その四
雨はまだ降り続いている。
図々しい私は結局夕飯までご馳走になり、今はこうして酒を飲みながら談笑している。
「……?」
ふと、私は壁にかかっている一枚の絵画に目を奪われた。
女性が椅子に座って微笑んでいる。その女性の顔はーー。
「……桜さん?」
ペンダントこそないが、それはまさに桜その人であった。
「いや、それは俺達の母親の若い頃だよ。姉さんに瓜二つだろ?」
新一郎が私の言葉を否定する。しかし親子とはいえ、あまりにも似すぎている。
そんな私の心情を察したのか、新一郎は更に言葉を続ける。
「双子かと見間違える程、桜姉さんは母に似ていた。……だから、あんなことが起こってしまったんだろうな」
一体何がーー、そう問おうとした私の声を、別の声が遮った。
「や、やめて下さい!」
声の方を見れば、竜平が撫子の細い手首を掴み、もう一方の手で自分の方へと引き寄せていた。
「そう嫌がんなって。仲良くしようぜ撫子ちゃん?」
撫子が嫌がってるのにも関わらず、竜平は止めるどころか撫子に顔を近付けて舌を出している。
「おい、竜平!」
龍太が竜平に注意をしようと声をかけたその時だった。
部屋中に響き渡る絶叫。
声の主は桜だった。先程までニコニコと笑っていたのに、今は大声を上げ、自分の頭を壁に打ち付けている。
「さっ、桜!止めなさい!」
「姉さん!」
龍太と新一郎が二人がかりで桜を止める。
ああ、やはり桜は心を病んでいたのかと私はぼんやりとその光景を見ながら思った。
「ちっ、キチガイ女が……」
撫子から手を離した竜平がボソッと呟いた。
その後桜は龍太によって部屋に連れていかれ、そのままお開きとなった。
雨はまだ降り続いている。
そして、悲劇はこの後に起こった。




