第三十話 幸運か、災いか
ナタリアの新装備はボディーラインがくっきりとしたボディコンにスリムジーンズみたいなものになっていた。ちょっと頑張り過ぎじゃないかな?目のやりどころに困るのだが・・・
ファッションショーをしようとする三人を止めて、次の街に向かうことにする。この街には特に何もないようだし。と言うか、本当に平和だな。事件らしい事件が全く起きないというのも考えものだよなぁ・・・。あれ?なんかここに来る前に天使から何か言われた気もするな・・・えっと、何だったかな?
『世界をぶっ壊しても良いから好きに暴れろ!』
ああ、もしかして、私の存在がこの世界のイベントなのかな?転生した時も変なおっさんに破壊神様と言われたし・・・まあ、いっか。好きに暴れろというのは逆に暴れないでも問題ないってことだよな。今のところ、エレルに対する不満もこの世界に対する不満もないことだし。将来は皇帝として帝国を運営する体験も待っているし。とりあえず今はアメリア大陸を見て回って、アメリア教国に危険性があるか確認してから帝国に帰るかなぁ。そう言えば。アトルティア大陸にいるかも知れない魔王も忘れずにチェックしないとな。
とりあえず大陸の南西にあるアメリア教国の首都。教都に向かい事にする。転移魔法で一気に行ってもいいのだが、モンスターが出ないので馬車で景色を眺めながら行くことにした。一面荒野だけど、図書館で得た情報によると雄大な自然や奇岩とかがあるそうなので楽しめそうだ。
「すごいわ!あなた!あなた!あれあれ!」
エレルが興奮して指差した先にはアメリカンバッファローみたいな動物の群れが馬車と並んで走っている。角が額に一本角で毛は無いのだが。頭はデカいな。鑑定してみるとどうやら一角牛という名前だそうな。牛と言うと肉うまいのかな・・・どうしよう。一頭狩っとくかな?エレルが純粋に感動している横で、食べることを考えてしまう私。
「あの動物。美味しそうですね・・・」
ナタリアは私と同じ気持ちだった。マーシャはセバスチャンに御者の指導を受けているので御者台にいる。たしか馬術がLv5になったらしい。さて、一頭狩るかな・・・と思っていると、なんか声が聞こえてきた。
「あ~れ~~~!助けてたもぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ん?なんか言葉使いがおかしくないか?
「そこのぉぉぉぉぉぉ馬車ぁぁぁぁぁ!!助けてたもぉぉぉぉぉ!!」
どこだ?どこにいるんだ?探索魔法で調べてみると、どうやら馬車を追いかけるように走る集団がいる。馬車の窓を開けて後ろを確認してみると、フリフリのドレスを着た女性が盗賊らしき集団に追われている。だが、何かがおかしい・・・
「ご主人様。あのかた、何やら得体の知れない力を感じます」
急にセバスチャンが横に現れて忠告をする。珍しいな、セバスチャンですら良く分からない存在なのか?鑑定してみるか・・
ちょっと距離があるので遠視魔法を使いつつ、後ろの集団のステータスを確認する。
「なんだ?この大陸にはモンスターはいないはずなんだけどな・・・」
盗賊らしき集団はゾンビのようだ。というか、ゾンビってあんなにダッシュできたっけ?目がくぼんでいるけど、肌艶はいいのでなんか普通のゾンビと違う気がするな。少なくとも帝国領内で見たゾンビはもっと顔色が悪いか、腐っていたのだが・・・
「おいおい。どういうことだよ・・・」
そのゾンビに追われている女性を見てみると。
名前 アメリア
年齢 ?歳
種族 神族
出身 ???
スキル なし
特殊スキル 天地創造 生命創造 不可侵 不老不死
見てはいけないステータスが表示されたな。神族で名前がアメリアって、この大陸のアメリア教の女神様じゃね?となると、あれって・・・
まあ、何はしたいのかは良くわからないが、ゾンビには火魔法で良かったよな。
「グランドナパーム!」
詠唱短縮って便利だよなぁ。適当に呪文名を決めておけばそれを叫ぶだけで効果があるのだから。ちなみにグランドナパームは地を這うような超高温の炎を出す魔法だ。ゾンビたちがジュッという音とともに消滅する。高温過ぎて蒸発しちゃったみたいね。
馬車を止めて、女神様が到着するのを待つ。さて、いったい何の茶番なのだろう?
