プロローグ
大変長い連載になる予定です。初めての投稿なのでマイペースに進めます。
書きたいことを勢いで書いていますので、ある程度分量がたまったら大幅に推敲します。
俺には十三歳以前の記憶がない。
いや、それは少し語弊があるか。
そもそも俺の中には何故か自分以外の誰かの記憶があった。おかげで自分自身のその頃の記憶が非常に希薄になっているのだ。
さらにその誰かの記憶も変に断片的で、俺自身の記憶をさらに混乱させていたから、親の顔を思い出すことすらままならなかった。
そんな混沌とした状態から精神を守るため、何をどうしたのかは覚えていないが、どうやら俺は全ての記憶を封じ込めてしまったらしかった。
だから俺には十三歳以前の記憶がない。
魂の片隅にその記録が残っていることを、頭のどこかで知ってはいるけれど。
諦めと言うよりは保身と言っていい、その記憶を自分から探ることがないまま、それから幾ばくかの月日が過ぎ。
眠る記憶の上に新たな記憶が作られ、薄らいでいた自我が再形成され、俺は何の問題もなく生活していた。僅かながら自分が非常態な人間だという引け目はあるが、それが何か支障をきたすわけでもない。
どうせ俺の中に宿っている記憶なんか、誰も知らない。
俺が死ぬとき、こっそりと一緒にあの世に持って行けばいい。
そう自分で納得していたのに。
二十歳になったある日。
俺の中にある誰かの記憶が、唐突に運命を手繰り始めた。