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いせてん!チースタ!  作者: 遊路
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第十一話 二人暮らし




「あー。えーっと、私から自己紹介しますね。ユーロといいます。見ての通りの人族で20歳です。このたび、縁あって宮廷主席魔術師のアルフェナンス・モルガスウッド様に保護観察官を受け持っていただいたのですが、本人は多忙の極みにあるとのことなので、監視役としてリナスさんが雇われた形となります。そして、そちらにいるのが・・・」


「マーカス・マクスウェルだ。青剣騎士団を率いているただの雇われ騎士だ。ユーロの監視報告を週に一度。東門近くの帝都警備隊詰所に来てもらえば、あとは自由だ。まあ、そいつの身の回りの世話くらいはやってくれるとありがたい。細かい事は二人に任せる。生活費の管理などは一応ユーロ。お前が主人として管理することになるが・・・まあ、モルガスウッド様から頂いた資金の残金がだいぶ余ったようだから、一年は働かなくても大丈夫なくらいだ。そのあいだになんとかしてくれ。何か質問はあるか?」


「は、はい。あの。東門近くの帝都警備隊詰所に報告しにいくというのは具体的に何曜日ですか?」


「そうだな。金曜日の夕方5時くらいに来てくれればいい。私が来られない場合は代わりの者を置いておく。ユーロの監視報告に来たと言えば、そこの警備兵たちに通じるようにしておく。なんなら、報告書を書いてくれればそれを渡すだけでも良いが・・・文字を書けるか?」


「いえ。すみません・・・」


「いや。別に謝らないでもいい。奴隷で売れ残ってしまうというのはだいたい文字の読み書きが出来ないことが要因と聞くからな。」


「そうなんですか?」


「ああ。奴隷を買えるくらいの者たちにすると、それなりに役に立たないと買う意味がない。その最低限の購入条件が文字の読み書きだ。それが出来ないと、事務作業はおろか、子供の絵本の朗読を任せることもできない。掃除や夜伽の相手なら、獣人族の奴隷を買ったほうが一生使えて安上がりだからな。」


「なるほど・・・」


「特に彼女のように期間が短い上に年齢がそれなりにあると大変だっただろう。」


「・・・はい。今の奴隷商館で三件目です。あと一週間もすれば鉱山送りでした・・・娼館には歳を取り過ぎているので・・・その・・・特殊なプレイを要求されるだろうから、鉱山のほうがマシだと教えていただきまして・・・」


 特殊なプレイって、なんだろう・・・鉱山送りがマシってどんだけヤバいプレイなんだ・・・


「まあ、これから3年くらいはよろしく頼む。そいつの行動次第では、1年くらいで自由になれるだろう。」


「ちょっと。プレッシャーかけないで下さいよ。それに、保護観察が解ける条件聞かされていないんですけど?」


「そうだったか?まあ、簡単だ。国に信頼されるような行動をすればいい。」


「いや。もう少し具体的にお願いします。」


「そうだな。例えば、お前のような保証人がいないやつだと・・・日雇いギルドくらいしか仕事先はないだろう。魔法が使えるから、宮廷魔術師関連の仕事を探すというのもあるが、宮廷魔術師関連は貴族の後ろ盾がないと無理だからな。モルガスウッド様は口を出したら、周りから色々うるさく言われるはずなので、頼らないであげてくれ。」


「保護観察官を受けるというだけでも、実はかなり立場的にあれとか?」


「そうだな。あのあと、色々あったらしい。宮廷魔術師というのは皇帝の信頼が厚い者じゃないとなれない職業だ。そんな人物が得体も知れない奴の保護観察官をするというのは、国家機密にも関わる可能性があるからな。直接関わらない今回のような形にすることで、何とか治めたくらいだ。」


 なんだか、私の知らないところで、面倒くさそうなことになっていたんだねぇ。


「モルガスウッド様にご迷惑が掛からないように精一杯頑張ります。」


「日雇いギルドの場所はこの地図に載っているから、これを見て明日にでも登録しに行ってくれ。日雇いギルドは奴隷を連れて行っても問題ない数少ない施設のうちのひとつだから、リナスも連れていってかまわない。ちなみにこの地図は簡易地図だ。詳細な地図は国家機密なので平民は持てない規則になっている。あとは自分の目で見て覚えてもらうしかないな。ああ、書き込むなよ?詳細な地図は持っているだけで平民は捕まるからな。」


