第十八話 初めてのスキル屋
100匹のゴブリン退治に1時間というスピード記録を出したのだが、そのまま報告するのも問題がありそうなので、20匹だけ報告しておいて、魔法系スキルを覚えたら、まとめて出しても大丈夫だろう。まあ、20匹でも十分受付を驚かせていましたけど。普通は5匹前後だそうです。一日かけて・・・
「ご主人様って何者なんです?スキルが無いのにそんなに魔法が使えるって、普通じゃないですよね?まるで、伝説に出てくる勇者王や英雄たちの物語に出て来そうな雰囲気ですけど・・・」
「それってどんな役のやつ?」
「謎の魔術師で、実は魔王の部下が勇者を狙ってもぐりこんでいるんですけどね・・・」
それって実話だったら、まどろっこしいよね。私だったらさっさと暗殺しているな・・・
「まあ、魔力が豊富なだけだよ。一応、魔法系スキルを覚えたし」
「覚えた?今日一日で?一体何匹のゴブリンを討伐したんですか・・・」
「本当は100匹。もう少しスキルを覚えたら、まとめて出そうと思っているから内緒ね」
「100匹ですか・・・」
「おかげで探索魔法と風魔法と火魔法のLv1のスキルを覚えられたよ」
空間魔法もそろそろかなぁ。アイテムボックスもたしか空間魔法のひとつだったし。空間倉庫はお金専用になりつつある。というか、お金もアイテムボックスでいいんじゃないかな?空間倉庫の使いどころは、漬物とか発酵食品とか、時間を経過させた方が良い物くらいなんだよなぁ・・・
ちなみに、ゴブリン1匹5000エルクの討伐報酬だった。今日一日で10万エルクである。あと、買い取りはしてもらってないが、薬草や毒消し草などの薬草類もいくつか採取してある。そのうち錬金術スキルのレベル上げに色々魔法薬を錬成しようと思っていてね。
「スキル石ってどこで売っているのかな?」
日雇いギルドの受付で聞いておけばよかったな。
「スキル石ならスキル屋じゃないですか」
リナスに何を言っているんだお前はという顔をされた。これも当たり前すぎて書かれていない一般常識というやつか。しかしまぁ、スキル屋ね。ド直球だな。
「どの辺にあるの?」
「武具屋や道具屋の通りにありますよ」
「ちょっと寄ってから、夕飯の食材を買いに行くから」
「わかりました。それなら、夕飯の食材を買って先に屋敷に戻っております」
「一緒に行かないの?」
「はい。そういったお店に奴隷は入れませんので」
奴隷の入れる場所って、かなり限られているのね。それにしてもなんで入店できないのだろう?そう思っているのが顔に出ていたのか、リナスが説明してくれた。
「奴隷が信用されていないからですね。奴隷はお金を持てないので、商品を盗んで食糧を買おうとするんですよ」
「飢えているの?」
「はい。ほとんどのところでは、生きるのにギリギリの食糧しか与えられてないと聞きます」
「飢えてない方が良く働くと思うんだけどねぇ~」
「そう思うのはご主人様くらいですよ。普通は大金を払ったんだから、これ以上お金を使いたくないと思うものです」
「そんなんじゃ、長生きもできないんじゃないの?」
「その前に元を取ろうと働かせるんですよ。場合によっては鉱山に売り飛ばすそうです」
「それって、契約奴隷は含まれないよね?」
「はい。契約奴隷は鉱山に売られることはないですね。鉱山側が買い取り拒否していますので」
まあ、そうだろう。期間が決まっているものをわざわざ買い取る奴はいない。元を取ろうにもそれなりに時間が必要だからねぇ。
リナスに夕食用のお金を渡して別れ、スキル屋に入ってみた。錬金術スキルはいくらくらいなのか確かめておこうと思ってねぇ。
「いらっしゃいませ」
入店するとすぐに声をかけられた。客は私ひとりのようだ。まあ、普通は日雇いギルドでお金を受け取ってから見に来る客がほとんどだろうと思うので、時間帯的に早いのだろう。何も言わずに用事を済ませて帰るというのもできそうにないので店員に声をかける。
「錬金術スキルの値段を確認しに来たんですけど。買うにしてもどれくらいなのか相場もわからないですからねぇ」
「錬金術スキルですか。少々お待ちください・・・」
そういうと、カウンターの下から何やら帳簿のようなものを取り出して確認する。もしかして、あんまり売られていないのかな?
「お待たせしました。錬金術スキルのスキル石なのですが。当店には在庫はありませんね。何分研究職の方が売りに来ることも最近減ってきているので、ここ数年入荷できてないんですけど・・・」
「ちなみに現在の価格はどれくらいですか?」
「そうですねぇ。よそで売られていたとしても、100万エルク以上はかかると思います」
100万かぁ。野菜の売り上げで買える値段だけど。スキル石でこの価格は高い方なのだろうか?
