魔道具とドローン
次の日。やっぱり今日は外に出る気分じゃない。
久しぶりに亜空間でゆっくりしよう。
亜空間の中は常に薄暗いので、この暗さにも慣れたけど、今日はライトの魔法を使う。
亜空間は、ここと隣の部屋だけじゃなく、実はものすごく広い。前にどれ位広いか確かめてみようと思ったけど、30分位歩いて挫折した。
今日は、魔道具に挑戦してみようと思う。外側は、大分前にガンボさんに頼んでたから、出来ている。あとは発動媒体を書いて魔石を取り付ければ、完成だ。
分厚い魔道具の本を持ってきて、社長テーブルに置く。社長椅子は私にとっては少し低いので、クッションを作ってある。
町で作っている綿花は、もう既に布になっていて、町の人達の服になっている。私も布をもらったけど、使えていない。不器用な私には、クッションが限界。それに実はスマホで買えたりするしね。
1年位前に比べて少しは身長も伸びているし、体型も多少は変わったけど、服の方が自動調節機能が付いているので、実感がわかない。鎧も然りだ。
まあ、かなりササヤカな変化だが。
ハンドミキサーも欲しいけど、一番は炊飯器だ。今までは鍋で炊いていたけど、結構難しい。鍋にこびりついたのが勿体ないしね。
魔鉄プレートに、銀と魔石を粉にして、手順通りに紋様を描く。
それを作ってもらった炊飯器に魔石と一緒にセットして、米をといで魔力を流す。一時間位でご飯が炊き上がる。
「んー!美味しい!」
保温は出来ないけど、収納庫に入れてしまえばいつでも炊きたてご飯が食べられる。
うん?スマホが光った気がした。
起動してみると、買い物アイコンの中に魔道具コーナーが増えていて、色々な種類の魔道具が並んでいる。残念。ハンドミキサーはない。
けど、ホットプレートみたいな物や、キッチンにあるガスコンロセットもある。
町の人達に買ってあげたいけど、さすがにオーバーテクノロジーかな。まずは魔道具の作り方を教えるべきだよね。
作ってもらっておいて何だけど、組み立てが難しい。こういう系統は、本当に苦手。
でも出来た!ハンドミキサー!
これで泡立てが楽になる。
あとは、時間が空いた時の定番、食事作りだ。
今日は外に出るつもりはないから、ゆっくりと作れる。
ワニ肉と卵の他人丼、づけにしておいたマグロの鉄火丼。ネギトロ丼。
ジャムパンや、ナッツパン等のすぐに食べられる系も作って、今日の夕食は、顔の大きさのホタテをバター醤油で焼いた。
それにしても、一々出なくても、町の様子が確認出来ればいいのに。私に言えない生の声も聞いてみたいな。ドローンとか、魔道具で作れないかな?
『補助魔法 ドローンを覚えました』
ええっ?!マジですか?
とは言え、魔法で本物のドローンが作れる訳ではなく、魔力の塊を飛ばして見たり聞いたり出来るようだ。
しかも、並列思考の能力を持っているから、ドローンを維持して様子を見ながら違う事が出来る。
マルクトの町の領主の館に飛ばしてみたら、丁度ルースが領主に怒られている所だった。
さすがに心を読まれたのは気がついていないみたいで、原因が分からずに苛々していた。スマホを盗ったのは、領主自らがそれを使おうとしたらしい。
まだ懲りずに次は誰を使おうか考えているみたいだけど、何度も同じ手に引っかかる訳ないじゃん。
昨日の喧嘩は沢山の人達に見られていたらしく、町の噂になっている。
やっぱりあの領主は町の人達の評判も悪いようだ。私を怒らせた事で、神様の加護が受けられない事を心配していた。
私は少し考えて、畑にかからない結界碑の機能を一時停止する事にした。急に安心感が消えた事で騒ぐ人もいたけど、ごめんなさい。領主が改心したら、機能は戻すので。それに作物が無い所には、鳥の魔物も寄ってこないしね。
当分マルクトの町に行くのはやめよう。ロストマルと海岸ダンジョンは行くけどね。
もう一つあったら海の向こう側の町の様子も探れるのに…けど、今の所は一つが限界だ。何か条件が揃えば、もっと飛ばせそうだけど。
昨日の今日だから、ルースとの喧嘩に関係付ける人や、そもそもルースは領主直属の部下だと知れているから、そっちを疑う人もいる。
少しやり過ぎたかな…けど、何かないと考えを変えないと思うんだよね。
しばらくドローンは、マルクトの監視用かな?