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これが本当のハーレムだぁ!

 群れの子供達と遊んでいても、いつの間にやら俺達だけで遊んでいる様になっていた。

 他の子ゴリラでは俺達に付いてこれなくなっていたし、俺達は前世の記憶を持っている。

 いつしか俺達は三人だけの秘密基地を木の上に作り、三人で仮想敵ドラゴン相手の迎撃戦を研究したりして時間を潰していた。

 極まれではあったが、天高くを悠々と飛ぶ、でっかいトカゲの姿を目撃していたからな。

 なるほど、ファンタジーの世界というわけだ。

 

 ファンタジーの定番といえばドラゴン退治だろう。

 とはいえ、ゴリラがドラゴンを狩る必要はないよな?

 ていうか、ドラゴンが危険な生物かも知らねーし。

 知性を持ってるのも定番じゃん?

 苦労して倒したら、そのドラゴンは善玉だったとか、アイツならやりかねないだろ?

 ま、仮想敵がいないと遊びも捗らないから、敵はドラゴンを想定するがな。

 

 それに、ドラゴンが襲ってきた事は無いが、ヒョウの様な大型の猫科動物は俺達の天敵らしく、しょっちゅうではないが群れの個体が襲われる事があった。

 ドラゴン以外の魔獣は見たことは無い。

 そういや、魔獣って何だ?

 ……本当にいるのか?

 

 剣は、ゴリラだけに未だに見たことはない。

 魔法も見た事はない。

 ……あれ?

 剣と魔法って単語に惹かれて異世界行きを了承したけど、剣も魔法も知らねーぞ?

 ドラゴンらしき生物は見たが……

 ドラゴンが空を飛ぶのに使っているのが魔法なら、見たことにはなるのか?

 普通は自力だろうが、どうなってんだろうな? 

 

 そういえば、ゴリさん達が魔法を使っているのを見た事がないな。

 俺達を襲う肉食獣も、魔法らきしものは使っていないようだ。

 肉体を強化する魔法とか言われたら傍目にはわからないが、ゴリさん達を見ていると、どうやらそういう物もなさそうだ。

 何せ子供の俺達三人の方が体力があるのだから。

 まさか、加護が魔法なわけはないよな?

  

 ……

 おいぃぃぃぃ!!

 詐欺じゃねーのかよぉぉぉぉ!!

 剣も魔法もありゃしねーじゃねーかよぉぉぉぉ!! 


 ふー、落ち着け。

 まだ慌てる様な時間じゃない。

 今はまだ気にする事はねぇ。

 剣も魔法も、人間の世界なら見れるのかもしれねぇ。

 俺達がゴリラだから知らないだけかも知れねぇよな?

 この森を出たら人間の文明社会が広がってて、ビックリする様な魔法が飛び交う世界が待っているのかもしれねぇ!


 ……気を取り直して襲撃者についてだが、ヒョウとかジャガーだ。

 違いは模様らしいが、どっちがどっちかはわからん!


 そういった天敵に対しては、ゴリさん達も吼えて威嚇したり、落ちている木の枝を振り回したり、そこらの石を投げたりといったことで対応していた。

 ただ、ゴリさん達はその巨体と高い潜在力にも関わらず、非常に心優しく繊細な生き物なんだよな。


 ゴリラと言えば、両手で己の胸をドコドコと叩いて威嚇するドラミングっていう行動が有名だが、あれって結構痛ーんだぜ?

 ゴリラの俺が言うんだから間違いない。

 俺がこんなに痛い思いをしてんだから、お前はこれ以上俺に痛い思いをさせてくれるな、もう十分だろっていうことなんだぜ?

 

 どうだ?

 その優しさに泣けるだろ?

 しかも、その後威嚇した事自体に落ち込んで、何も喉を通らなくなるんだぜ? 

 思い悩んで下痢にもなるしな。

 その繊細さに切なくなるよな。


 そんな彼らだ。

 捕食者が突然現れたらパニックを起こす。

 木の枝や石も形だけの威嚇っつーか、恐慌下での行動だ。

 当たれば撃退もできたりするが、まず当たらねぇ。

 真正面からぶつかれば、ゴリラの膂力に勝てるネコ科の肉食獣はそうそういないんじゃねーのか?