「助けてくれてありがとう。お礼に私を嫁にしても良いぞ」
「あ、間に合っています」
「なん・・・だと・・・?」
「いや。そんなに驚愕しなくても、女神様なら一目で既婚者ってわかったでしょ?それで、一体何をしていたんです?あのゾンビ。自分で用意して追いかけさせていたんですよね?」
「チッ。ばれていたのか。ようやく引っかかったと思ったら、お前転生者か」
なんか言葉使いが変わったな。ガラが悪くなったよ・・・
「ええ。あなたですか?私をこの世界に転生させた女神様は?」
「ああ。そうだな。たぶん私の指示だな。というか、お主。この世界に来て一年ちょいなのだろう?なんでもう既婚者になっているんじゃ!なんだ、スケコマシなのか?手が早いのか?このドスケベ野郎!私も一発やらせろ!」
なんか、最後におかしなことをぶち込んできたな・・・これって、相手したら負けなパターンかな?まあ、神様相手にして逃げられるわけがないので、しょうがないけど話を聞くか。
「スケコマシなのかはわかりませんけど、割と早い段階で転生者って他の転生者にばれまして。特殊スキルが多いからとなぜか皇帝陛下に紹介されて、婚約してとあれよあれよと話が進みまして、妻の特殊スキルの相思相愛で抵抗することも出来ずに結婚しましたよ」
ちなみにエレルやセバスチャンは馬車に控えさせて、ちょっと距離を取っている。まあ、セバスチャンには聴こえているかも知れないが、セバスチャンに隠し事なんてできるわけがないので、全部知っているだろうなぁ。
「ああ、あのスキルか・・・。一回だけしか発動しないうえに自動だからな。おおかた、父親が決めた相手にロックオンして発動したのだろう。チッ。私も付けておくんだったな。いや、今からでも遅くは無いか。ということで、この際。側室で我慢しても良いぞ!さあ、レッツ子作り!」
「えっと、女神様?何がしたいんです?」
「何がしたいんです!」
なんか話がかみ合わない。ん?つまり、なんだ・・・飢えているのかな?
「イエス!私は愛に飢えた狼なのだ!!だいたい、何でみな私の姿を見たら、助けないで全力で逃げるんじゃ!こっちに来て100年間、引っかかったのはお前だけってどういうことなのじゃ!!」
「いや。鑑定持ってなくても、普通は逃げますよ?この大陸にはいないはずのモンスターに追われているうえになんか余裕で走っているフリフリドレスの女性って、どう見ても罠でしょ」
「なん・・・だと・・・」
二度目のショックを受けていらっしゃる。女神様なのに出会いの演出の仕方を間違えているってどういうことなのだろう?確か、神様という旦那さんが居たんじゃないっけ?
「そいつなら、500年前に浮気しやがったから石にして飾ってある。何がケモミミさいこーじゃ!!思い出しただけで腹が立つ!!」
なんか、この世界を作った時に獣人の女の子に手を出してしまった神様をサクッと石にして、ムカついたから男を作ろうと100年前にこの大陸に降りて、さっきの間違った出会い演出で男に逃げられまくっていたらしい。100年前は純愛を求めていたが、今は男なら誰でも良いレベルにまでなっているそうな。しまったなぁ。あの時、逃げる選択肢が正解だったか・・・
「お主なら、きっと私を助けてくれると信じておった。まあ、茶番だが。さて、お前の嫁に挨拶するか。なんせ正妻様じゃからな。第二夫人として夜の生活の日程を交渉しないといけないからな」
「えっと、拒否権は・・・」
「はっはっはっ。茶番を止めたのが運の尽きじゃ。諦めろ」
なんだかわからないが、変な女神様が無理やり嫁いできました・・・誰か助けてください・・・
その日の気分で物語が進んでいたりします。つまり、作者も先が読めてません・・・どうしよう・・・




