明日になっても
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二人の話はこれで終わりになります
今までの女と同じで、離れて行くだけなのに。
俺が居なくなったからってなんだというのだろう。
きっとまた他の女の子が彼に告白して、付き合って、一緒に眠るのだろう。
俺である必要は無い。
そう、本気で思っていたのに。
「……俺は、どうしたら良いんだろう」
木崎が俺の胸に額を押し付け、服の襟元をぎゅっと掴んだ。
もうこれで良いかと思った。この言葉だけで。
もしまた木崎が寂しさに目移りしても、きっと俺の所に帰ってくる。
「二見、俺、多分……二見が好きだよ」
「……」
好きだよ、ともう一度木崎は呟いた。
自分の感情の着地点に気付いた男は一人納得したように俺を抱き締める。
抱き締め返して、俺も「そうか」と呟いた。
「二見、一緒に寝てくれる?」
「良いよ」
木崎が俺の腕を引っ張った。
俺はいつも彼に手を引かれているような気がする。
彼の部屋で制服を脱ぎ、スウェットに着替える。
ベッドに潜り込むと、木崎の匂いがした。
たった一週間なのに、もう懐かしい。
お互いに向き合う形になると、木崎は微笑み、俺の頬に指先で触れた。
「お前の、匂いがする。俺はやっと、夢が見られそうだ」
きっとこの数日、彼はちゃんと眠れていなかったのだろう。
まだ寝る時間には早かったが、瞼を閉じるとすぐに寝息が聞こえた。
無防備な寝顔は幼さを感じさせる。
誰にでも良い顔が出来るという事は、それだけ気を使えるという事だ。
俺にはそんな真似出来ない。
八方美人は気に食わないけれど、彼の長所でもあるのは解っている。
木崎の唯一で有りたい。
この男に俺は愛されたかった。
今なら少し、愛されていると感じる。
木崎、おやすみ。
お前の夢に、俺は出て来るだろうか。
明日目が覚めても、俺を愛していて。