 振り上げた両手を本気で振り下ろせば、相手の背骨を粉砕出来る気がする。

 それくらい単体の潜在力は高いが、パニックに陥ってるのに潜在力もクソもねぇ。

 勿論、組織だっての抵抗なんてこともできねぇ。

 仕方ねーよな、繊細なのがゴリラだもんよ。 


 俺達は遊んでいても周囲に警戒をしていたし、他の動物達の警戒音も気にしていた。

 森には俺達だけが住んでいるわけではない。

 肉食獣の獲物である小さなサル達もいる。

 しかしながら俺達は森では上位種なので、他の動物は俺達の縄張り内ではあっても割合外周部に住むことになる。

 心優しきゴリさん達が彼らを襲うことも追い出すこともないが、彼らが恐れるんだよな。

 だって体がでけーんだもんよ。

 従って、捕食者が近づいてきた時には彼らが先に気づく。

 彼ら独自の警戒音を出して、彼らの仲間に捕食者の接近を伝える。


 俺達はその音を警戒網の一端に組み込んでいた。

 警戒音が響き始めればその方向を見定め、俺達の警戒態勢を整える。

 捕食者が来るようなら、群れのゴリさん達へ危険の接近を伝えることになる。

 そして、危険な位置にいるゴリさんがいれば、助けに行く。

 ゴリラは一頭のボスゴリラに数頭のメスがいる、いわゆるハーレムを形成し、あぶれた成人のオス達は、その周りに付かず離れずでいる。

 従って、大抵はそのオス達を助けに行く事になる訳だ。

 そうなると必然的に、俺達が捕食者の矢面に立つことになる。


 初めて肉食獣の目の前に立った時には小便をちびったが、ゴリラだからばれてないだろうし、テルとフータは大きい方も垂れていたから大丈夫だろう。

 動物園のサル達は興奮したらウンチを投げてきたりもするが、あれと同じだ。

 そんな感じで始まった異世界での初戦闘だったが、正直なりふり構っていられなかったし、そもそも戦いでもなかった。

 三人で大小便を垂れ流しながら、ただただ己の両腕を振り回すだけだった。

 気づいた時には俺達は、血の海に沈んだ原型を留めていない肉塊に、両の拳を延々と振り下ろしていた。


 加護は怪我を防ぐだけじゃねーな。

 両の拳には痛みすらねぇ。

 肉体の強化ってやつか。

 捕食者とはいえ、俺達より若干大きいだけの生き物を、拳一つで文字通りミンチにしてしまった俺達。

 敵をミンチに出来る力を得てしまった衝撃と、生き物を肉塊に変えてしまった感触のおぞましさに、俺達は言葉を出す事も忘れて、その場に立ち尽くすことしかできなかった。


 次の日から俺達は武器を取り、戦い方の研究を始めた。

 手頃な木を歯を使って加工し、こん棒を作った。

 石を集めて投石の練習を始めた。


 言っておくが、効率的に殺す為の研究じゃねーぜ?

 敵を追い払う為の力が欲しかったからだ。

 仲間を守る為の力が欲しかったんだ。

 俺達を襲う肉食獣は戦闘狂じゃねぇ。

 捕食が無理だと思ったらすぐに諦める。

 俺達は奴らの意欲を削ぐだけでいいんだ。

 殺せば二度と襲われることも無くなる?

 確かにそうだが、なら相手を絶滅させるまで殺すのか?

 俺達は、俺達が安心して暮らせるだけで十分だ。

 

 それに奴らも馬鹿じゃない。

 襲い難い群れは敬遠する。

 他の群れを襲う分までは知ったことじゃねーし、やつらも生きてる。

 肉食獣は肉しか食えないからな。

 

 それに、増えすぎたヤギが島を丸裸にして自滅するという話を前世で聞いた。

 そこに肉食獣が入ると増えすぎたヤギを捕食して、結果として生態系が安定するらしい。

 草食獣だけでは環境を保てないという訳だ。

 肉食獣も立派な生態系の一員だという事だ。

 ただし、俺達の群れを襲うのは不許可だがな。

 そんな感じで戦い方を研究し、捕食者を適当に追い払っているうちに、俺達はこの一帯の群れのリーダーとなっていた。

 

 って、おかしくね?

 俺達ってまだ子供だよな?

 遊び盛りの年頃だよな?

