アトムと、これからの事
でも、恋人って言ったよね?
「ならアトムは、私が男でもこっ…恋人に?」
「おかしい?ミノリは、好きとか嫌いとかの前に、性別が気になる?トーラス神が女神だったら、こんなに頑張ったりしなかった?」
「そんな事はないよ」
「なら、同じ事だよ」
そっ…そうなの?私が間違ってる?
「なら、大きくなったのは?」
「あのルースとかいう奴を参考にしてみたんだ。ほら、ミノリにプレゼントだよ」
ダイヤモンドの粒がキラキラと降ってきた。ミカルが興奮して集めている。
「あれ?ミノリは嬉しくない?」
「んー、それがつまりアトムの能力って事?」
炭素。つまりはまんま原子を操れるって事だね。
「まあ、そうだけど…女の子はこういう光り物が好きだと思ったんだけど?」
「私はあんまり…食べる方が好きかな。実用的な物とか」
「そういえばそういう子だったね。なら…えい!」
うわ?!鎧がミスリルになったよ。これは考えていた事だから、素直に嬉しい。
「ありがとう。防御力が上がるのは嬉しいよ」
とりあえず、41階層に行けるようにして亜空間に入った。
「ここがトーラス神の加護の空間?随分広いね」
「無駄にね。アトムはトールの事、知っているの?」
「僕はホトス様と行動を共にする事が多かったからね。上位存在である彼にはこちらからは話しかける事はなかったけど、気さくな方だから何度か話しかけられたよ」
上位存在、ね。だから精霊達は、トールに話しかけなかったのかな?
そう言われればそうだけど、実際生まれ変わらせてもらったし、病気も治してもらった。でも、酔っ払いの姿とか、近所のお兄さん的雰囲気とか、神様っぽくないんだよね。
「ねえミノリ、シースクの町のアンデットドラゴンを倒してよ」
「う″…」
「アトム様、無理強いは良くありませんわ。せめて聖魔法のホーリーを覚えてからになさっては?」
珍しい。ミカルが敬語だ。
やっぱりあるんだ。ホーリー。
「そうだったね。他の魔法は効きにくいし。ミノリ、早く聖魔法を極めてよ」
「簡単に言わないでよ」
「まずはクリーンで清潔にする所をピュアにして、シースクの町も、もっとまめに解毒する。オッケー?」
「うん…努力はするよ」
「あとは手付かずのパラオルの町も」
「それは何処にあるの?」
「海の向こうだよ」
「…どうやって行ったらいいか見当もつかないんだけど?」
「魔の森を抜けた先から歩くのが一番距離的に近いかな?その時は僕が一時的に橋をかけてあげるよ」
「途中で亜空間に入って、次に出た時にドボンとならない?」
「そこは何とかするよ。それか、飛んだり出来ない?」
気になるスキルはあった。飛翔だ。でも人間が飛べる訳ないし。
「重力魔法に、ゼログラビティってのがある。推進力さえあれば飛べると思うんだよね」
「その魔法、覚えてないよ」
「なら、重力魔法も頑張って」
「う″…」
重力魔法は精霊もいないから、上げずらい。重力をかけて魔物を押し潰す位しか使い道ないし。
まあ、何の希望もないよりは。
次の日、シースクの町でエリアピュアと、キュアで状態異常を取り除いていたら、エクストラキュアを覚えた。
部位欠損さえ治せる凄い魔法なので、ロストマルの人達を治してあげられる。
早速行って、驚いた。怪我人が多い。もしかして腹いせにやられた?
「とりあえずみんな集めて下さい」
「申し訳ありません、御使い様。食料もかなり取られてしまいました」
「昨日の肉の事?」
「はい…御使い様のお心が離れたのは、俺達のせいだと言われて。何の事やらさっぱりなのですが」
とりあえず、集まって来たみんなにエリアキュアをかける。
それから、部位欠損のある人に、エクストラキュアをかける。かなりの魔力量が必要だな。
「あ…!足が!ありがとうございます!御使い様!」
「重傷者を、先に」
昨日やられたのだろうか?エリアキュアで治らない人が、運ばれた。
「ちょっとミノリ!せっかくマナポーションあるんだから、回復しながらやりなさいよ!」
「ん…そうだった」
収納庫から出したマナポーションを、一口飲む。
「苦っ!」
「薬なんだから、当然でしょ?」
けど、その割にはあまり回復してない気が。
とりあえず重傷者を治して、一息ついた。
そういえば、万能薬にも魔力回復の効果があるんだよね。トールの加護でも回復しているし。
うん、何とか飲める。マナポーションよりまし。
「御使い様には無理させられません、儂らはこの体と長年付き合って来たので」
「時間はかかっても、全員治しますから」
足が生えた人もすぐには歩けないみたいだ。リハビリが必要なのだろう。
「とりあえずこれ、ポーションです。魔法程ではありませんが、それなりに傷は治るので」
ポーションも作り貯めておかないと。賞味期限だってあるかもしれない。
それと、ドローンをこっちに呼び寄せた。今はこっちの方が大事だ。
「休んだら、また来ますので」
ポーションを作りながら、休もう。午後にはまた行けるかな?