第二十話 結婚式と初夜と執事
「汝。ユーロはエレルライン・ソヴェンテを妻とし、永遠に愛することを誓いますか?」
「はい。誓います」
隣では、花嫁のエレルラインが私と同じように質問されて誓っている。あれ?なんで私は結婚式に出て、誓いを立てているんだ?
1ヶ月前。皇帝陛下に拝謁して、エレルラインと婚約して、結婚。うん。特に問題は無いな。
・・・いやいや。だから何で結婚することになっているの?ふと気が付いたら、式もいよいよ大詰めだ。
「では、神の前で誓いの口づけを・・・」
そう言われて、私はエレルラインの顔を見つめ、そっと唇に口づけをした。
そして、あれよあれよと新婚初夜である。隣では準備万端の状態でベッドに入っているエレルライン。私は隣でベッドに腰を掛けている。
「ねえ。エレルライン」
「はい。旦那様」
「これ。どういうこと?」
「と、おっしゃいますと?」
「いやね。なんで、私は今ここにこうやっているのかなぁ~って思ってね」
「あら、おかしなことをおっしゃいますね。旦那様が私の求婚をお受けになったからじゃありませんか」
「うん。それはわかるんだけど・・・なんで?」
「私の事。嫌いですか?」
泣きそうな顔でこちらを見つめてくる。
「いやいや。好きだよ?」
なぜそうなる。どうしたんだ私!なんかおかしいぞ!もしかして、特殊スキルなのか?こうなれば、こっちも特殊スキルだ!
「ちょっと確認させてね。神の御名において。彼の者の特殊スキルを教えたまえ!特殊スキルオープン!」
すると、エレルラインのちょっと前ほどに文字が表示される。
特殊スキル 相思相愛
相思相愛?なんだろう?図書館で得たスキル一覧の本には載ってないな。よし。こうなったら魔法でゴリ押しだ!
「神の御名において。スキルの詳細を教えたまえ!」
【相思相愛】
対象とした人物と相思相愛の関係になれるスキル。対象とした人物が死ぬか、スキル所持者が死なない限り効果は持続する。また、このスキルは回避不能である。
なんだろう。このほぼ一度きりの超強力なスキルは・・・これってつまり、相手が魔人や魔王でも虜に出来て、下手したら神様にも効果あるんじゃない?まあ、スキルを使った側も相手を思い愛するわけだから、多少は使いどころを考えそうだけど。
「ねえ。特殊スキル【相思相愛】をいつかけたの?」
「出会った時?私にもよく分かりません。だって、一目惚れですもの」
顔を両手で押さえていやんいやんしている。かわいいな。おい。じゃなくて、もしかして無意識に発動したの?それとも、皇帝陛下に事前に何か言われていたのかな?う~ん。やはり、私の持っている特殊スキルって、自分で思っていたよりもヤバいのかな?
【魔力無限】その名の通り魔力が尽きない。
【不死(天命は除く)】その名の通り、天命以外で死ぬことが無い。
【状態変化無効】これもそのままだな。毒はおろか、状態変化魔法は一切聞かない。例えば、麻痺や睡眠や催眠など状態を変化させようとするものはすべて無効らしい。
【物理攻撃無効】これも確かめてはいないが、あらゆる物理攻撃が通じなくなるみたいだ。
【魔法攻撃無効】これは物理を魔法に変えただけのものだが、言うなれば世界を破壊するような威力を持っていたとしても、私には効かないってことだ。
【精神不動】精神魔法はおろか、脅しや泣き落としなど一切無効とする鉄壁の精神を持たせる。
【魔法創造】どこまで出来るのかはわからないが、たぶんイメージさえできれば無詠唱でも魔法が使えそうなスキルだ。
振り返ってみると、私のスキル。すっごくやばくない?ちんたら日雇いギルドで稼ぐよりも世界征服に乗り出したほうが早い気がするね!まあ、しないけどさ。面倒だし。それにしても、自分の娘を使ってでも私を確保しようとしたのか。確かに効果は絶大だ。エレルラインを守らなくてはならないという感情があふれ出てきている。そして、もうなんか我慢できない。
一晩中頑張りました。魔法で色々強化もした。エレルラインが失神したけど、魔法で回復して続きをした。私も失神しかけたけど、魔法で回復して続きをした。前世での回数を一晩で超える勢いでした。
翌朝。というか、一睡もしていないので、昼まで寝ることにした。一応、今日から新婚旅行と、周辺諸国への結婚祝いのお返しと挨拶回りをすることとなっている。皇族専用馬車や船などを使って移動するのだが、どうしよう。ギリギリまでベッドから出ないで魔法で移動しようかな・・・
「お目覚めですか?ご主人様」
いつの間にか現れた執事に心臓が飛び出るかと思うくらいびっくりした。
「あら、セバスチャン。おはよう・・・というには遅いわね。まあいいわ。昼食の用意をしてください」
「かしこまりました」
そういって、消えた。そう、その言葉通りに消えた。なんだろう?特殊スキルなのかな?それとも転移魔法?
