第二十四話 奴隷商館
奴隷商館に向かう途中。セバスチャンが姿を現した。呼んでいないので何かあったのだろう。
「ご主人様。襲撃者が居たのでいつも通り処分しておこうと思ったのですが、どうやらいつもの盗賊やスリとは違う様子だったので捕まえてみたところ、どうも暗殺者のようです。いかがいたしましょう?」
「暗殺者?誰に頼まれたのかわかる?」
「少々お待ちください」
それにしても、セバスチャンはどこから現れて、どこへ消えているのだろう?
「お待たせしました。どうやら、ソヴェンテ帝国の皇位継承権を持っているものの依頼のようです。さすがにプロですので、はっきりとは申しませんが、ソヴェンテ帝国の名を出したら、わずかですが反応がありました」
「あ~。やっぱりきたかぁ。エレル、こういう場合どうすればいいかな?」
皇位継承権を巡る政争というのか、こういう争いは未経験なのでどうすればいいのかよく分からない。単純に依頼者を暗殺し返しても意味がないだろうし。
「お父様に報告して処分してもらいましょう」
にっこりとほほ笑みながら、凄いことを言うなぁ。やっぱり、皇族ともなるとこういうことに慣れているのだろうか?
「わかりました。少々お待ちください。陛下直属の部隊に引き渡しと、陛下へのご報告をしてまいります。このままこの場でお待ちいただくのも退屈でしょう。さきに奴隷商館へ向かってもらってかまいません。護衛は影を配置しておきましたので・・・」
そう言い残すとセバスチャンの姿が消える。影ってなんだろう・・・
深く考えても答えは出ないと思うので、帰ってきたら聞いてみるか。さて、奴隷商館へ向かおう。ちなみにナタリアはセバスチャンに色々教育されたのか、さきほどのやりとりを聞いても特に反応は無いようだ。
奴隷商館に着くとやたら豪華な部屋へ通された。
「いらっしゃいませ。今日はどのような商品をお望みでしょうか?」
目でエレルに任せると伝える。
「それでは、一番高いものから10人。すべて女でお願いしますわ」
「わかりました。少々お待ちください」
迷わずに高いのからと言ったよ。さすがは皇族。高いのが良いものという考え方か。一般庶民の私の感覚では考えられないな・・・
「かわいい子いるかしら?楽しみね。あなた」
「君よりかわいい子はいないと思うよ?」
「まあ、あなたったら」
うん。選択肢を間違えなかったようだ。エレルはくねくねと照れながらも、当然だという顔をしている。ナタリアはそれをみてどう思っているのだろうか。バカップルめ!と呪ってないよね?
「おまたせしました。こちらの娘たちがこの国一番の奴隷たちでございます」
部屋に連れて来られたのは、人族ばかりだった。褐色の肌をしていて、髪は黒い。地球でのアラブ系と言えばいいのか、インド系と言えばいいのか、あの辺に居そうな美人ばかりだ。もちろん、皆何も身に着けていない。
「右から順に値段が高いものとなっております。こちらが、ステータス表でございます」
どうやら、ここにいる10人の奴隷全員、元王族や貴族の娘たちのようだ。砂漠の国はジプート王国だけじゃなかっただろうか?どこの国のだろう?ああ、ジプート王国の東側に小さい国がいくつかあったのか。3年前から今年にかけてジプート王国に攻め滅ぼされたようだ。この国って好戦的な国だったのね。
一番右の女性が元王族で、残りは元貴族の娘だった。スキルは踊りや化粧術など戦いに直接役に立たないものばかりである。侍女として雇うには教育が必要なようだ。
「侍女としては役に立たなさそうですわねぇ。せいぜいあなたのおもちゃとしてかわいがるしか使い道がないですわねぇ・・・わたくしが妊娠したとき用にひとり買っておきます?」
おもちゃって・・・皇族って奴隷をおもちゃとして扱ったりするのが当たり前なのだろうか?さすがに引くな・・・
「普通に侍女として役に立つ子でいいんじゃない?君が妊娠している間はちゃんと我慢するよ」
