男の儀式
「うん!雅人君の手作りご飯美味しい!」
「そ、そうですか…」
確かにみっちりレクチャーされて作ったけど、8割はこいつの功績なんだよな…。
何度ダメ出しをされたことか。
俺が作ったって言っていいのかと疑問になる。
いやー1人暮らしの自炊恐るべし。
「どう?私のハンバーグは?」
「美味しいです…」
実際本当に美味しかった。
まるでお店のハンバーグみたいで、家庭のハンバーグとは一味違った。
少しふんわりとしたハンバーグで、フォークで上から当てれば肉汁が溢れ出した。
こいつ、昨日のラーメンの時も思ったけど料理もプロ並かよ。
ハイスペックすぎんだろ!!
「ふふ、ありがとう!」
くっ…、こいつに欠点はないのか?
そう思いながら久しぶりのハンバーグに手が止まらなかった。
「「ごちそうさまでした」」
あっさり完食してしまった…。
「ささ雅人君はソファでゆっくりしてて!」
「お、おう」
俺は言われるがままにソファに誘導された。
まるで家政婦だな。
そしてあいつはキッチンへ行き、皿洗いを始めた。
何しようか…。
まだ飯食ったばかりだから風呂は入れないとして、それ以外にすることはあるか?
テレビでも見るか?
いつもはすぐ自分の部屋にこもってゲームしてたけど。
なんか皿洗いしてもらっているのにすぐ自分の部屋に籠るのは違う気がする。
そうだ!
手伝えばいいじゃないか!
あいつのためにいっぱい手伝えばすれば、好感度が上がってゲームをやる時間を延ばしてもらえるかもしれない!
要はご機嫌どりだ。
それは得意だぜ…!
「あ、俺手伝うよ」
「え?いいよそこで、ゆっくりしてて?」
ぐぬぬ…。
引いてはダメだ。
ここで踏ん張ってこそイイ男というものだ!
多分…
「いや料理を作ってもらったのに皿洗いまで任すなんてことはできない!お願いだ手伝わせてくれ!」
「…」
どうだ?
決まったか?
さすがに頭を下げてまでお願いをしているんだ。
これは断れないだろ。
「わかった!雅人君がそこまで言うならお言葉に甘えさせてもらおうかな!」
「あ、ありがとう!!」
「うん!じゃあお願い!」
そして俺は皿洗いを任された。
ん?皿洗い?
否これは皿洗いではなく
ただの肩揉みであった。
え?何で俺肩揉みしてんの?
「うーん、雅人君上手いねぇ」
「え?あ、ありがとうございます」
「いえいえ、苦しゅうないよー」
苦しゅうないよーー
じゃねぇ!!!
なんで俺は皿洗いしないで
こいつの召使いみたいなことをやらされているんだ!
いやでも好感度上がるならそれでもいいのでは?
むしろこんな美少女の肩を揉めるなんてご褒美では?
うん、確かに。
まったくデメリットがないじゃないか。
俺は肩を揉むという特権を使って、こいつの後ろ姿をまじまじと眺めた。
女子高生の後ろ姿がこんな近くまで…。
俺は肩を揉みながら何度も上から下を見下ろした。
特にお尻の方を重点的に見た。
「雅人君?なんかすごい視線を感じるんだけど…」
「き、気のせいじゃないかな?」
や、やばい。バレたら気まずいなんてもんじゃない!
こんなの痴漢と何ら変わりないじゃないか!
「主にお尻の方の視線が凄い嫌らしさを感じるねぇ」
「え!? 見てない見てない!ずっと首の方見てるから!」
「首も首でおかしいとも思うけど…」
「あ、あはは!確かにそうだね!真上見てるね!」
危ない危ないバレるところだった。
「そんなに見たいなら見る?」
「え?」
何を言ってるんだ?
見たいなら見る…だと?
見せてくれるなら見たいけども!
「気になるんでしょ?スカートの中が」
ご、ごくり。
はい!めっちゃ気になります!
こんな至近距離で見ていて気にならないほうがおかしいです!
けど罠という可能性もあるため一応否定をしておかなければ…。
「べ、別に興味ねーよ」
「ふーーん、じゃあチラ」
「…」
うっ、うっそーーーん!!
今スカートの中少し見えたぞ!
さりげなくチラ見させやがった!
こんなの防ぎようがないだろう!
俺は今見ないように努めていた。
けどあいつがスカートをチラ見せした瞬間、強制的に下の方へ目線が移ってしまった!
な、何という引力…。
ごちそうさまでした。
まぁ重要なところは見えてなくて、太ももしか見えてないわけだけど、
またそれもいいのだ…。
ギリギリ見えないという点が、非常に唆るのだ。
「へ・ん・た・いさん?」
「へ?あ…」
俺もしかして今ガン見してた?
「いやこれは違くてだな!お前がスカートをめくるもんだから、」
「めくるんもんだから?」
「めくるもんだから…」
「見てしまいました…」
俺は起きた状況をそのまま説明したのだった。
「素直でよろしい。ま、今のは誘った私が悪いけどね」
「感謝します…」
あぁ、私を許してくれるのですか…。
なんて慈悲深き。
まぁきっかけは間違いなくお前だけどな。
でもどうするか。さっきのシーンが目から離れない。
あの男の儀式をするか?
いやてか今気づいたけど、こいつがいると儀式できなくね?
やばい、爆発する….。
くっ…!どうするべきだ!
俺はこんな爆弾を抱えたままこの空間にいなきゃいけないのか…!
「よし皿洗い終わり!雅人君?
そこで突っ立ってどうしたの?」
「え、な、何でもないよ!ほんとに
何でも!!」
「んーーなに?なんか怪しいぞー?」
そしてこいつはトコトコと近づいてきた。
どんどん近づいてくる。
やばいやばい、ただでさえ爆発しそうな爆弾を抱えていてるのにこいつはさらに油を注ごうってのか!?
「いやいや!とりあえずこっちに来るな!」
止めようとしたが
綾瀬美波が止まることはなかった。
そしてもう俺との距離はゼロに近かった。
こいつは俺の顔をのぞいている。
少し体をかがませて上目遣いで見てきた。
「今何考えているのかな〜?ちょっと私に教えてみてよ」
「な、なにも…」
見えている。
いやもしかして意図的に見しているのか?
そのお山さんを…。
き、貴様はわざとそのお山さんの谷を見しているのかー!?
あぁ、どんどん頭がバカになってきている気がする…。
まだ儀式を行っていないのに賢者へとなろうとしている…。
この場合賢者になることはレベルアップなのだろうか?
いやゲームならレベルアップだろうけど、現実なら間違いなくレベル1になってしまうだろう。
我慢しなければレベルアップはない!!
そう、人生とは常にハードモードなのだ。
「…」
「ねぇ雅人君ってばー」
「お…」
「お?」
「お風呂行ってくるー!!」
「ええ!?ちょっとまだ早いんじゃ…」
俺はすぐに着替え場へ入った。
着替えるのに2秒。
そしてシャワーで体を洗うのに10秒。
そしてザブーーーン。
俺のオアシスまでの時間は12秒と、
記録を大幅に更新することができた。
「は、はや…」
はぁはぁ、あと一歩遅ければ爆発してた…。
よく耐えたぞ俺よ!
もうあとは風呂で何もかも忘れてゆっくりしよう。
心なしか爆弾が解除された気がした。
「あれ、そういえばここってさっきあいつが入っていたような….」
俺の悪夢は終わらなかった。