「ねえ。いま、彼は消えなかった?というより、突然現れたよね?特殊スキルなの?」
ひとりで考えても答えが出ないような気がしたので、知っていそうなエレルラインに聞いてみた。ああ、愛称のエレルと呼んだ方が良いのかな?夫婦だし。
「うふふ。セバスチャンはそういうものよ。深く考えてはいけないの」
知らないのかな?
「たぶん。お父様も知らないと思うわよ?何せ、魔法やカザルスのおじさまでさえ、セバスチャンのスキルを確認できないのだから」
セバスチャン。実は魔王じゃないよね?
「いつから仕えているの?」
「さあ?お父様が生まれる前から居たそうですけど・・・」
魔王か、エルフか。神という線も・・・むむむ。意外と本人に聞いたら答えてくれるかもしれない。
「今、彼は誰に仕えているの?」
「う~ん。私に仕えていたのだけど。結婚したから、旦那様じゃない?」
「奥様。ご主人様。ご昼食の準備が整いました。今日は天気がよろしいので、中庭のテラスにご用意させて頂きました。お着替えはこちらに用意してありますので、お召し替えになってお越しください。ご主人様?何かご質問でしょうか?」
今まさに呼び止めようとして先に気が付かれた。本当に何者だろう?
「答えられたらで良いんだけど・・・セバスチャンって種族は何?」
「ハイエルフでございます。歳は500年ほどですが、こちらに召喚されてからですので、召喚前を合わせると5万歳ほどになります」
そんなに答えてもらえると思っていなかったので、情報についていけていない。でも、聞きたいと思っていたことを先回りで答えはじめる。
「私の特殊スキルは【万能執事】でして、物心ついたころから様々な王家にお仕えしていました。こちらに召喚される前からこのスキルは持っていたのですが、こちらの世界に来てからはより強力なスキルになりまして。私以外には確認できないものになっているのですが、正直秘密にするほどのものではないので、ご質問されればお答えするようにしております」
召喚前から持っているスキルでずっと執事していたのかぁ。凄いどころじゃなくて訳が分からないレベルだな。執事の神かな?
「【万能執事】の能力なのですが、これは一言で説明いたしますと、執事として必要なことはすべて出来る。というわりと限定的なスキルでございます。なにせ、執事でなければ発動しませんので」
どこかの執事の強化版って認識で良いのかなぁ・・・しかも、ハイエルフって、図書館で得た知識からすると、寿命がほぼないらしい。星と共に生きる種族とだけ知られている謎の種族だそうだ。
執事という活動限定で最強という認識で良さそうだな。お供にしたら、何も怖くないね。私は特に問題ないけど、エレルの護衛にぴったりだ。離れることがあれば、セバスチャンに任せれば間違いないな。
にしても、相思相愛スキル。マジヤバい。衰弱死しちゃうんじゃないかと本気で思った。まさか、精神不動スキルが効かないスキルがあるとは、多少は抵抗できているからおかしい事に気が付いたのだろうが、今はもうどうでも良い感じにまでなっている。だって、良かったんだもの!
とりあえず。聞きたい事は聞けたようなので、着替えようと思ってベッドから降りようとしたら、ふたりとも立てなくなっていた。やりすぎ注意だね!すぐさま完全回復魔法をかけたので問題なかったのだが、天寿を早めそうなので制限しなくては・・・
暴走特急になってしまっている気がするのは気のせいですかね?