「はい。わかりました。まあ、行くところは限られると思いますので、詳細な地図なんていらないでしょうね。」


「そうだな。それじゃあ、お前とはもう会う機会は無いとは思うが・・・達者でな。リナスのほうはこれからよろしく。」


「はい。よろしくお願いします。」


 マーカス団長の立場的にこの場にいることが異例なのだろう。これまで、親身になって色々してくれたことに感謝を伝えて、玄関から見送る。門のほうまで行こうと思ったのだが、ここでいいと言われたからだ。二度と会うことはないかぁ。まあ、平民として生きて行くならそうなんだろうねぇ。今回知り合ったのだって、邪神教団摘発というわりと大きな事件からだったし。


 マーカス団長が帰った後、二人きりとなった。正直気まずい。女性と二人きりとか前世でも滅多になかったからなぁ。あったとしても、恋人になってからだったし・・・


「あの・・・。何か命令をしてください。」


「え?ああ、指示待ちだったんだ。二人きりで黙って座っている状態が気まずくてしゃべらないのかと思っていたよ。」


「ご主人様は奴隷を買うのは初めてなのですか?」


 ああ、そういえばこの人に私の立場とか状況を説明してなかったな。お金を払っているのは見ていただろうから、貴族と勘違いされているのかも知れないな。


「えっと・・・何から話せばいいかな。まずは、私の身分なんだけど・・・」


 とりあえず。一から説明しないと自分でも訳が分からないので、邪神教団に拉致られていたこと。青剣騎士団の摘発によって助けられたこと。記憶がなくて身分証明が出来なかったこと。魔法が使えることで宮廷魔術師に興味を持たれて保護観察官になってもらった上に、家と生活費を援助してもらえたこと。正直、自分で言っていても訳が分からない。その上、本当のこと・・・召喚されて前世の記憶がある異世界人なんて言ったら、発狂するかも知れないな・・・


 リナスさんは途中から、珍獣を見るような目になりながらも話を黙って聞いていた。聞き終わったあとの、第一声が。


「ご苦労なされたんですね。あなたが平民であれ、買ってくれたご主人様には変わりはありませんので、どうぞ奴隷として扱ってくださって結構です。私も、母の薬代の為に身売りすると決めた時に覚悟を決めてきましたので。」


 リナスさん。ええ人や。この歳で結婚できなかったのが謎だったのだが、そのままリナスさんの身の上話を聞くことになって独身の理由がわかった。


 なんでも、父親をリナスさんが10歳になる頃に流行り病で亡くし、そのあと女手ひとつで育ててくれた母と二人で暮らしていたのだが、リナスさんの村では女の子の比率が高かったようで、母の再婚相手どころか貧乏な元狩人の家から嫁を貰おうという人もおらず。ふたりで細々と生きていたそうだ。ただ、昨年に母親が病に倒れて、薬代に困り。なんとか、薬代をと身売りしたそうだ。売値は50万エルク。たったそれだけと思うかもしれないが、出稼ぎに行くとしても一ヶ月以上先の支払いを待っている時間の余裕がなく。悩みに悩んで出した結論だったそうだ。3年我慢すれば、また母と暮らせると・・・


 ちょっと号泣しちゃったんだけど、こっちの世界では割と良くある話のようで、奴隷商館にいた人族のほとんどが家族の為に身売りした子だそうだ。なんだか、悲しい世の中だね・・・


 とりあえず。掃除や片づけで疲れた私たちは、その日は屋台で買ってきた食事を済ますとすぐに寝ることにした。ベッドの数の問題でひとつのベッドにふたりで寝る事となったけど。だって、床で良いとか言うんだぜ?私が床で寝ると言ったら、ありえないと言われるし。妥協案としての一緒に寝る。だったんです・・・肉体年齢的に年上の女性の体はとっても柔らかくて暖かいです。はい。




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