「ちなみに売られているとしたら、どのあたりですかね?」
「そうですねぇ。魔術師ギルドであれば、在庫があるかも知れません。魔術師ギルドが運営している魔術師学校の生徒たちに授業料としてスキル石を卒業までに提出させていますので」
なんでも、大学の単位みたいなもので、スキル石を何個提出できたかで、卒業が決まるらしい。提出できない場合は現金で支払い、留年確定だそうなので、魔術師学校の生徒たちは必死でスキルレベルをあげているそうな。
魔術師ギルド内のスキル屋は、魔術師ギルドに登録していなくても購入はできるそうなので、行ってみることにしたが、せっかく来たのでこの店のスキル石を見ていこう。
店内を見てみると、やはりスキル石の価格は1万から80万エルクが相場のようで、錬金術スキルの100万は高いようだ。まあ、スキル石ってレベルを上げきったら出るものだが、その後もレベルが上がる代わりに出るそうなので、研究職系や戦闘系に生活魔法のスキル石は割と豊富にあるらしい。滅多に出ないのは空間魔法で、そもそもスキル石が出るどころか、レベルすらなかなか上がらないものだそうな。それに、スキル石を使ったとしても、消費魔力が多いのである程度レベルが上がってないと使えないので、買う人も少ないらしい。なぜなら、レベルがある程度上がれば、使えはするようになるからだ。スキルとは無くてもできるが、あればより使えるようになるという特典のようなもので、スキル石を買いに来るのはせっかちな貴族やお金持ちの息子くらいらしい。ということは、私もそのどちらかと思われていたりするのだろうか・・・
鍛冶と武具製造のスキル石が売っていたので、買ってから魔術師ギルドに行くことにした。お値段は両方とも1万エルクだった。鍛冶と武具製造って被っているんじゃないかと思ったが、図書館の知識を検索すると、鍛冶は金属精錬と鍛造などで、武具製造は金属加工や布や革の裁縫がスムーズに出来るようになるスキルが身につくそうだ。剣などを作る鍛冶師の人たちがこの両方のスキル石を売りに来ることが多いそうなので安いらしい。鍛冶師見習いが買うものだそうなので、これをくださいと言った時、店員に不思議な顔をされた。いや、自分で作れたほうが後々便利そうじゃない?
スキル屋を出た後、魔術師ギルドに向かった。日雇いギルドの近くにあるので、来た道を戻る感じだ。そう言えば、スキル石の使い方を聞いてなかったな・・・。ああ、図書館で得た知識にあったわ。何々、握りしめて寝れば、翌朝にはスキル石が消えている。それがスキル習得の目印と・・・。え?握って寝るの?掲げたらすぐに覚えるとかじゃないんだ。一晩はかかるのねぇ・・・
寝ている間に手からこぼれると覚えないで翌朝を迎えることがあるそうなので、包帯か布を買って、スキル石をしっかりと手に固定して寝ないとな。そんなことを思っていたら、魔術師ギルドについた。中に入ると薄暗い。魔法の明かりが天井に浮いているのだが、明るさ足りていませんか?そんなことを思いながらも中を見渡す。すると、入り口から右手の奥にスキル屋のカウンターが見えた。さっきのスキル屋と名前が同じだが、スキル屋といえば武具通りのスキル屋で、こっちは魔術師ギルド内のスキル屋。略して魔ス屋と呼ばれているらしい。さて、錬金術のスキル石売っているかな?
カウンターの下や横にガラスケースがあり、そこにさまざまなスキル石が展示されているので錬金術のスキル石を探すとカウンター下の高価なスキル石コーナー的に並べられていた。価格は150万エルクである。聞いていたよりも結構高いね。そして、その横には100万エルクの魔道具製造のスキル石も売られていた。
「この錬金術と魔道具製造のスキル石をください」
「は、はい。両方ですか?」
「はい。ふたつともください。はい。250万エルク」
魔道具製造のスキル石を見つけてちょっとテンションの上がった私は、さっさと買って帰って寝たい。明日から、ちょっと家に籠って製造三昧だなこりゃ。
ふたつも高価なスキル石を買う人が珍しいのか、ちょっと信じられないものを見た目で店員に見られたが、気にしていられない。宝石箱のようなケースに入れられて出てきたスキル石をアイテムボックスにしまうとすぐさま家に帰って、夕食を作るのを手伝って、食事して寝た。
いやね。さすがに何も食べないで寝るのは辛かったのでね。魔力回復には腹が減るので・・・
他にも事務系のスキル石があったようですが、それなりに高かったので、後回しにしたようです。




