魔王降臨
4話です! どうぞ最後まで読んでください!
俺は今ベッドで横たわって寝ている女性の前にいる。さて、どうしたものか。
ここで俺が野獣である男性と認識させて、この家にもう住みたくないと思わせるためにはどうする?
いや考えはある。しかももっとも効果的だ。嫌われることは必須だが、もう二度と顔を合わせることはないんだ。やってやるぜ。
「俺をなめたこと、それがお前の敗因だ」
そして数歩後ろに下がり助走をとる。これは勢いとスピードを上げるためだ。そしてクラウチングスタートの構えをとる。俺に死角はない。作戦も完璧だ!
「くらえっ! 俺の一撃!」
俺は走り出した。みんな見てるか? 俺のこの勇気ある行動を。今すぐにこの魔王になりかけてる小悪魔を退治してやるからな。
「おぁぁぁぁ!」
もうすこしで俺は英雄に……
「……」
俺はあと一歩のところで立ち止まった。
「ってできるわけねーだろっー!」
こんなクソ童貞で女子とまともに話してこなかった俺がこんな勇気ある行動できるわけないだろ!
みんなごめんな。この行動は俺には荷が重かったようだ。だが、他の作戦なら! すこしハードルを下げた作戦なら!
「なにしてるの?」
「え……?」
なんと綾瀬 美波はいつのまにか起きていたのだ。
「なにしてたの?」
な、なんて言えば……。そうだ!
「見ればわかるだろ。襲おうとしてたんだよ、あと一歩だったんだけどなー。命拾いしたな!」
へへっ!迫真の演技だぜ!
「嘘でしょ」
「え? いやマジだって……」
「だって私全部見てたもん」
……ん?
「私最初から寝てないよ? ずーと起きてた」
「え、え? 寝てたじゃん」
「あれはわざと寝てたように見せてたの。ほんとに襲える勇気があるかどうか確かめるために」
「は、はぁー!?」
嘘だろ? じゃあ俺は罠にまんまとはめられたのか?
「あはは、やっぱり私の予想通り襲う勇気なんてないじゃん」
く……くそ! なんて策士なんだこいつ! こいつは小悪魔じゃねぇ、もう魔王だった。
「あーあ、面白い。もうこんな時間か〜、じゃあ夕飯にしよっ! 台所借りるね!」
「お、おう……」
ペースを握られてる……。こいつに勝てるビジョンが浮かばない。
そうだ! 出された飯に対してイチャモンつけてダメージを与えてやる! どーせ俺が今まで食べてきたカップラーメンの美味しさには到底及ばないだろ。
「はい、どーぞ!」
今日の夕食の献立
とんこつラーメン
「え……なにこれ? カップラーメン?」
「いや、普通にとんこつラーメンだよ?」
「カップラーメン?」
「だからとんこつラーメン」
え、ラーメンを作った……? まさかそんな。
「いただきます」
「はい、どーぞ」
ズルズルッ
ん!? こ、このラーメンの麺のモチモチ感、そしてものの数分で作り出したこのスープのコク、そして麺とスープを絡めてたどり着くこの美味しさのハーモニー!
「う……うまい」
「どういたしまして」
あ、思わず口に出してしまった! こいつ……料理もできんのかよ。……だがこのラーメン止まらないっ。
そして俺はこの魔王の前でズルズルとラーメンをすすりつづけた。なんの恥ずかしげもなく。
この誘惑には勝てねぇ。
またもや魔王の前でなすすべがなかった。
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