第十二話 初めての日雇いギルド
「おはようございます。ご主人様。」
「ん?ああ、リナスさん。おはようございます。」
「ご主人様。リナスとお呼びください。主従のけじめをつけて頂かないと困ります。奴隷の主人らしくして下さらないと、街でいまのようなやり取りを見られてしまったら、私が叱られます。」
「え?そうなの?わかりました。じゃあ、リナス。おはよう。」
なんだか肉体年齢はリナスが年上なのだが、精神年齢は私が年上なので、ややこしい。まあ、中身の年齢で対応すれば問題ないかな?
とりあえず。今夜もふたりでひとつのベッドというのもなんなので、もうひとつベッドを準備するためにシーツや枕などを購入した後、日雇いギルドに登録をしに行ってみることにした。
マーカス団長に貰った地図を頼りに日雇いギルドに来てみると、思っていたよりも大きな建物だった。人の出入りも多いようなので、入り口出口で扉が別れているくらいだ。扉は開けっ放しにされている。開け閉めしていたら、その音だけで気が滅入るくらい人の出入りがあるのかも知れない。
中に入ってみると、やはり人が多い。時間帯のせいかな?朝はやはり仕事を求める人たちが多く来るのかも知れない。次からは昼くらいに来るようにしたほうが良いかも知れないな・・・
見回してみると、窓口の上に新規登録の文字を発見したので、そこに行ってみる。ちなみにリナスは黙ってついて来ている。彼女も日雇いギルドに来るのは初めてだそうなので、圧倒されているのかも知れない。
新規登録の人間は少ないのか、誰も並んでいなかったので、さっそく声をかけてみた。
「あの、新規登録をしたいんですけど。」
「はい。それでは、身分証明できるものと、こちらの用紙に必要事項を記入して提出してください。記入場所はそちらの左手の窓側にありますので。」
「はい。わかりました。」
記入場所に移動して、用紙に名前や年齢に性別、出身地やスキルなどの必要項目を記入する。まあ、スキルはひとつしかないのだが。特殊スキルは書いたらダメな気がする。書かないと後で問題がある可能性もあるので、提出する時に念のために質問するか・・・
騎士団から貰った仮の身分証明書と必要事項を書いた用紙を窓口に持っていく。
「あの~。特殊スキルも書かないとダメですかね?」
「はい?特殊スキルですか?それは書かなくても大丈夫ですよ?まあ、持っている人なんて滅多にいないですけど、もしかして持っているんですか?」
「い、いえ。知り合いが持っていたので、どうしているのかなと思いまして。」
「そうですね。普通は公表しないですね。特殊スキルはスキル石も出ないし、取得条件もわからないものですからね。だいたい生まれつき持っている場合がほとんどらしいですね。ちなみに公表した人がいたんですけど、複数の国からスカウトが押し寄せて大変だったそうですよ。」
それほど貴重なものなのね。特殊スキルが7つあるなんて言った日には、普通の生活を送れないんだろうな・・・まあ、記入する必要が無いのなら、あとで問題になる事もないのだろう。そのまま登録を進めることにした。ちなみに窓口の人は若い男性である。もちろん、名乗るようなことはない。一応、名札を付けているようだが、覚える必要もないだろう。
「はい。これが日雇いギルドの登録証です。お仕事を紹介して欲しい時は、掲示板についている番号札を切り取って、紹介窓口に登録証と一緒に提出してください。また、犯罪行為や仕事を途中で理由もなく辞退された場合。登録証を没収の上、逮捕となることがありますので。それと、あなたのスキルなんですけど・・・肉体改造?これってどんなスキルなんですかね?」
「えっと。たしか、魔法による肉体変化を起こさせたときに覚えたものなんですけど・・・珍しいんですかね?」
「はい・・・魔法による肉体変化ですか・・・聞いたことないですね。医療関係のスキルなのかな?というか、魔法使えるんですか?スキルを持っていないようですけど?」
「最近から使えるようになったので、まだ覚えてないんですよね・・・やっぱり魔法使えるなら、使えるとわかるスキルを持っていたほうが良いんですかね?」
「そうですね。できれば持っていてくれると、紹介先にも紹介しやすいですからね。そうですか、最近使えるように・・・それでしたら、依頼や紹介の仕事ではなくて、素材買い取りや討伐賞金などでまずは経験を積まれてスキルを身につけて行ってもらった方がよろしいかも知れませんね。」
「素材買い取りに討伐賞金ですか?」
「はい。魔法薬用や医療用の薬草の買い取りや魔物や盗賊などの討伐賞金は窓口を通さないでも、素材や討伐証明部位をあちらの買い取り・賞金受け取り窓口に持って来ていただくだけで大丈夫ですので、初心者やスキル未取得の方々だけでなく。常連の方々の副収入に役立っています。」
へえ。そんなのがあるんだ。いちいち紹介やら、契約をしなくて済むのは数をこなせそうなものはまとめて出来そうで助かるな。
「なるほど。ありがとうございます。まずはスキル取得をメインに素材集めや討伐してみますね。」
「はい。あそこの掲示板に素材の買い取り表や賞金首の魔物や盗賊の情報が貼ってありますのでご利用ください。素材の見た目や注意事項、賞金首の討伐部位に関しましてもそちらで確認できますので。あと、写しが欲しい場合は通し番号が書かれていますので、その番号をそちらの情報開示窓口にお伝え頂ければ10エルクで買えますので。」
写しは有料ね。自分でメモ帳持って来てメモったほうが良さそうだな。
「では、ご登録ありがとうございました。法を守って、一般常識の範囲内で頑張ってください。」
「はい。こちらこそありがとうございました。失礼します。」
ちょっと丁寧過ぎたのか、驚かれた顔をされたが、かまわず窓口から離れて、先ほど教えてもらった掲示板の前へ移動する。
「これが素材集め系で、向こうが討伐系ね・・・メモ帳買ってから出直すかな・・・」
軽く見てみたのだが、一番簡単そうな薬草採集についての情報ですら、採取地域や間違いやすい毒草の情報など細かく載せられていた。恐らく、写しを買って行くのが当たり前なんだろうなぁ・・・




