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その五


雨はまだ降り続いている。


結局、私は泊まらせてもらうことにした。酒も入っていたので朝までぐっすりと眠っていた。

目が覚めた時には九時を回っており、まだ眠たいと訴える身体をどうにか動かしてベッドから起き上がり、廊下に出た。


すると、龍太が私の二つ右の部屋で立ち往生しているのが視界に入った。


「どうしたんですか?」

「ああ、君か……実は桜が起きてこないんだ。竜平もなんだがあいつはいつものことだからいいとして、桜は薬もあるし……」


最後の方は少し言いにくそうにしていた。龍太はドアをノックして桜の名前を呼ぶがやはり反応はない。


「仕方ない。新一郎くんからマスターキーを借りてこよう。君、済まないがお願い出来るかな?」

「分かりました」


私は階段を降りると応接室に向かう。新一郎は煙草を吸いながら外の様子を眺めていたが、私の姿に気付くとふっと笑った。


「おはよう寝坊助くん。朝食なら用意してあるぞ」


私はマスターキーのことを新一郎に伝えた。


「確かに桜姉さんが起きてこないのは珍しいな……分かった。今すぐ持ってこよう」


マスターキーを手にした新一郎と共に、私は龍太のところへと戻る。マスターキーを差し込み回すとドアが開く音がした。


「桜……っ!?」


中に入った龍太の息を飲む音。

どうしたのかと私と新一郎も中に入る。


「ひっ!!」


桜はベッドに横たわっていた。それだけなら寝ていると思ったかも知れない。

ーー胸を貫く、ナイフの柄がなければ。桜はナイフの柄を両手で掴んでいた。……死んでいるのは、誰の目にも明らかだった。


「桜!さくらぁあああ!!」


龍太は桜の身体を抱きしめ、そのまま嗚咽を漏らし始めた。

その光景を何も言えずに見ていた私に、新一郎が言う。


「まさか……竜平も……」

「!」


部屋を飛び出した新一郎に続く。右隣の部屋の鍵を開けてドアを開くとーー。


竜平の死体が、そこにはあった。

ドアのすぐ側で仰向けに倒れ、真っ赤な血がカーペットを濡らしていた。桜と同じように胸をナイフで刺されていた。




二人の死を聞いて、全員が応接室に集まった。皆青ざめた表情をしている。


「……ねえ、誰が二人を殺したのかしら」


そう切り出したのは、椿だった。


「だって二人の部屋には鍵がかかってたんでしょ?つまり密室ってことじゃない」

「いや……密室ではありませんよ」


そう言ったのは龍太だった。家族を一気に二人も亡くしたのだ。その表情は悲しみに満ちていた。


「……マスターキーを持っている者なら、自由に部屋に入り、密室に見せかけることも出来る」

「マスターキー……」


全員が一斉に新一郎の顔を見た。


「で、でも、二人を殺す動機が新一郎叔父様には……」

「動機なんて二人が邪魔だったからとかそういう理由よ!そうだわ!新一郎が二人を殺したのよ!」


椿がヒステリックに叫ぶ。

新一郎はまるで他人事のように煙草を吸っていた。


「あ、あの、警察が調べれば分かることだと思います。初さん。警察に連絡は入れたんですよね?」

「はい。それが……この雨で土砂崩れが起きて、来るのは明日になるそうで……」

「なんですって!?じゃあこの殺人鬼と明日までいないといけないの!」


椿は完全に二人を殺したのは新一郎だと思っているらしい。

……本当に、新一郎が二人を殺したのだろうか?

新一郎は何も語ろうとしない。




全員で話し合い、新一郎には自室に入ってもらい、ドアの前に家具を置いて出られないようにした。


私は、竜平と桜の部屋を調べることにした。私には新一郎が二人を殺したとは思えなかったのだ。


……いや、綺麗事はよそう。

私は探偵の真似事がしたかったのだ。

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