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神様はじめました。

作者: 咲良井 劉

流行語に『神ってる』ってあって思わず書いてしまった小説です。

読み手を選ぶかも知れません。


「ほら、 。そろそろ仕事してくださいよ。」

声をかけられれば、男は山のように積まれた紙を横目に寝転がる。

「あー…後で。」

「その言葉はもう何十回、何百回と聞きましたよ。」

「じゃあ、後1時間したら…」

「それも聞き飽きました!もうすぐ新年ですよ。また仕事が溜まる前に今の仕事をしてください」

目の前に積まれた書類が何度も叩かれる。

その書類にはたくさんの願いが書かれていた。

その書類を一瞥すれば、その男はやっとこさ身体を起こす。

しかし、書類には眼もくれずに

「ねぇ、ジロちゃんさぁ~」

「ジロちゃんじゃありません。私は次官です。」

「はいはい、ジロちゃん。今下界で流行ってる言葉知ってる?」

「下界で、ですか?さぁ、存じ上げませんが。」

「ジロちゃん、知らないの?遅れてるなぁ~。今下界で『神ってる』って言葉が流行ってるんだよね。」

「『神ってる』ですか?」

「そう。神懸かるって言葉の略らしくて。普通ではありえない状態を示す言葉で、特に普段は想像もできない大活躍をした人や凄まじい成果を残した人に使い、とても素晴らしいということを示す言葉なんだけど。」

「またあなたは仕事をサボって下界を見ていたのですか?…はぁ、それで?」


「それ聞いてさぁ、思ったわけ。下界にそんなやついるなら神様いらなくね?って」

「は?」

「ついでに、ソイツに神様の仕事おしつ…代行してもらえばいいんじゃね?って。」

これは言い案だと言いたげな顔をする男に、ジロちゃんと呼ばれた方は顔をしかめた。


「 。あなたって神は…」

「だってさ、馬鹿らしくね?新年に1度だけ顔見せに来たかと思ったら『〇〇〇を叶えてください』だの『〇〇〇〇できますように』だの。願いを言ってその後はいっこうに来ないじゃねぇか。」

そう言って積まれた書類をぱらぱらと捲れば、全て投げ棄てる。

その紙を広い集めるジロちゃん(仮)。その姿を横目にまた口を開く男。


「かと思えば、俺たち神様を戦争の理由に使って人殺しをするんだぜ?ほら、何百年か前に焼き討ちに入ったろ、誰だっけ…ほら…」

「織田信長、ですか?」

「そうそう、ソイツだ。それだって、他の神様を信仰するのに邪魔だって、焼き討ちに入ったろ?あそこののとこの神様もよくもまぁ我慢できたよな。俺だったら…な?」

「あのお方は心が広い方ですから。祟る様なことはされませんよ。まぁ、その男も志半ばで潰えましたが。」

「ま、そうだな。

で、挙げ句の果てには、『神ってる』とか…俺たち要らなくね?ほら、人間様に神様代行させりゃあいーじゃねぇの。」

「………」

「他の神様にも話はしたんだよ。皆楽しそうに聞いてくれたぜ?中には賛同してくれる神様も多くてな。伊邪那岐イザナギ様や伊邪那美イザナミ様にも話はつけてるんだよな~」

「それは、職務放棄ですか?」

「いいや?どうせなら神様を必要としてくれる世界に行きたいだろ?そんなセカイに行くだけだ。

もちろん、ちゃんと代行は用意する。

『神ってる』奴を。」

「あなたって神は…」

あきれ果てたように男を見るジロちゃん(仮)。


「だいたい、もうお前も気付いてるんだろ?俺の名前が呼べないこと。俺たち神様は忘れられたり信仰が薄れたりすれば消えるんだ。そして、俺はその一神だ。」

「 。」

「なら、最期くらい良いじゃないか。下界の奴らを祟ってやりたいところを、『神ってる』奴で我慢してやる。なんて善良な神様だろうか、俺は。」

「 。」

「さて、『神ってる』奴を…」

神がそう言えば、一人の人間が表れた。男は今までの気だるげな雰囲気をまるでなかったように態度を変え、人間に笑いかけた。


「おめでとうおめでとう。『神ってる』人間よ。君は神様代行に選ばれた。今日からここで神として生きていくように。」

そう言って男は消えた。残されたのは困惑したようすの『神ってる』人間。






そんな様子を水鏡で視る姿があった。あるものは面白そうに、あるものは見下したように、その様子を眺めていた。そうして、人間を見ながら

『神ってる』(ただのヒト)に神様が務まるのかどうか、見物だな。」

そう口々に神様は嗤った。




続きません。


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