「あら、我慢は良くないですわよ?」
「いや。でもねぇ~」
「もしかして、好みじゃなかったかしら?」
「まあ、そういうことかな~」
「そうねぇ。それじゃあ、今度はあなたが指定してあげてくださる?どうも、わたくしの考え方だとあなたの好みの子は見つからないようだし」
「そんなことないよ?ただ、侍女として使える子の方が安心じゃない?」
「侍女の仕事と言っても、ほとんどセバスチャンがしてくれるから、わたくしの話し相手ぐらいですわよ?」
「そうなの?」
ナタリアに確認してみる。
「はい。正直、私の出る幕がなくて困っています」
「それは仕方がありませんね。私は執事ですので」
もうセバスチャンが帰って来たようだ。いつの間にかナタリアの横に控えている。ちょっと、奴隷商人がビビってるよ。まあ、この部屋は魔法封じの印が設置されているはずだからねぇ。
「すみません。侍女兼護衛に仕えそうなスキルを持っている奴隷はいますか?」
「は、はい。少々お待ちください」
奴隷商人が首をひねりながら退出していく。あ、外で誰か叱っているようだ。魔法封じの印が壊れていると思ったのかな?続いて、奴隷たちが部屋から出される。正直、元王侯貴族の娘は扱い辛そうだ。わがままに育てられただろうから、本当に夜伽にしか使えなさそうである。まあ、美人ばかりではあったが、私は妻だけで十分満足している。今のところ。
「ご主人様。先ほどの暗殺者のほうの引き渡しが終わりました。恐らく帝国に戻った頃にはすべて済んでいると思います」
「ご苦労様。ところでさ、セバスチャンって普段どこにいるの?」
「普段は亜空間で控えております」
「亜空間?」
「スキルで作り出したこの空間とは別の空間ですね。家具も揃えておりますので、私の休憩室も兼任しております」
スキルで作り出したって、セバスチャンのスキルっていったいどこまで出来るのだろう・・・
「お待たせしました。こちらが、我が国一番の侍女兼護衛に向いたスキルを持った者たちでございます」
そう言って奴隷商人が連れてきたのは3人の娘たちだった。やはり戦闘も出来る侍女は少ないのか。ナタリアもレアなんだろうなぁ。
「一番右端から順におスキルの数が充実しております」
値段も右端から高いのね。さて、スキル表を確認してみるか。ん?一番右の子で料理Lv3・清掃Lv3・剣術Lv3・砂魔法Lv6だけ?他の子に至ってはこの子から魔法が無い感じだ。もしかして、ナタリアさんのスキル量がおかしかったのかな?
「あら、スキルが4つも。優秀ですわね」
「エレル。スキル4つだけで優秀なの?」
「え?普通は3つあれば良いほうですわよ?」
「ねえ。ナタリア。君って元奴隷じゃなかったの?」
「いえ。言っておりませんでしたでしょうか?私は没落貴族の娘で騎士団に所属後、花嫁修業受けました」
どうやら、比べる基準が違っていたようだ。しょうがない。一番右の子を買うかな。ちなみに外見は最初の元王侯貴族の娘たちと張り合うくらいの美人さんだ。特に胸と尻の形がエロい。
「それでは、右の子を頂こう」
「お買い上げありがとうございます。お支払いと主従契約がございますのでこちらの部屋にお越しください」
そういって、別室に通されて支払いと契約を済ませる。帝国と違ってこの国では人族でも永代奴隷になるようだ。聞いてみたら、期間奴隷はソヴェンテ帝国くらいの制度のようだ。ちなみにお値段は5000万エルクである。通貨は共通なんだねぇ。それと元王侯貴族の娘たちは一億エルク以上だった。スキルよりも外見重視の値段なのかねぇ。
こうして、新しく奴隷侍女のマーシャ。年齢20歳の美人さんが加わった。
永代奴隷とは主人が解放しない限り、死ぬまで奴隷というものです。もちろん、給料の支払いは存在しません。衣食住はしっかり与えないと奴隷管理放棄罪になりますけどね。