第七話 保護観察官
翌日。
取調室に呼ばれた。何かあったのだろうか?保護観察官が決まったなら、早すぎる気がするのだが・・・
「実はな。魔法が使えることを公表して保護観察官を募集したら、宮廷主席魔術師のモルガスウッド様が立候補してきてな。高位の方が最初に手を挙げたものだから、恐らく他の者たちは遠慮して名乗り出ないだろう。なので、面談してもらおうとさっそく来てもらった。彼が気に入らないと言えば、すぐに次の保護観察官を探さないといけないからな。」
「展開が早いですね・・・」
「うむ。私も忙しいお人なので、一ヶ月は先になるかと思ったのだが、今朝。私の家に直接訪ねて来られてな。一緒にここに来た状態だ。では、私は退室しているので、二人でゆっくりと話しあってくれ。ああ、もちろん。お前のほうでお断りしたければ、それでもいいぞ。さすがに宮廷主席魔術師様と一緒に暮らすというのは平民には無理だろう。まあ、モルガスウッド様が気に入られたら、拒否権はないのだがな。」
「ないんだ・・・」
マーカス団長が取調室を出ると、入れ替わりに入って来たのはエルフの男性だった。金髪碧眼の肩まで伸ばした髪がさらさらだ。日本にいた時に映画で見たことがある感じだ。肌も白いなぁ。美形過ぎて女性にも見えなくもない。
「よっこらしょ。すまんな。最近腰が痛くてな。早速だが座らせてもらうよ。」
あれ?
「わしの名はアルフェナンス・モルガスウッドという。宮廷魔術師をしておってな。まあ、一番の古株なだけなのじゃがなぁ。同期の連中は人族か、亜人族じゃったからみんな死んでしもうたんじゃよ。ふぉっふぉっふぉっ。」
何?この人。見た目は美形青年なのに中身おじいちゃんなの?一瞬アフレコか、別の人がしゃべっているかと思ったわ!
「あの・・・。見た目と物凄い違和感がある喋り方をなさるようですが、おいくつなんです?」
「ん?わしか?わしゃ今年300・・・いくつじゃったかの?300歳過ぎてから数えるのが面倒になって覚えとらんわい。ふぉっふぉっふぉっ。」
「えっと。じゃあ、ステータス確認してもよろしいですか?年齢だけに制限しますので。」
「ほう。そんなことができるのか?面白い。やってみろ。」
「それでは失礼して・・・神の御名において。彼の者の年齢のみを見せたまえ!エイジオープン!」
よし。上手くいったな。えっと、398歳と・・・398歳?え?誤情報じゃないよね?エルフってこんなに長命だっけ?前の世界のエルフと比べて倍以上あるのか?
「あの・・・398歳と表示されたのですが、間違いないでしょうか?」
「ほう。もうそんな歳になったのか。わしもそろそろお迎えが近い歳になっておったのじゃのぅ・・・通りで最近足腰にガタが来るわけじゃなぁ・・・」
あっているんだ・・・って、お迎え近いの?それ保護観察官としてどうなの?なるはやで独立しろという事かな?
「えっと。魔法で治りますかね?」
「ん?老化じゃからのぅ。試したことはないが・・・そうじゃのぅ。細胞を活性化させて・・・いや。新しく作り出される状況にならないと意味がないかのぅ・・・」
「一応、やってみますね?たぶん失敗しても、効果が無いだけでしょうし。」
「ほう。試してくれるのか。新しい魔法を発動する時は、魔力がかなり必要なのじゃが。大丈夫なのか?」
特殊スキルの魔力無限があるから問題ないだろうなぁ・・・
「たぶんイケますね。それじゃあ。えーっと。こうかな?神の御名において。彼の者の老化の原因を取り除き、若き英気を与えたまえ!アンチエイジング!」
適当にそれっぽい事を唱えてみた。特殊スキルの魔法創造にお任せ状態である。
「おお!体が軽くなったぞ!腰の痛みも消えおった!やるなお主!よし!気に入った!わしが保護観察官になってやろう!なあにどうせわしは城の自室に住んでいるようなものじゃから、城下にある自宅は好きに使っても良いぞ。監視役には適当に世話役の奴隷でも買ってやればいいじゃろ。好みのタイプがあれば団長に言っておけ。奴隷の購入はやつに任せるでのぅ。」
そういうと、体が軽くなったのに気を良くしたのか、心なしスキップ気味に退室していった。若返りの魔法はやり過ぎだったかな?
「スキル【肉体改造Lv1】を取得しました。」
「え?誰?何この声?スキルを取得?え?どういうこと?スキルオープン!」
精神系スキル 未収得
肉体系スキル 未収得
技術系スキル 未収得
魔法系スキル 肉体改造Lv1
特殊スキル 魔力無限・不死(天命は除く)・状態変化無効・物理攻撃無効・魔法攻撃無効・精神不動・魔法創造
魔法系スキルなんだ。って、ということは今の声ってシステム音声?もしかして、スキル取得ごとにしゃべってくるの?この世界の常識なのか、私だけの仕様なのか。それが問題だ。
「おう。なんか、モルガスウッド様がごきげんだったぞ。なんかしたのか?保護観察官はOKだそうだ。しかも、監視役は奴隷で良いとか、めちゃくちゃ自由になるなおい。まあ、生活費は自前だから、奴隷分も稼がないといかんけどな。頑張れ。」
「えっと。ちょっと若が・・・腰が痛いとのことでしたので、回復魔法をかけてあげました。生活費二人分稼ぐのは決定ですか・・・早く仕事探さないとなぁ・・・」
「まあ、城下の日雇いギルドに登録して仕事を紹介してもらえば、お前くらいの魔法が使えるなら、すぐに稼げるだろう。ギルド証は身分証明代わりにもなるからな。ああ、これは仮の身分証明な。これを持って行けば、ギルドに登録できるから。」
渡されたのは名刺のようなもので、青剣騎士団預かり、保護観察官:アルフェナンス・モルガスウッドと私の名前と年齢と種族と性別が書かれているだけのものだった。本来ならここにスキルも書かれているらしい。まあ、さっき取得したばかりだからなぁ。システム音声に関してはギルドで聞くかな。にしても日雇いギルドって・・・冒険者ギルドじゃないのか・・・やけにリアリティーあるな・・・
冒険者ギルドはファンタジーの定番だけど、現実的に考えると日雇い労働者がしっくりくると思いましてん。