シノープス 終幕B 変人
〔貴方が変人だから〕
「あ、貴方が変な人だからよ……」
顔は整っているが、緑髪で等身大ピエロ人形を操る人なんて絶対に暗くてヤバイ趣味を持っているに違いない。
「お客様ならともかく、同業者には言われたくありませんね~」
彼はムッとした様子で抱え方を変える。いわゆるお姫様抱っこであり更に羞恥を煽られた。
「ご、ごめんなさい。変な人認定は取り消すわ、だから降ろして!」
「ふふ……書類は消せても一度口にしたら消えませんよ」
たしかにその通りだが―――
有無を言わさず店についた。彼はコートを椅子にかける。
「シノープスさんは良い生地の服を着ているわね」
――彼は人形使いだが、案外儲けているようだ。
あのピエロでお金が取れるとも思えないので、別の仕事をしてそちらで稼いでいるのかも。
「どうかしました?」
〔なぜ人形使いに?〕
「どうして人形使いになったの?」
「元々人形に携わる家系で、作り手か操者のどちらにするかを決めた結果です」
シノープスはピエロドールが最初で最後に造ったもので、向いていなかったから辞めたのだという。
〔もったいない〕
「私は貴方の造った人形が好きよ。別に人形を造った人が操ってもいいんじゃないかしら?」
知識しかないが人形を造る人は自分の手で一から形をとり窯で焼いてドールを造る作業をする。
縫いぐるみを作るのとは違うだろうけど、私もいつか造ってみたいと思った。
「……機会があれば、小さな店でも開きましょうか」
「なら私が一番に買いにいくわ」
――まあこの時は冗談だろうと思っていた。
■
あれから師匠がいなくなったのは王様に人形劇を披露しにいったからだと判明して解決した。
「出掛けるのかい?」
「ええ、知り合いがお店を開くから一番に買う約束をしたの」
――地図によると、この辺りだ。
「シノープスさん?」
「ああ、来てくれたんですか」
シノープスさんはあのとき話していた店を開いた。
「約束したもの」
まさか本当に店を開くとは思わなかった。
【グッド 有言実行】




