海岸ダンジョンと最後の精霊
次の日。海岸ダンジョンの入り口で、結界碑の事を冒険者に聞かれた。
「領主が改心したら結界碑の力は戻します。私は、利用されそうになって怒っているんです。普通の魔物は壁が防いでくれますから大丈夫ですよ」
「やはりアイツのせいなのか。神をも恐れぬふてぇ野郎だ」
「じゃあ、私はこれからダンジョンなので」
マグロが欲しかったので、30階層に行く。けど、出てきたボスはタコだった。
タコも好きだからいいのさ。
けど、これがなかなかしぶとい。2メートル位のタコだから、足だけで1メートル以上あるし、その足を切っても再生するのだ。
これって収納庫にしまえば、タコ足取り放題?
炭攻撃や足での攻撃を躱しながら足を切り取る。
そのうち再生しなくなり、思わず舌打ちして、ダークソードで真っ二つに切ったら、さすがに死んだ。
ドロップアイテムは、何故か酢だこ。…突っ込んでも仕方ない。まあ、酢だこは好きだから嬉しいし。
それに収納庫にしまった足もちゃんと残っていた。お刺身とか、タコ焼きもいいな。
またガンボさんにタコ焼き用のプレートを作って貰おう。
31階層にいたヒルみたいな奴に顔が引きつる。
もう、虫は嫌ー!しかもぐにゃっとしてるし!ええい!全部燃えてしまえ!
あれのドロップアイテムなんてどうせ大したものじゃないから、倒しながら走り抜ける。
次の階層は蛇?と思ったら鰻だった。形は好きじゃないけど、鰻は美味しいから好き!
町の冒険者達は、どこまで進んでいるんだろう。
今度強そうな人に聞いてみようかな?
ルースが、大人っぽい女性と親し気に話してる映像が見えた。
あの時記憶から見た女性だ。
もう任務は終わったから、君だけとか、あの人は怒らないのかな?…ルースにベタ惚れしているっぽいな。
あの感じだと、いつトラブルが起きてもおかしくなかったよね?早めに気づいて、本当に良かった。
だから、ディスられまくったって、悔しくなんてない。
もうこっちはいいかな?…あれ?
町の人達に囲まれて説明を求められている。
私とルースが仲良くしていたのは、多くの町の人が知っている。
は?振られた腹いせに私が結界碑の加護を取り上げたって何!…ああ、でも良かった。先にあの人と付き合っている事も知られているから、私のせいにはならなさそう。
まあ、しばらくはあの町に行くつもりはないから、いいんだけどさ。
それにしても、思った以上に口ばっかりの奴。
こうやって監視しながらも魔物を倒せているし、スキルって本当に便利。
35階層にあるミスリル鉱石を採取しながら、そういえばミスリルの武器を使っている冒険者は見た事がないなと思い出した。なら、領主の館に飾ってあったミスリルの剣は、勇者が持ち帰った鉱石から作ったか、邪神以前の、旧文明時代の物だろう。
そういえば、山のダンジョンも途中だったな。燃焼石も採ってないし。
美味しいダンジョンだからって、ここばかりは良くないよね。ここは鉱石は少ないし。
40階層の中ボスを倒したら、もう一度山のダンジョンにも挑戦しようかな。
40階層のボスは、巨大ウニだ!自分の針を飛ばして攻撃してくる。素早い動きで押し潰そうともするし。土魔法で壁を作っても、簡単に壊してしまう。
サンダーと一緒に、雷撃を沢山当てたら、もう一つ上の段階の雷魔法を覚えた。針を避けながら、魔法をイメージする。
「っ!」
針がガードしていない二の腕を捉えた。針を抜いてハイキュアをかけた。その間にも針が襲ってくるが、途中、不自然に軌道がずれたのがあった。
サンダーと一緒に、その巨大雷撃でウニを打ったら、さすがに動かなくなった。
ドロップアイテムのウニを頂きながら、さっきの事を思い出す。
そういえば、以前も虎の魔物と対峙した時に、虎の魔物が不自然に足場を崩した事があった。
もしかしてトール?…ううん、多分違う。
これだって立派な干渉だし、何か違う感じがする。
「誰かいるの?」
空中に、虹色の髪と瞳の少年が現れた。
「へえ、意外と鋭いね。僕はアトム。原子の精霊だよ。ここにいる全ての精霊を纏める存在でもある」
アトムって、裸パンツで空を飛ぶ少年?…少年には違いないな。
「私はミノリ。助けてくれてありがとう」
「本当は何もしないつもりだったけど、君見てると危なっかしくて。それに僕達の世界を必死に良くしてくれようと頑張っているのも分かるし。だから、契約してあげるよ。よろしく、ミノリ」
「ありがとう、アトム」
『精霊の長との契約により、ポイントが10000加算されます。更に全ての精霊と契約した事により、100000ポイント加算されます』
うおっ?!一気に凄い数字来た!
「ねえ、ミノリがこのバルスの新しい神になってよ」
「へ?いきなり何を言い出すの?」
「他の精霊はともかく、この僕を従えるのは、神だけだよ」
「いや、そのうちトールがこの世界を管理してくれるよ?」
「じゃあミノリは、役割を果たしたらどうするのさ?あの勇者みたいに、自分の世界に帰っちゃうの?」
「あ、ううん。私は元の世界で死んじゃったから、帰れない」
「じゃあ、その体は?」
「トールに作ってもらった」
「…何だか妬けるな。ねえミノリ、ミノリはもう、バルスにとって欠かせない存在だよ?異界の神の道具でいる必要はない」
「道具に成り下がってるつもりはないよ。みんなの笑顔は嬉しいし、この世界で第二の人生を送らせてくれたトールには感謝しているよ。まあ、なかなかお礼も言えないんだけど」
「ならミノリは、ずっとこの世界にいるの?」
「そうなるんじゃないかな?帰れないし」
「なら、それもいいかな」
!わ…アトムの姿が、高校生位になった!
「変な男に引っかかる前に、僕がミノリの恋人になるのもアリだよね」
「へ?!」
「だって、ミノリは美味しいし」
素早く唇を奪われて、魔力を吸われた。
「ちょっと!いきなり酷い!」
「酷いって、魔力を頂く極一般的な方法だけど?」
「え…食事って事?もし私が男だったらどうするの?」
「え?性別なんて気にしないけど」
絶対おかしい!何かが間違っている!