第十六話 ソルベ村
ソルベ村に到着しました。え?早い?そりゃあ、リナスの記憶からソルベ村の正確な位置を読み取り、転移魔法を使ったからね。一瞬でした。初めは風魔法で空を飛んで行こうと思ったんだけど、ひとりなら問題ないようなのだが、2人以上になると極端に制御が難しくなるらしいので、やめときました。図書館で得た知識でいろいろ助かっています。
リナスのお母さんは元気にしていました。親子水入らずにしてあげようと思い、村で宿屋を探したんだけど、ありませんでした。小さい村だと宿屋があっても客が来ないみたいね。しょうがないので、村長の家に宿泊費を払って泊まらせてもらうことになりました。帝都から持ってきた果実類の買い取りも村長さんの息子さんが対応してくれたので、結果的には良かったのかな?ただ、通貨での支払いが出来ないとのことなので、等価の野菜で物々交換という形になったんだけど、野菜の量が物凄い事になった。アイテムボックスが無ければ、行商しようなんて思わないなこりゃ。
その日の夜は、リナスを里帰りさせてくれたお礼や果実類を大量に持って来てくれたお礼などで宴会となった。リナスのお母さんに泣きながらお礼を言われたのだが、まだ奴隷契約期間内なので対応に困る。リナスがちょっと強引に連れ帰ってくれたので助かった。それにしても、みんな家族のようにリナスの無事を祝ってくれているのだが、身売りする事態になった時に何でお金を貸してくれなかったのだろうと思ったら、どうやら、この村ではそもそも通貨がほとんど流通しておらず。自給自足と税金用の野菜を確保するので精いっぱいの暮らしらしい。隣に座っていたおじさんが泣きながら教えてくれた。
リナス以外にも何人か、病気の家族の為に身売りすることになったが、里帰りしたのはリナスが初めてだそうだ。他の子たちが帰ってくるまで、一番近い子でも2年先らしい。つまり、普通は奴隷を里帰りさせるなんてありえないことのようだ。特に期間契約の奴隷は期間内みっちり働かせようとするので、体を壊して帰ってくる子もいるそうだ。おじさんの嫁さんも奴隷経験があるそうで、夜中に叫び声をあげて目を覚ますことがあるらしい。
悲しい話だけれど、こういう村がほとんどのようだ。時代のせいというのか、農業技術レベルが低いせいで生産が安定していないのが原因なのだろう。何か特産物を作って、帝都か街に卸せるようになれば良いのだが・・・
今回初めて行商をしたくらいの私に出来る事は今のところなさそうだ。せいぜい、帝都や街で売れるような作物の種を見つけてあげるくらいしかできないだろう・・・ん?魔法で作れるかな?少し記憶の中で検索してみる。
残念。錬金術のスキルがないと無理なようだ。というか、品種改良ってこの世界では錬金術なのね。まあ、魔法があると科学技術が発達しにくいだろうなぁ。魔法と科学って似て非なるものだからなぁ。日本にいた頃は物凄く発達した科学を魔法だと認識していたと思っていたのだが、そもそも魔素という酸素や水素のような元素を意思の力でさまざまな現象に変化させるのがこの世界の魔法と呼ばれるものなのだそうだ。
なるべく早く錬金術のスキル石を購入できるようにお金を稼がなきゃなぁ。帝都に帰ったら日雇いギルドに通わなきゃなぁ・・・
翌朝、村人のほとんどが二日酔いでふらつく中、私とリナスは帝都に帰るのを村人全員が見送ってくれた。なんか、申し訳ないので、解毒魔法をかけてみた。アルコールは毒ではないけど、解毒魔法が体内の異物を除去する魔法なので効くと本に書いてあった。村人が50人くらいいたのに、ほぼ全員が急に回復したので、ざわざわしていたが、気にせず転移魔法で帝都に帰ることにした。あ、リナスの顔が引きつっている。
帝都に帰るとさっそく商人ギルドに行き、野菜の卸先を紹介してもらう。紹介手数料で1万エルク取られるが、初回は必ず紹介状が必要となるので仕方がない。野菜の量がかなりあったので、5店舗紹介してもらって買い取りしてもらったら、500万エルクの利益が出た。果実類の仕入れ値が50万エルクくらいだったので10倍だ。
ちょっと儲かり過ぎじゃないだろうか?と思ったのだが、鮮度の良さで普通の買い取り価格の倍以上で取り引きしてもらえた結果のようだ。
商人でアイテムボックスや転移魔法が使える者がそもそもいないそうなので、思わぬ発見である。この鮮度で安定して販売出来るようになればソルベ村を発展させることも可能かも知れないな。でも、生産量自体が安定してないから今回のような量はしばらく確保できないだろう。それに、商人ギルドBランク以上になると魔法使いを雇用しているそうなので、彼らと扱う商品が被るといろいろ問題が起こりそうだ。
とにもかくにも、錬金術のスキル石を買って、品種改良を覚えてからだなぁ・・・
午後から日雇いギルドに行こうかなと思ったのだが、リナスが思ったよりも疲れているようだ。転移魔法を使ったので、体力は減っていないはずなのだが・・・なぜだろう?しょうがないので、食材を購入して家で調理しての食事としよう。この家に住んでから、初の自炊である。売らずに少しだけ取っておいたソルベ村の野菜を使って、野菜スープにでもするかなぁ・・・
会話無しなのは、決して面倒だからではなく。まだ大して広がらないので、村の雰囲気だけ感じで頂ければと思ったからです。
もちろん後付けです。




