第二十三話 砂漠の国 ジプート王国
ジプート王国の領内に入ると何度かモンスターや盗賊の襲撃を受けたのだが、セバスチャンがサクッと倒してしまう。そして、気が付いたのだが、私やエレルに経験値が入っていた。なぜ気が付いたかというと、レベルが上がったからだ。ゴブリンを大量に倒したのにもかかわらず上がらなかったのに急にシステム音声で「レベルが上がりました」と言われたので、何事かと思った。すぐにステータス画面を確認すると確かにレベルが2になっていた。ただ、筋力やら体力やらの数字は見られないので、どれくらい強くなったのかがわからない。しょうがないので、馬車を少し止めてもらってモンスターを狩りに行ってみる。
30分ほどで戻ったのだが、体の動きが全然違った。二倍くらいあるのではないだろうか?魔法を使わなくても、ゴブリンくらいならサクッと倒せるようになっていた。
戻ってから、レベルが上がったことについてセバスチャンに聞いてみたら、私とエレルとセバスチャンとナタリアがパーティーメンバーになっており、一定範囲内であればパーティーメンバーの誰かが得た経験値が入るそうだ。また常識過ぎて本に書かれてない事のようだ。私がレベル1上がったのを喜んでいると、エレルは10、ナタリアに至っては20もレベルが上がったそうだ。ナタリアに関しては、戦闘経験がほとんどないのでもともとレベルが低かったようだ。経験値って、実戦じゃないと得られないのね。スキルレベルは経験値とは別だったのか、通りでスキルレベルを上げてもレベルが上がらなかったわけだ。
それにしても、セバスチャン。この国に入っていったいどれだけの敵を排除したんだ?聞けば応えてくれそうだが、聞くのが怖いので止めておいた。おそらく、この中で最強はセバスチャンだろう。まあ、万能執事スキルは主人が居て発揮されるもののようだが。
「旦那様。ジプート王国の王都コイルでございます」
セバスチャンが王都領内に入ったことを教えてくれたので、外を眺めてみると遠くのほうに大きな城と闘技場がある大きな街が確認できた。街の周りの大きい壁は砂嵐から街を守る為に帝国のそれとは倍以上の差がある。今は遠いが、近くで見ると圧巻だろう。
「あなた。砂漠の国は美人が多いそうですよ。奴隷市場でひとり買っちゃいます?」
唐突にエレルがそんなことを言った。あなたって、今まで旦那様って言っていたよね?なんだろう?罠なのかな?それとも新密度が上がったのかな?
「ねえ。あ・な・た。きゃ。やっぱり、なんだかこっちの呼び方が親しい感じですわね。ナタリアに教えてもらったの。旦那様だと、私と被るのでもっと親しい呼び方に変えてくださいっていうから、変えてみたのだけれど。いいわね。あ・な・た」
なんかひとりで、盛り上がっている。そうか、ナタリアは私のことを旦那様と呼ぶことにしたのか。でも、セバスチャンはご主人様だから、なんだか統一性が無いな。次期皇帝と言われているのだから、殿下と呼ばせた方が良いのだろうか?
「ご主人様。殿下だと、継承権が高いと周りに喧伝しているようなものですので、城内以外ではあまり使いません」
心を読まれたのかな?セバスチャンが唐突に横に現れて、耳打ちをして消えた。執事というよりも隠密かな?
ナタリアにはご主人様と呼ばせることにしよう。なるべく名称は統一させたい。ご主人様とか旦那様とかややこしいよなぁ。ほんと。いつの間にこうなったんだか・・・
「ねえ。あなた。砂漠の美女。侍女に一人欲しいなぁ~」
「そうだね。美女は君だけで十分だけど、君が望むならひとりくらい買おうか」
「本当に?ありがとう!」
頬にキスをされた。なんだか、少女のようだ。夜のベッドではあんなに大人の女なのにねぇ。いかんいかん。まだ日は高い。今から興奮していたら、さすがに身が持たない。そう思って、窓の外の風景を眺めて気を静めた。
王都に入る前に壁を見たが、やはり近くで見ると凄いな。何十メートルあるのだろう?街に入ると二階建ての建物ばかりだ。渇き煉瓦の建物のようなので、強度的にあまり高く作れないのだろう。砂漠の街らしく、馬車が走ると砂埃が舞い上がる。歩く人々は皆頭から布を被り、目元だけを出しているので、砂埃が立っても気にせず歩いている。慣れているんだろうなぁ。
顔を隠しているので、どのような種族がいるのか分からないが、奴隷の数はかなり多いようだ。首輪を付けている者たちがほとんどだった。環境が厳しいところほど、奴隷は多いと本に書いてあったが、本当のようだ。こんなに多いと、奴隷の値段も安いかも知れない。
この国の滞在期間はエルフリーフ王国の時と違って一週間ほどある。というのも、武闘大会が行われるのが、明後日から三日間だからだ。最後の一日は、新国王との面談らしい。時期がたまたま合ったので、そのような予定が組まれたようだ。ジプート王国の国王誕生の瞬間に立ち会えるのは滅多にない事なので、エレルが楽しみにしているようだ。私はこっちの世界に来たばかりというのもあって、あまりピンと来ない。
王城に到着すると、客室に一度案内されて着替えた後、現国王に挨拶をした。いかつい人族のじいちゃんだったが、平民上がりだそうなので、かなり気さくな感じだった。お祝いの返礼をすませ。贈り物を送った後、いったん客室に戻る。夜の食事会に参加するまでの間は自由なので、街を散策しつつ、エレルにせがまれた奴隷でも買いに行くことにした。外に出る時は顔を覆う布を装備するのを忘れてはならない。砂埃が凄いからね。魔法で防げるのだが、それをすると目立つそうなので、セバスチャンに止められた。やはり心が読めるのだろうか?
侍女が増えていきますね・・・