 そりゃ、三人揃えば、大人のゴリさんにも真似出来ない事が可能だが、まだ子供だぜ?

 ゴリラってハーレムを作る生き物だけど、リーダーって事はつまり、そのハーレムの頂点のオスってことだぜ?

 メスを独占するって事だぜ?

 しかも、リーダーなのは一つの群れだけじゃねぇ。

 結構な数のメスゴリさん達が、俺達を中心に生活する様になっている。


 モテ自慢かよ?って、そうじゃねーし!

 子供だから発情なんてしてねーし!

 そもそもゴリラに欲情しねーし!

 俺達は前世人間だし!

 なんか発情しているらしいメスゴリさんも、怪訝そうな表情をしてるし!

 何となく色っぽい表情で俺達を見てるけど、それはきっと気のせいだし!


 俺達は悪くねーし!

 調子に乗ってボスゴリさんの前でやらかして、戦う事なくボスゴリさんが群れを去っていったのは、ちょっとした子供の悪戯の不幸な結果だし!

 不可抗力だし!

 ゴリラのハーレムなんて、俺達には無理だし!


 って、ちょっと待て!

 ハーレムを付けてくれるってアイツは言ってたが、これがそれか?!

 ハーレムって、文字通りのハーレムか?!

 ゴリラのメスがハーレム要員なのか?!

 

 おいぃぃぃぃ!

 何なんだよぉぉぉぉ!

 ハーレムって、そうじゃねーだろぉぉぉぉ!!

 確かにハーレムだけど!

 これが本来のハーレムだけどよぉぉぉぉ!!


 俺達の想像するハーレムって、キャッキャウフフするもんだろぉぉぉぉ!!

 発情しているらしいメスゴリさんにお尻を向けられて迫られても、子供の俺達にどうしろってんだよぉぉぉぉ!!

 マジでふざけんなよぉぉぉぉ!!


 ……

 ふー。

 落ち着け。

 俺の怒りは兎も角、マジでこれは、マジに深刻な問題だぜ?

 ゴリラの繁殖上、由々しき問題だよな?

 このままじゃ、ゴリラの数が減っちまうぜ?

 ゴリラは繁殖力の弱い種だから、このままだと人間に住処を奪われる前にゴリラが消えちまうぜ?

 知らぬ間にハーレムの頂点に立ってしまった俺達だが、どうしろってんだ?

 どうしようもないだろ?

 

 もうね、発情したメスゴリさんは、群れの端っこにいるゴリさん達に任せるしかねーよな。

 知らねーよ、正直……

 人間の女すら知らねーのに、初めてがメスのゴリラって、いくら何でも難易度高過ぎだろ……


 色々納得がいかないが、心優しいゴリさん達を守れるのは確かであるし、俺達に従ってくれるのはやり易い。

 出来る範囲で出来る事をやるとしよう。

 発情しているメスゴリさんは、この際無視だ。

 ハーレムの周辺でたむろしている独身オスゴリラの諸君、ゴリラ繁栄の為頑張ってくれ給え!

 黙って群れを去っていった元ボスゴリさん、アナタだけが希望です!

 そもそも子供のゴリラの一日の基本は遊ぶ事だよな?




 そしてこの頃になると、アイツの呪いに気づいていた。

 呪いといっても命に関わるとかそんなんじゃない。

 俺達の見た目がハゲチビデブだということだけだ。

 テルの頭は何か薄いし、フータはでかいし、俺は二人に比べて随分と小さい。


 HAHAHA!


 三人が三人だとわかる様にしておくって、こういうことかよ。

 これが俺達のアイデンティティーだって?

 あーもう、笑わせてくれるぜ。

 全く持って傑作だ。

 まあ、ゴリラにハゲチビデブもないんだがよ。

 気にしているのは俺達自身さ。

 わかっているさ、そんなこと。


 全員で笑いものにしたクラスのやつらとは違い、ゴリさん達はそんな事は気にしない。

 若干俺達に距離を置いているのはあれだ、俺達の体力とかが異常だからだ。

 何となく悲しみを湛えた表情で俺達を見つめているのはあれだ、子供に群れのリーダーを任せてしまっている事に対する引け目があるからだ。

 断じて俺達の容姿を哀れんでいるわけではない! 


 ……くそ!

 あのボケ!!

 絶対に吠え面かかせてやる!!!

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