第二十一話 エルフの国へ
ソヴェンテ帝国はユグドラシル大陸で一番大きい国だ。大陸の西側を縦に支配していて、北は雪国、中央は砂漠、南は樹海という支配するには正直面倒そうな国だ。帝都は中央の砂漠地帯の海に面した土地にある。よって、隣国と言ってもそこに行くまでには数ヶ月はかかる。まあ、転移魔法なら数秒くらいだが、転移魔法は行ったことがある場所にしか飛べない。つまり、帰りは楽なのだが、行きはかなり時間がかかるわけだ。
私ひとりならば、空を飛んで行けばいいだけなのだが、生憎と新婚旅行兼お祝い返しの旅である。まずは、帝国の南東にある隣国。その国土全域が樹海でエルフが国民の8割の国。エルフリーフ王国。
船で南に移動して、馬車で東に移動する中。帝国が知りうる訪問国の資料を魔法で頭に叩き込みながら、エレルにエルフ族について聞いてみた。
「ねえ。エレル。エルフ族ってどんな種族?」
「エルフ族ですか?私が知っているエルフ族はアル爺だけですわ」
「そうかぁ。あ、セバスチャン」
「はい。エルフ族は私の子孫に当たる者たちの総称でございます」
あれ?図書館で得た知識にも書かれていない情報が出て来たぞ?
「これは、恐らくわたくししか覚えているものがおりませんので、証明できませんが・・・」
「まあ、セバスチャンが言うなら本当だよねぇ。しかしまぁ、一体何人子供を作れば一種族が出来るのかなぁ・・・」
「覚えているだけでも、妻は953人でございます。もちろん、死別してから次の妻を迎えておりますので」
おや?こっちに来て500年だったよね?数がおかしいぞ?
「正妻はひとりですが、側室が70人ほど居ましたので・・・」
ん?マハラジャかな?ハーレムを持っていたのかな?
「恥ずかしながら、現在のエルフリーフ王国の国王を100年ほど前まで務めておりました」
「そんな人がなぜに帝国で執事を?」
「趣味でございます」
「趣味?」
「はい。神から頂いた特殊スキルを100年ほど前に出会ったソヴェンテ皇帝陛下に使わないでいつ使うのかと思いまして、当時の皇帝陛下にお願いをして執事として代々仕えさせてもらっております」
「趣味で?」
「はい。趣味でございます」
「あなた。たぶんその出会った皇帝陛下って女皇帝のマリアス様よ」
「一目惚れ?」
「そうとも言いますね。出会った時に陛下にはすでに夫がおられましたので、それならば趣味として彼女の子孫を見守っていこうと思いました。なにせ、私の子孫は見守る必要が無いほどに多くなりましたので」
「なるほどね」
わからん。全然理解が出来ない。趣味で執事?一目惚れしたから趣味で執事をしながら好きな人の子孫を見守る?訳が分からない・・・まあ、セバスチャンはそういう人なのだろうと考えるのを止めた。
それで、脱線したが、エルフ族の性格や趣向などを聞いてみたのだが、ご先祖様であるセバスチャンに似てしまったのか、割と自由人が多いらしい。自分の好きなことをとことん突き詰める研究者肌というか、興味のない事に関しては本当に何もしないとか。あと、婚姻制度は割と崩壊しているらしい。好きな人と好きな間だけ一緒に住み、子供を産んで育てると、また次の人というように渡り歩くそうだ。長命なエルフ族は長い時を同じ伴侶と暮らすには向かったようだ。
エルフ族と名は付いているが、純潔のエルフ。つまりハイエルフはセバスチャンだけで、あとは人族や獣人族などのほぼ全種族との間のハーフだということだ。
人族と他の種族との間のハーフを亜人族というような感じでハイエルフと他の諸族との間のハーフをエルフ族と言って良いようだ。ちなみにセバスチャンの血が強いのか、最初の子供たちから相手の種族関係なくセバスチャン寄りの姿になるそうだ。ああ、セバスチャンの見た目は銀髪銀髭の老紳士といった感じなのだが、若い頃は金髪だったそうで、宮廷主席魔術師で私の保護観察官だったモルガスウッド様のような見た目の者がほとんどだそうな。若い頃といっても1万歳辺りと訳の分からない事を言っていた。
金髪碧眼の美男美女ばかりの国か。なんか凄そうだな。まあ、見た目は若いがモルガスウッド様のように400歳近い老人も多いのだろうが・・・気を付けないとね。
途中何回か町や村で宿泊しながら馬車は順調にエルフリーフ王国に入国した。え?護衛はだって?セバスチャンひとりいれば無用だよ?
あれ?プロットに書かれていないぞ?おかしいな・・・




