返してくれたスマホを受け取り、画面を見る。

「何?この新しいポイントは」

「夢現ポイントは、魔法と似てるかな?ミノリの願いを叶えるポイントだよ」

「温泉を作ったり?」

「いや、離れ小島の町に行くのに、飛んでいけるようにしたりとか。少し補助魔法と似てるかな…魔法では出来ない不可能を可能にしてくれる」

 なる程…油性マジックも材料無しで作れそうだ。…惜しい。

「このポイントは、どうやって貯めたらいいの?」

 さすがに飛行機は作れなそうだ。何故か感覚で分かる。

 けど、見ている間にも、ポイントは増えている。

「ミノリに対する信仰心…感謝の気持ちだな」

「ふうん?…トール、色々ありがとうね」

「!な…なんだよ急に改まって。熱でも出たか?」

「むう。超失礼。言いたかったけど、会えないし、会ってもタイミング逃しちゃって」

「失礼はお前の方だろうが。凄い名前に改名できたのに、笑うとか」

 それは…トールが悪い。

「あー、はい。よかったね」

「ついでみたいな言い方すんな。とにかく今日はお祝いだ!」

 トールがテーブルを叩くと、豪華な食事が並んだ!お腹空いてたんだよね!

 トールはいつかのゴブレットを出した。

「ミノリ、注いで」

「何で私?…そりゃ、魔力は随分増えたけど」

 ぶちぶち文句を言いながらも、魔力を流した。

「まずはミノリが一口飲め」

「だから私、未成年」

「一口位で何の影響も無いよ。ほら」

 言われるままに、口に含んだ。意外に美味しい?

 たっぷりと魔力が含まれているので、心地よい。

 トールは何故か、そんな私の姿を嬉しそうに見ている。

「そのゴブレットはお前にあげるよ。ほら、こっちのにも魔力流して、乾杯しようぜ」

 はあ…やっぱり美味しい!異世界風の不思議な味付けだけど、素材もいいのかな?

 空になるとすぐ、追加を要求してくる。

「もう、自分で注いでよ」

「ミノリの酒の方が、旨い」

「そうかなー?」

 隣に手を伸ばして魔力を注ぎつつ、自分のコップからも、飲む。確かに美味しい。

 美味しいけど…うわ…なんか目がまわる…

 トールにもたれかかってすぐ、眠気が襲ってきた。

「ふうん…半分行けたか。ま、ミノリは随分頑張ったからな」

 残りを飲み干して、ミノリをベッドに運んだ。

 振り返り、大人しくしている精霊達を、アトムを見る。

「逸る気持ちは分からなくもないけど、ミノリにあまり無理をさせないで」

「はい…済みませんでした」

 今ミノリを失ったら、全てが水泡に帰す。バルスはゆっくりと崩壊への道を辿る事になるし、自分にももう、これ以上の手出しは出来ない。

 ミノリが最初で最後の希望なのだ。


 後日、トールからメールが届いた。

〈こらミノリ!悪戯描きとか、酷いじゃないか!全く、どんだけ子供なんだよ〉

 やっと気が付いたらしい。無防備過ぎるトールが悪いのさ。


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