緊急ポット
緊急ポットは、右舷後方にある。
強制ダウン状態にある船内は、人工重力が切れるために、全ての物が宙へと浮かび出す。
ただ、急激に消えるのではなく、ぼんやりと無くなっていくために、慣性で物がぶっ飛んでくるということはない。
「よし、そこのハッチを開けるんだ」
鰆が指さした先には、赤色の取っ手があった。
ジェニーがそれを掴み、一旦引き出してから右に180度回す。
ガコンと何かが動く音がして、入口が現れた。
「これが緊急ポットだ。脱出艇ともいうな。この船では5人まで乗ることができる。定員が5人だからな。5人が1か月生活するのに必要な酸素、水、食料はあらかじめ積んである。それと、脱出艇が緊急離脱する際に救難信号を自動的に発信するようになっているんだ。これによって、すぐに軍がやってきてくれるということだ」
そう言いながらも、ほとんど無理やりジェニーを緊急ポットの中に押し込む。
「全員が入ると、手動でふたを閉める」
壁にあった出っ張りを引っ張ると、鰆の頭側の壁からドアが勢いよく飛び出し、完全に船の本体と隔離された。
「ブザーが鳴ると自動的に射出だ。閉めてからおおよそ10秒でな」
そう言うと鰆はジェニーをすぐそばにある席に座らせシートベルトを締めさす。
鰆が座るとすぐにブザーが鳴りだし、シートベルトを締めるとほぼ同時にバシュンと音が響いたと同時に、すごい加速を感じた。




