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温泉

 シースクの町も、大分良くなってきた。念入りにエリアピュアはかけたし、海の方までかけてきた。

 毒の脅威から解放された町の人達は、積極的に畑を耕して、広げた。子供達は喜んで外を走り回っている。

 変化とは言えない変化が、あった。

 ロストマルに領主の姿が見えたので行ってみたら、頭を下げてこれからはロストマルの環境も改善するし、他の町を支配する気もないから、結界碑の力を戻して、町にも来て欲しいと言われた。


 私は、躊躇いなくリードのスキルを使った。

「嘘ですね。私の持ち込む魔物の素材も欲しいし、更には犯罪者の中に私を町に留まらせる事が出来る人を入れて、更にどんな加護を使う事が出来るか確かめるつもり?」

「!な…いえ、けしてそのような事は」

「このままじゃ、領主の座が危ういから、改心したふりをして、地位を固めたいと」

「な…何故だ!この町に何か変化があるとそなたが現れる。どこからか見ているのか?」

「神様の加護で、嘘を言われると分かるようになったんです。だから本気で改心して、一度自分の地位を捨ててみてはどうですか?町の人達の不満は、日に日に高まっているみたいだし」

 領主は、見物に来ていた人達の中から子供を見つけ、素早く人質にする。

「地位を捨てる?冗談ではない。さあ、大切なロストマルの人間を傷つけられたくなかったら、言うことを聞け!」

「呪いの事忘れてる?傷つけたら、同じダメージが行くんだよ。苦しいでしょう?その子を束縛しているからだよ」

 縮地で移動して、領主を突き飛ばす。自分にも痛みは来るけど、平気なふりをした。

「そんな脅しは私に通じない。帰りなさい!」

 まだ隙を狙っている領主を結界で包んで重力軽減の魔法をかける。そのまま町の外まで運び、放り出した。

 沢山の人にかしずかれて生活してきた今を壊したくないんだろうけど、欲をかきすぎなければいいのに、何度言っても分からないんだよね。他の町は邪神跡地の先にあるのに、どうやって支配するつもりなんだか。

 仮に他の人に領主が変わっても、しばらくは静観するしかないだろうな。

 はあ。

 ため息しか出てこない。

 新たに増えたロストマルの人に、治療を施す。理由を聞いたら、領主の館で働いていた人で、八つ当たりに物を投げつけられて、その時に領主が大切にしていた茶器を落として割ってしまったらしい。

「災難でしたね」

「いえ、あの家に仕えるのも嫌になっていた所でしたので、丁度いいです」

 …まあ、本人がいいならいいか。

「あなたはどんな立場の人だったの?」

「雑用が殆どですが、書類の整理等もやっていました」

「あなたは、二つの町を良くする為にはどうしたらいいと思う?」

「はあ…ロストマルに関しては、まともな住居を早急に建てるべきだと思いますね。衛生状態もあまりいいとは思えないので、手洗い、洗濯を徹底させるべきでしょうが、着替えもありませんからね」

「そういえば、お名前は?」

「ザラスと申します。マルクトの町で寄付を募れば、例えば古着など…あの町は裕福ですから、集まるとは思います。その前に領主が失脚すれば、私財を売ればかなりの金額を経費に出来ますね…いや、個人の持ち物までは…済みません。御使い様」

「ううん、いい意見が聞けたと思うよ」

「そうですか?」

 こういう誠実そうな人が次の領主になればいいのに。

 それか、ロストマルだけで独立させて、食べ物の対価で…これは難しいな。


 衛生状態なら、改善出来るかも。

(アクア、温泉て分かる?熱いお湯が通っているの)

「わかりましゅけど、かなり深いのでしゅ」

(この辺にもあるの?)

「丁度ミノリしゃまがいる辺りでしゅ」

 この辺なら、広場になっているし、丁度いいね。あとは問題はパイプか。錆びが怖いから、鉄では作れないし。

(アトム、錆びに強い物質は作れる?)

「なら、僕から加護を上げるよ。今のミノリになら大丈夫だし」

 !わ…特殊スキルに、量子操作が増えたよ。

 

「ごめんなさい、この辺ちょっとどいていて下さいね」

 温泉セットはなかったので、自分で作る。浴槽を掘り、表面を厚めにコーティングして、太いパイプを買い、その穴に合うように掘り下げていく。

 パイプにも量子操作を施して、足りなかったら買い足してを繰り返す。

 やっと抜けた。途端に吹き出して来る熱い湯に、パイプの先にライオンの像を付けて口からお湯が出るようにする。

 少し熱いので、水も流れるようにして、貰った木桶を置く。

「御使い様…これは!」

 鑑定して見ると、お湯自体に魔力が含まれていて、疲労回復の他に、体内の魔力量を調節してくれそうだ。

「真ん中に仕切りを作って男女分けて下さいね、それと、お湯に入る前に体を洗って、流してから入って下さい」

 排水は、斜めにして町の外まで溝を掘る。石鹸と、使い道の無かった布をタオルの代わりに切って、多めに置く。

 あとはたまにクリーンかピュアをかければ大丈夫だろう。というか私が入りたい。

 うわ!いきなり脱ぎだした人がいるよ!ここには女性もいるんですけど!

「髪も洗って下さいね!あ、泡はちゃんと落として!」

 入っている人が気持ち良さそうにしているのを見て、他の人も真似し始めた。

 うら若い乙女の前で、入らんで下さい。ん?もしかして私、女と認識されてない?


『貢献ポイントが、??ポイント付与されます』

 およ?システムがバグってるよ。想定外の出来事だったかな?


 

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