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第1章 第1話 雅也と風魔

 ―近づいている―

 ―お前はまだ自分自身をよく知ってない―

 ―時は戻らない―

 ―そしておまえはもう戻れない―

 

 

 僕の頭にふと声が流れてきた。

「何だ。今のは?」

 机に頭を伏せて寝ていた雅也(まさや)は黒板に目をやった。

 教壇では数学の教師が数式を教えていた。

 楽しくないな・・・

 雅也は窓のほうを向いた。

 相変わらずの雲ひとつ無い空。蝉の鳴き声。小鳥のさえずり。良い日だ。

 「はぁ早く帰りたいな。もうすぐ夏休みかぁ〜」

 

 ―今、時が変わる―

 ―今から迎えに行くぞ―

 ―目の力を持ちし者アビリティ・オブ・アイ

 

「おい雅也、誰が寝取る。起きてこの問題を10分以内で解け!!!」

 雅也は嫌々ながら立ち上がり黒板に向かった。

 女子がこそこそと話している。

 3分後、黒板には答えの数式が並んでいた。

「うっもう席に戻って良いぞ」

 雅也は何事も無かったように、席に戻った。

 そして、また惰眠した。

「雅也君って頭良いよね」

「うん、顔も良いし、運動神経も良いしね」

「オールマイティって雅也君のためにあるようなものよね」

 女子が雅也のことをひそひそと話していた。

 雅也は女子から人気があるようだ。

 雅也は恋とかには興味は無いらしいが・・・

 

 ―さぁもう着くぞ―

 

 ザーザーという音ともに雨が降り出した。

 教室の中に雨が入り込んできている。

 1の2の生徒は急いで窓を閉め始めた。

 雅也は雨の事は気付いていないみたいだった。

 隣の席の女子が雅也の近くの窓を閉めてやった。

 雷も鳴り始めだした。

 変な感触だった。

 ビチョビチョに制服が濡れていたからだ。

 だがそれだけではなかったみたいだ。

 これは水じゃない。何だ。この俺の体にまとわりつく変な水は。

 

 誰かが指でパチンと鳴らした。

 その時雅也にまとわり付いていた水が消えていった。

 教室の扉から一人の男が入ってきた。

「見つけた。アビリティ・オブ・アイ」

 男はニヤッと笑った。

 教室がざわめく。

 だが雅也はまだ起きない。

 教師が「だれだ君は。ここは私立の中でも1位、2位を争うほどの学力の字曜高校だとしって入ってきたのか」

 男は何も言わず教師の前に立った。

 そして、にやと笑った。

「俺か。俺はな。おしえるわけがないだろ」

 いきなり教師の体を1本の刀が貫いた。

 教師はゆっくり倒れこんだ。

 少し沈黙が入った。

「キャーー」

 女子は驚いて、騒ぎ始めた。

 

 雅也は女子の騒ぎ声で目が覚めかけた。

 雅也が完全に目を覚ましたとき、教室は屍の山と血の赤が目を通じて頭の中に記録された。

「どうなってるんだ。これは」

 雅也は目の前の現実に気分が悪くなった。

「教えてやろうか」

 笑い声とともに雅也の後ろから声が聞こえる。

 雅也はさっと後ろを振り向く。

 だが誰もいない。

「こっちだよ」

 また笑い声とともに後ろから声が聞こえた。

 雅也はまたすぐに振り向いたがやはり誰もいない。

「誰なんだ。姿を見せろ」

「くくく、良いだろう」

 雅也の前に、腰に刀をさした20代くらいのおっさんが姿を現した。

「殺したのはお前か」

 男はニヤッと笑った。

「あぁそうだ」

 男はゆっくり歩き出した。

「君が何故殺されないかわかるかい」

 男が問いかけた。

「しらない」

 雅也は男の目を見て言った。

「教えてあげよう。知らずに死ぬのは嫌だろうからな」

 男は今までに無いくらいにやっと笑った。

「君のその目。それは、アビリティ・オブ・アイというものなんだ」

「アビリティ・オブ・アイ?」

 男は刀を抜いた。

 そして、雅也の目の下に刀を近づけた。

「その目は、とても値打ちのある特別な目なんだ」

「特別な目?」

 男が続きを話そうとしたとき

「それくらいにしたらどうだ」

 

 どこからか声が聞こえてきた。

 

「正義のヒーローは遅れて登場するもんだぜ」

 雅也の横にグラサンをかけた兄ちゃんみたいな人がいた。

「わぁ、いつ来たんだ」

「えっ、今普通に風に乗って」

(何言ってんだこのグラサン)

「グラサンじゃない。風魔(ふうま)だ」

(今この人心を読んだ)

「あぁ心を読んださ。これがアビリティ・オブ・アイだ」

 

「おいそこの2人俺を忘れていないか」

 男の額には血管が浮かび上がっていた。

「俺無視嫌いなんだよね。特に年下とかには。だから死んでよね」

 男は刀を雅也から離し、風魔にむかって刀を構えた。

「はぁこんな弱いやつは相手にしたくないんだが」

 雅也は瞬きをすると、隣にいた風魔は消えていた。

 また雅也が瞬きをすると隣に風魔が手袋を外していた。

 男は自分が持っていた刀を腹を貫通し、死んでいた。

「まったく弱いやつほど、よく吠えるもんだ」

 風魔は男の右手の中指にさしていた指輪を抜き取った。

 雅也は男の死体をよく見ていると、全身の力が抜け、そのまま気を失って倒れこんだ。

「まったく大変だぜ。まだまだ先は長いって言うのに・・・」


 風魔は雅也を抱え込んで、風の音と共に消えていった。

 

 


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