表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/40

傀儡王 終幕C-2


〔わからない〕


「……」


このままでは埒があかない。彼に名を尋ねてみようかしら?


◆名前を問う?

〔問う〕

→〔問わない〕


彼自身でも制御できないのに、聞いてどうなるというの。


「お前はどちらが蜘蛛だというんだ?」


ゲルンガァは単なる興味本位で問いかけてきている。それでも私が大王だと思う相手はどちらなのかは決まっていた。


〔ゼルスタール〕


「グリスは化け物らしく豪胆……であればゼルスタール様こそ大王様だと私は思うのです」


優しいあの方を疑うことなどありえない。私は冷静に思いの丈を告げる。


「ほう……同意見だ」


私を除き咎める者は残っていなかったので、ゲルンガァはグリス討伐の大義名分を得たと標的の元へ向かう。


■■


「吸血蜘蛛グリス、貴様に喰われた者達……いや、我が一族の仇」


日の差さぬ玉座の間に白銀の刃が煌めく。(ソード)が振りかざされ、彼は脆き(ワンド)で応戦する。


「ゲルンガァ……!」

「どうした……お得意の糸は使わないのか」


暗がりで互いの表情の機微は伺えないながら、男は怒りに任せて杖をゲルンガァの胸部へ叩きつけた。


「ぐぅ……!」


鍛錬を積んでいる彼は、常人であれば立つこともままならぬ衝撃に耐える。

再起不能の攻撃を与えた気で、油断しきっていた男の腹部に刃が突き刺さった。


「ぐああああああ!」


男が悶え苦しみながら倒れ込んだため、、見かねたアネッタは彼に駆け寄った。


「陛下!」


ゼルスタールか、グリスなのかと気を揉んでいると姿は赤い髪でなく、薄い茶の髪へ変化していった。


「う……」

「あれはグリスを葬ることのできる唯一の宝剣だ」


そう回復したゲルンガァがアネッタに告げたことで、彼がグリスではなくなったと判断できた。


「余は生きているのか……」

「え……?」


彼の雰囲気は想定していた相手のものではないので、アネッタは目を見開く。


「もしかして、グリスが生き残って……」

「……何を、余こそゼルスタールだ」


どう考えても本物の化け物よりそれらしかった。

アネッタとゲルンガァは口に出さないものの、事実を受け入れがたい。

そして食事を振舞ってくれた優しい彼が、もう存在しないことを、アネッタは一人悲しむのだった。



【大王の生還】


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