第五話 取り調べ 一回目
「名前と出身に間違いはないか?」
目の前にいるダンディーな髭の中年は青剣騎士団の団長でマーカス・マクスウェルさんだそうな。年齢は言わなかったが、40代くらいじゃないかと思う。黒髪ポニーテールなのだが、武士っぽくてなんか似あっている。なんで、こんな上の人間が取り調べをしていらっしゃるんですかね?
「はい。間違いありません。」
「それで、あの場所にいた経緯は?」
「それが・・・ですね。名前とか、出身とか、魔法が使えることとかはわかるんですけど、それ以外の記憶が無くなっていまして・・・」
「ん?どういうことだ?記憶喪失とでもいうのか?」
「はい・・・おそらく・・・」
私が取り調べ官なら、すごく怪しむよねぇ・・・
「ふむ。まあ、ステータスを見る限り、ただの平民のようだが。出身の詳細も無い上に、職業の記載がこれだから、身元の照会は難しいな。一応、行方不明者リストで名前を探してみたのだが。お前の名前は無かった。さて、どうしたものだろう・・・」
「どうしたものでしょうね・・・」
うーん。嘘の職業を言ったところで、確認先が無いので意味は無いし・・・
「そうだな。念のため、手配書リストや前科者リストもチェックさせてみるか。あと、過去20年分の死亡者リストもチェックしておいたほうが良いかもな。ひょっとしたら、死んだことにされているかも知れないからな。」
なんだか時間がかかりそうな話をしていらっしゃる・・・
「ひと通りチェックしても引っかからない場合は・・・そうだな。誰かに保護観察官になってもらって様子見しながら生活してもらうしかないかもな。」
「かもかもばかりだな。鴨肉が食べたくなってきたよ。」
「美味しいんですか?」
「ああ。行きつけの酒場で出しているんだが、かなり酒に合う。まあ、ここを出られたら場所を教えてやるよ。」
シャバに出た時の楽しみってやつですかね?いつになったら出られるんだか・・・
「今回はこの辺だな。記憶がない以上聞けることもないからな。しばらく投獄生活となるが、あの牢は政治犯や貴族などが入れられる牢だから、他と比べたら高級宿みたいなもんだ。それと、思い出すきっかけになるかも知れないから、いくつか本を貸し出せるようにしておこう。担当の牢番にでも適当に頼んでくれ。ああ、残念だが官能小説は置いてないぞ?」
そう笑いながら取調室から出て行く団長。どう反応を返せば良いのか、わからない冗談を去り際に言いやがった・・・
◇
牢に戻されるとさっそくステータス確認をし直してみることにする。
「神の御名において。我が能力を見せたまえ!ステータスオープン!」
名前 ユーロ
年齢 20歳
性別 男
種族 人族
出身 ソヴェンテ帝国
職業 捕虜
結婚歴 なし
犯罪歴 なし
うん。ここまでは最初に確認したのと全く一緒だな。えっと、このあとのスキルのところか。
精神系スキル 未収得
肉体系スキル 未収得
技術系スキル 未収得
魔法系スキル 未収得
特殊スキル 魔力無限・不死(天命は除く)・状態変化無効・物理攻撃無効・魔法攻撃無効・精神不動・魔法創造
えっと・・・色々おかしいぞ?なんで特殊スキルがこんなについているの?もしもし天使さんや。なんかやり過ぎじゃないですかね?意識飛びそうになったわ!!普通のスキルが一切ないというのもツッコミどころだが、不死って!まじで?寿命以外では死なない感じなの?しかも、状態変化無効で病死の可能性が消えているし、物理攻撃無効と魔法攻撃無効って私無敵なの?ラスボスなの?いやいや。ラスボスでもさすがに物理と魔法の攻撃無効とか無いわぁぁぁぁぁ!!倒せないじゃない!どう考えてもチート過ぎるでしょ!!魔力無限で魔法創造って、破壊神そのものじゃないですか!!イベントキャラで勇者全滅する感じですよね?それで、伝説の装備とか、宝玉とか揃えてようやく物理と魔法が通るパターンですよね?
なんか疲れたわ。ステータス確認だけで疲れるなんて初めてだわ。えっと、精神不動の説明は出るかな?
【精神不動】
精神魔法はもちろん。あらゆる事態にも動じない強い精神を付与する。※神レベルの特殊スキルです。というか、女神様以外、持っているのを見たことがありませんね!
やったね!女神様とお揃い!じゃねーわ!!この注釈。天使だよな?どういうことだよ!女神様限定の特殊スキルをなんで私が持っているの!?え?破壊神決定?そういうことなの?
まさか、ステータス確認で絶望感を得られるとは思っていなかったわ。でも、精神不動スキルのおかげで動じてないし・・・
なんだか、別の意味で先行きが不安だわ・・・
チート過ぎると戦闘の必要性が無くなるんですね。主人公が戦うとイジメでしかないという・・・