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冷たい魚と熱かった水

作者: 冠梨惟人

優しい男。思春期を越えた辺りからついた印象を表す言葉。


恋した女性は優しい男だと誤解し、好意を抱く。


好意は出会いを求められ、重なる出会いは触れ合いを要求して、密になる触れ合いの回数が恋を誤解させる。


相手の眼差しが熱く、強くなる頃には行動に抵抗を示さなくなり、何をしても愛という言葉が赦すようになる。


優しさの幻を見た女は自分の見たい姿を見て、それが幻だと気づいた時には傷つき涙しても、終わらせたくないと泣きつく。


ひと時の熱病は貪ることに飽きることで治るのに秘密にしか出来ない情愛を重ね、背徳に溺れ、愛していると嘘をつくことに罪を感じなくなった女に恋の終わりを見る。


その姿を、愚かな行為を愛らしいと思う時、自分が冷たい男だと知る。


何度も知ってきたから優しい男だという女には本当の姿を見せる。


自分の愚かさに気づかせたいから、冷たい男の虜になるのは熱い水を泳ぐようなものだと、最後まで気づかずにこんな男を愛したまま逝くようにはしたくない。


最愛の女が最後に残した言葉。

「自由になっていいよ」

優しさが、自由を奪った。


彼女はもう、いない。本当の気持ちを口にすれば、君に会わなければ彼女を最愛のまま送れたのかもしれない。


彼女は気づいていたのかも。最悪の男だと自分でも思う、こんな男に君は恋をしている、傷付けたくない、壊したくない、なのにまた会いたくなり、無理やり抱いてしまう。拒んでくれたら諦めもつくのに。


何度抱いたら飽きるのか。君に溺れていく、君の身体に、心に溺れ、癒されている。


いけない、感じながら君に安らぎを感じ、離れることが出来ない。


だから、指輪をして会いに行った。

彼女はいない、でも事実を知る者はいない。指輪が白日に晒させるのは冷たい嘘。


なのに、何をしているのか。君をまた無理矢理に抱いてしまう。唇を奪い、身体を重ねる。果てにあるはずのない夢を見て。


熱い風が、吹き荒れる。いつか、赦しを乞い真実を知らせたいと思うかもしれない。


犯した罪は赦されるだろうか、今はまだ、恋は熱い水の中を彷徨うしかない。


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