金星
火星を植民している間、地球人類はさらに膨大な人数に達しようとしていた。故に、外へ外へと進む力は強くなる一方であった。火星と並行して植民が行われた地域が、金星である。
猛烈な酸性の大気を有する金星であったが、それに対抗しうる合成金属が開発された。プラスチック樹脂との合成によって作られた、超耐酸性金属である。2161年に金属と樹脂の完全融合を果たした物理博士、柳場利朗によって開発された金属で、展性に優れ、導電性も有しており、なにより王水に対しても表面に不動態を形成することによって、とけることが無いという性質を持っていた。これらの性質によって、金星植民の道が開かれたのだ。
ただし、問題があった。この金属は、すこぶる高いのだ。1グラムで金1トンが買えるという話もあったほどだ。実際にはそこまでではなかったものの、それでも火星の時のように簡単に行けるというわけではなかった。それゆえに、金星植民機構という組織を作ることとなる。地球統合政府、国家共同共和国、人民共和国、皇国共栄圏、火星共和国、火星国家評議連合、経済協議会が合同して設立した組織ではあるのだが、その中核を担ったのは国家共同共和国であった。そのため、金星植民機構によって金星表面に設置されたコロニーは、国家共同共和国が施政権を有するということとなった。他の国々は、金星植民機構を仲介役として、間接的な関与をするにとどまることとなった。
この金星植民機構が設置したコロニーは5つあり、それら全てが国家共同共和国の領地とされた。これによって、植民初期から国家共同共和国が金星の所有者となった。だが、火星の時と同様、本国から遥かに離れた地域のため、独立性を高くしていたため、さらに他の金星植民機構に参加している国々からの要請により、金星植民機構は国家となることが決定された。独立しても採算がとれるであろうと推定ができる年を独立の都市とすることが2168年に決議されると、金星の民はそれを待ち望んだ。
そして、2192年、金星植民機構は解散し、同時に統一金星政府が発足。これをもって、国家共同共和国からの独立とし、金星は単一政府が統治する星となった。